もう子供じゃない20代が作家を目指します。ちょっとしたお話しと日記をマイペースに更新する予定です。
顔をあげた
とても心地よい物語だった
明日には忘れてしまいそうだ
傍らには一面にばらまかれた履歴書
時間が止まって
無造作に捨てられた履歴書
いろんな顔と人生が散らされていた
やわらかい風が頬に触れた
踏み荒らされた廃屋に桜が迷い混んだ
そうか、春が来たのだ
もうずっとどこか遠くで
くたばったものだとおもっていた
自分によく似た一枚をつまみ上げる
空欄を勝手に埋めていく
書き添えられた人生が
僕にもあったんだろうか
少し眺めて捨てた
たぶんなかっただろうな
【おわり】
ここは優しさの廃墟
思いやりの骸を横目に
硝子片を踏みしめる
かつて無邪気に人の喜びを
咲かせるために整えた
数々の遊戯も
今は朽ちて
読めない案内標記に
ようやくその名残を知った
きっと賑わったのであろう
きっと輝いていたのだろう
今は投棄廃材でしかないこれらも、
きっと誰かの想い出なんだろう
散らかった紙屑は恐らくいつかの手紙で
錆び付いた観覧車も
濁りきった池の水も
動かない人形も
剥げたお伽の国も
生い茂ったメインストリートから
なにも知らない西陽が差した。
ここは優しさの廃墟
あの日、慈しみがいた場所
これから訪れるいくつかの旅の途中
【おわり】