面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「グリーン・ゾーン」

2010年06月22日 | 映画
イラク戦争開戦から4週間後。
ロイ・ミラー(マット・デイモン)率いるMET部隊により遂行される大量破壊兵器捜索作戦は、3度も空振りに終わっていた。
大量破壊兵器の隠蔽場所に関する情報の正確性に疑問を抱いたミラーは、作戦会議の場で情報源についての説明を求めたが、
「情報は精査されている、黙って従えばいい」
と上官から一蹴される。

再び捜索のためにアル・マンスール地区へと向かったミラーは、英語が堪能なイラク人のフレディ(ハリド・アブダラ)から、フセイン政権の要人達が近くの民家に集まっているとの情報を得る。
民家を急襲し、サイード・ハムザというフセイン政権最高幹部のアル・ラウィ将軍(イガル・ノール)の側近の男を拘束するが、突如現われた特殊部隊が力ずくでサイードを連れ去ってしまった。

ミラーは、探せども見つからない大量破壊兵器の存在と、特殊部隊の不可解な動きに疑念を募らせ、グリーン・ゾーンにある宮殿でCIAのマーティン・ブラウン(ブレンダン・グリーソン)に接触する。
中東情勢の専門家であるブラウンは、イラク民主化計画を巡って国防総省のクラーク・バウンドストーン(グレッグ・キニア)と敵対し、ミラー同様、大量破壊兵器の謎を追っていた。

アル・ラウィを捕まえることが大量破壊兵器発見の近道だと睨んだミラーは、部隊を離れてブラウンと共闘しながら単独で調査を開始。
「ウォール・ストリート・ジャーナル」の女性記者、ローリー・デイン(エイミー・ライアン)から、“マゼラン”と呼ばれる匿名のイラク政府高官が大量破壊兵器の所在に関する情報源であることを突き止める…

見つかることのなかった「大量破壊兵器(WMD)」。
それが必ずあるとして始まったイラク侵攻だったが、そんなものは元から存在せず、機密情報と呼ばれたものは全てウソだったことが明らかにされるまでの時間は、一体何だったのか?
誰が何のために“仕掛けた”侵攻だったのか?

何千というカット割りと、ハンディカメラによる“ぶれる”映像により、観客は強烈な緊迫感と臨場感に包まれる。
「ボーン・スプレマシー」「ボーン・アルティメイタム」でマット・デイモンとタッグを組み、手に汗握るハード・アクションの傑作を産み出してきた、ポール・グリーングラス監督のカメラワークが本作でも冴え渡っている。
激しい銃撃戦やチェイス・シーンでの、緊張感溢れる映像は正に真骨頂。
独裁政権による圧政から人々を解放して平和をもたらすはずが、新たな紛争を引き起こし、イラクを混迷の極みに押しやる結果にしかならなかった原因を、我々観客はミラーと共に追いかけ、そしてイラク侵攻の何たるかを思い知らされる衝撃のラストまで一気に駆け抜ける。

「あなたたちにこの国のことを決めさせない!」
セリフに込められた思いが胸に迫る。
一国の平和と復興は、グリーン・ゾーンが生み出すものではない…

我々はただシートに身を任せ、どっぷりとスクリーンに浸れば、あとはエンディングまでぐいぐいと引っ張っていって楽しませてくれる、良質のアクション・ミステリー。


グリーン・ゾーン
2010年/アメリカ  監督:ポール・グリーングラス
出演:マット・デイモン、グレッグ・キニア、ブレンダン・グリーソン、エイミー・ライアン