うさん臭いイメージの言葉である。
なぜだろう。胡散臭い、と表記して、どことなく怪しいとか、疑わしいと思ってしまうのは、油断ができない交渉事だからだろう。
胡乱からなるこの語にうさん臭いがあって、それがまたなぜ落としどころなのか。
それは、落とし と捉えるこの語の用法にある。
落とす行為が果たしてなんであるかということで、落語であれば話の結末の興味である。
さて、そのことばをかつては公務員の働き場所で耳によくしたもので、役人はツボを得てそれを得意げにしていた。
その用法にはにっちもさっちもいかない関係の平衡を保たなけらばならなくなってのことか、利害を分け合うことか、面子のつぶし合いにならないようにすることだった。
その語を用いて与党の公明党の代表は提示された4条件をのまないということで、記者会見でつぶやいた、そのように聞こえた。
集団自衛権で後方支援にでかける戦闘地域、非戦闘地域の話し合いである。
一切の妥協を許さない体のなかにあってこのような交渉をして解決を図ろうとして、いったんは、白紙撤回を求めたのであろう。
そしてどうなったか、自民はそれを見せた。
昨日のニュースで4条件の撤回である。
だが、それは違っていた、ことばこそ撤回であり白紙であるようだが、あらためて3条件を出して、人道支援の下には戦闘地域に出かけると言っている。
落としどころがあったのである。
おとし‐どころ【落(と)し所】
もめ事や話し合いの妥協点。双方が納得する決着点。「関税交渉の―を探る」
おとし【落(と)し】
1 落とすこと。
2 入れるべきものを忘れること。落ち。「名簿に―がある」
3 鳥獣などを捕らえるための仕掛け。わな。また、落とし穴。「猪(いのしし)が―にかかる」
4 戸の桟に作り付けて、閉めたときに敷居の穴に落とし入れる、戸締まり用の木片。また、そのような装置。枢(くるる)。
5 話の結末。落語などの落ち。
6 布を裁断した余り。裁ち落とし。
7 「落とし懸け3」の略。「長火鉢の―」
8 「落とし巾着(ぎんちゃく)」の略。
9 謡曲で、節を一段下げて歌うこと。落ち。
10 浄瑠璃で、強く訴えるときに用いる種々の節回し。大落とし・文弥落としなど。
11 採掘価値のある鉱脈で、山の傾斜方向にのびているもの。
落とし所とは、意見が対立し宙に浮いている懸案事項を、参加者の妥協できる内容にまとめて決着させる(つまり地上に落とす)とき、その落下点の有り様(まとめられた内容や参加者の納得のしかた)のことをいう。