面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「カンフーハッスル」

2006年04月23日 | 映画
昨年度の劇場観賞映画中、第1位に輝いた作品。

面白い!
カンフー映画は好きではないので観に行くかどうか躊躇があったが、周りの評判が良いので観に行ったところ、これが大正解!
“笑える”という面白さもあるが、単純な勧善懲悪ストーリーの面白さもあって、エンターテイメントとして非常に上質な作品になっている。

実はカンフーの達人で誰にも負けない実力があるのに、普段はごくごく普通の、どちらかと言えばバカにされるようなキャラクターで生きていて、イザというときはむちゃくちゃ強い、なんぞと言うのはお決まりのパターンではあるが、やっぱり単純にカッコいい。
主人公が、最強の殺し屋にさんざんに打ちのめされ、邪気を浴びることにより“脈が開いて”カンフーの達人として覚醒するところも単純に楽しい♪

かつての日本の常識では『悪』と見られる人や組織が『勝ち組み』なんぞともてはやされるようなこのご時世に、やっぱり最後は正義が勝つ!と言い切る潔さは、世の中に勇気と希望を与えてくれるってもんだ。

第一級の痛快娯楽活劇。
何も考えずに観ることができ、スッキリした気分で劇場を後にできるのは、映画の基本中の基本である。

カンフーハッスル
2004年/中国・アメリカ 監督:チャウ・シンチー
出演:チャウ・シンチー、ユン・ワー、ユン・チウ、ドン・ジーホワ、シン・ユー、チウ・チーリン

「かもめ食堂」

2006年04月23日 | 映画
フィンランドはヘルシンキの街角にオープンした「かもめ食堂」。
メインメニューに「おにぎり」を用意した、清潔感漂う小さな店の主人は、日本人のサチエ(小林聡美)。
近所の人々は、日本人が開いた店に興味津々で、中を覗いてはひそひそと話しているが、中へは入ってこない。
「毎日マジメにやっていれば、いつかお客さんはやって来る♪」
フィンランドの、ゆっくり流れる時間にリズムを合わせるように、焦ることなくのんびり過ごすサチエ。
そんな彼女に吸い寄せられるように、一風変わった、ちょっと“ワケアリ”な人々が集まってくる。

開店して1ヶ月めにやって来た初めての客、男子学生・トンミ(ヤルッコ・ニエミ)。
本屋のカフェで「ムーミン谷の夏まつり」を読んでいるところを、偶然サチエに見つけられたミドリ(片桐はいり)。
ある日、フラっと店にやって来て、コーヒーの美味い入れ方をサチエに教えて去っていく男・マッティ(マルック・ペルトラ)。
空港で到着するはずの荷物が無くて、呆然としながら「かもめ食堂」にひょっこりやってきたマサコ(もたいまさこ)。
なぜだか、毎日店の前で立ち止まっては店内を睨みつける謎の中年女性・リーサ(タリア・マルクス)。

少しずつ来客が増えるのと歩調を合わせるように、“ワケアリ”な人々が「かもめ食堂」にやって来た“理由”が明らかになっていく。
でも、サチエが何故、単身ヘルシンキへやって来て食堂を開いたのか、その理由は最後まで明かされない。

「人はみんな、変わっていくものですから。」
サチエはきっぱりと言う。
そしてそれは、良い方へと変わっていくんだ、と。

今があるのは「過去」があるから。
しかし大切なのは「今」、そして「これから」。
そして「これから」は良い方向へと向かっていくもの。
そう、人生は悪いものではない♪

美味しそうな食事に“シヤワセ感”を漂わせ、日々のあくせくを揉みほぐして楽ぅなキモチにしてくれる佳作。
1時間42分の美味しい時間を味わえる「かもめ食堂」。
サチエが、最高の「いらっしゃいませ」で迎えてくれる。

かもめ食堂
2005年/日本 監督:荻上直子
出演:小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ、マルック・ペルトラ、ヤルッコ・ニエミ

意地の一戦

2006年04月23日 | 野球
今シーズン最初の讀賣3連戦。

2連敗で迎えた今日の試合。
負けたらホンマにシャレにならんで!
というところで出た、8回表のアニキの一打!
シビレたね!!

ここまでで4対2。
タイガースは何度も満塁の好機を逃して、イヤ~な感じが流れ始めていた。
讀賣の林は、アニキの前の打者シーツを、なんと敬遠気味のフォアボール。
「アンディ歩かしてオレと勝負て、なめとんか?お前。」
とアニキが言ったかどうかは知らないが、アップになった顔は落ち着いた表情で、かえって凄みを感じる。
そして、追い込まれながらも、最後は低めのストレートをライト線へ弾き返す!
一塁手の右を抜けたときは、思わず「よしっ!」と声をあげたね。

そして今日も江草は、快刀乱麻のピッチング。
相変らず小気味よいテンポに、腕も良く振れていて、危なげない投球。
安定してるねぇ♪
先週日曜の甲子園は、1対0の9回表に勝負を急いだか投球が高めに浮き、長打を浴びた後に犠牲フライ2本で沈んでしまったが、日本球界の至宝、鯉のエース・黒田と渡り合った堂々たる投球は、今日も生きていた。

そうそう、アニキ意地の一打の直後の8回裏、
赤星のスーパーキャッチも素晴らしかった。
解説の川藤氏が「守りの4番打者」と言っていたが、言いえて妙見さんやね♪
打たれた瞬間、完全にポテンヒットと諦めたが、あれを捕ったのはもの凄く大きい。
追加点の後を3者凡退で抑えてこそ、チームに流れが呼び込めるのである。

讀賣に3連敗だけは食らわんぞ!という皆の意地が呼んだ今日の勝利。
こういう“意地”で勝てる試合ができるなら、タイガースは大丈夫。
強いチームになったもんだ♪

「芝浜」

2006年04月23日 | 落語
落語案内の二本目は「芝浜」。

生粋の江戸落語である。
上方落語を愛でるブログであるはずが、なんで二番目の記事が江戸落語やねん!と思われるかもしれないが、この「芝浜」は江戸落語の中で一番好きなネタであり、上方・江戸全体の数ある噺の中でもベスト3に入るくらいに好きなネタなのだ。
なにせ、オチのセリフが素晴らしい!
何度聞いても「くーっ!」と唸りながら泣きそうになってしまうのだ。
情感溢れる心温まるストーリーで、作品としての完成度の高い、落語の中でも屈指の名作である。

酒に溺れて商売に実が入らない魚屋。
ある朝、女房に叩き起こされ、散々嫌みを言われて仕方なく魚市場に向かうが、時間が早すぎてまだ開いていない。
近くの芝浜で顔を洗って休憩しているとき、ふと革の財布が落ちているのに気が付く。
拾ってビックリ、中には大金が入っていた。
喜び勇んで家に帰り、仲間を呼んでドンチャン騒ぎ。
二日酔いで目覚めた翌朝、女房に「こんなに飲んで酒代はどうすんだい?」と責められるので、「拾った財布があるじゃないか」と反論すると、女房はそんなものは知らないと言う。
そんなバカな話があるかと家中探すが出てこない。
なんと、大金が入った財布を拾ったのは夢で、大酒飲んだのは本当だったとは…!
さすがに魚屋も心を入れ換え、商売に精を出す。
やがて身代も大きくなり、暮らし振りもよくなっていく。
ついには自分の店を出し、三年目を迎える大晦日。
これまでの献身ぶりを労わり、女房に礼を言う魚屋に向かって、女房は例の財布を出してきて告白を始める…。
※参照「芝浜」:詳細な解説でオチまで書いてあるので要注意!

テレビドラマの『タイガー&ドラゴン』でも取り上げられていたので、落語にあまり興味のない方にも知れ渡っているネタかも。
三代目桂三木助の十八番とされていて、彼が存命中は誰もやらなかったという話があるくらい。
コレクションの『落語ライブラリー』の中にもあるが、何度聞いても心地よい。
古今亭志ん生のも聞いたが、当代立川談志が京都南座演じたものが、最も心を揺さぶられた。
女房の描き方が、三木助、志ん生と決定的に異なるのだ。
まず、拾った財布の大金をアテに大酒飲んで眠りこけてる魚屋を起こすシーンが衝撃的だった。
三木助、志ん生のサラッとした演出が現在でも主流をなしていると思われるが、談志のそれは、亭主を騙すことに対する後ろめたさを引きずって決死の覚悟で亭主を起こす仕草であり、亭主を叱咤するしっかり者ながら、真っ正直な性格の女房の人の良さがにじみ出る、ウェットな演出だったのである。
そしてその仕草があることで、ラストシーンで泣きながら真相を明かす女房の心情を際立たせ、思わず涙を誘うのである。
滅多に本気を出さない談志の“凄み”に触れることができた、幸せな瞬間であった。

落語に興味のある方も無い方も、ぜひ聞いてもらいたい噺。
そして、他の演者の口演を体験してから、談志の口演に触れることをお勧めする。