児童文学作家を目指す日々 ver2

もう子供じゃない20代が作家を目指します。ちょっとしたお話しと日記をマイペースに更新する予定です。

履歴書

2020-12-29 | 物語 (電車で読める程度)
顔をあげた

とても心地よい物語だった

明日には忘れてしまいそうだ

傍らには一面にばらまかれた履歴書

時間が止まって

無造作に捨てられた履歴書

いろんな顔と人生が散らされていた

やわらかい風が頬に触れた

踏み荒らされた廃屋に桜が迷い混んだ

そうか、春が来たのだ

もうずっとどこか遠くで

くたばったものだとおもっていた

自分によく似た一枚をつまみ上げる

空欄を勝手に埋めていく

書き添えられた人生が

僕にもあったんだろうか

少し眺めて捨てた


たぶんなかっただろうな






【おわり】




優しさの廃墟

2020-12-29 | 物語 (電車で読める程度)
ここは優しさの廃墟

思いやりの骸を横目に

硝子片を踏みしめる

かつて無邪気に人の喜びを

咲かせるために整えた

数々の遊戯も

今は朽ちて

読めない案内標記に

ようやくその名残を知った

きっと賑わったのであろう

きっと輝いていたのだろう

今は投棄廃材でしかないこれらも、

きっと誰かの想い出なんだろう

散らかった紙屑は恐らくいつかの手紙で

錆び付いた観覧車も

濁りきった池の水も

動かない人形も

剥げたお伽の国も

生い茂ったメインストリートから

なにも知らない西陽が差した。


ここは優しさの廃墟


あの日、慈しみがいた場所







これから訪れるいくつかの旅の途中



【おわり】