北海道は雨の季節
例年、本州が梅雨明けする頃に北海道は雨がよく降る。
だから、
これからお盆にかけては、グズついた天気の日が多いかもしれない。
雨の日は、自転車には良くない。
雨の日もまた乙なもの
なんて言う人もいるみたいだけど、
修羅場を知らない人だな、って思う。
一部の自転車競技系の方たちのなかには
雨天を得意とする方もいて、
それは修羅場に活路を斬り拓くことができる強靭な人たちだから、例外としていい。
やはり、雨の日にはロクなことがないと言い切れる。
ボクは現役の海外旅チャリダーだ。
これまでも、いろんなことがあった。
いくつもの修羅場もあった。
ひとつ気をつけていることがあるとすれば、
「雨の日は行動しない」の原則を守ること。
アウトドアの鉄則と言っていい。
(主観ですよ)
雨の日に行動すると、
もう、何もかも濡れる。
パンツまでびしょ濡れ。
まあ、そんなことはどうでもいい。
大変なのは、持ち物だ。
ビニルで厳重に巻いたもの以外は、もれなくびしょ濡れになる。
防水バックだって、関係ないね。
また、いろいろ壊れる。
モバイル関係はもちろん、カメラなどもやばい。
レンズなど濡れてしまったら、かなり面倒なことになる。
当然、転倒や事故のリスクは
晴れた日とは比較にならない。
ハイリスクだ。
自転車旅の場合はさらに自転車本体のダメージが深刻だ。
自転車も油分がすっかり洗い流されて、ギア類もチェーンも砂砂で紙ヤスリ状態になり摩耗してしまう。チェーンは駄目になり交換になる。ブレーキもおかしくなる。
すべての荷物を広げて乾かして、
ガイドブックもモバイル関係も。
床に広げて乾燥させなきゃ。
服も雨合羽も、もう全部まとめて洗濯だ。
部屋中にぶらさげて乾かさなきゃ。
また、
自転車の泥泥砂砂を完全に洗い流して、
グリスアップして調整して、
再び走り出すために2日を要したりする。
たった1日の雨天走行の結果、コレだ。
バカみたいだ。
観光のサイクリングも似たようなものだ。
びしょ濡れでホテルに帰るのだ。
お化粧はドロドロになって流れ落ち
せっかく作り上げた前髪も、千切れ飛んだワカメになってしまうだろう。
コインランドリーで全部洗濯、
メシ食って風呂入って、
荷物は全部取り出して床に広げなきゃ。
こうしてリセット完了したら、もうクタクタだ。
大切にしていた革財布もフニャフニャになっているだろう。
気力もボロボロで、明日に引きずるだろう。
いいことがあるとすれば、
虹。
虹はいいね。
昔、ナラボー平原※で悲劇的な雷雨に遭遇して、その日の夕刻、巨大な虹をみた。
いいものだった。
一方で、
レンタサイクル屋は儲かる。
お客さんがサイクリングしたい、って言うから黙って貸し出せばいい。あるいは雨天決行。
お金さえ貰えばいいのだから。
ガイドの山小屋は、
ボクがオーナーである間は
雨の日は必死で引き留める。
ロクなことないよ!って引き留める。
売り上げは落ちるけど構わない。生憎、食うには困ってないから。
ここのところ、雨が多く気温も高い。
ガイドの山小屋の裏は100坪ほどの畑になっていて、夏野菜やスイカ、豆類、それから、
長い冬を越えるためのカボチャや玉ねぎ、じゃがいも、キャベツなども作って自給自足している。
農薬も化学肥料も除草剤もつかっていないから、高温多湿が続くと、ちょっと病気がちになってきたりする。
おまけに7月は忙しかったので手入れができず、すっかり藪みたいになっている。
遠くで雷鳴が聞こえる。
またドカンと降るだろう。
そして、明日はきっと
カラッと晴れて暑くなる。
これで、たぶんまた、
スイカが一気にデカくなるだろう。
※ナラボー平原 オーストラリア大陸横断の中央付近にある土漠地帯 1000kmほぼ真っすぐ概ね平坦 砂漠じゃないので想像よりも難易度は低い 水も食糧も入手可能 野生のラクダが歩いている 区間としてはアデレードSAからパースWAまで約3000kmの中間となる
下の写真は大陸横断の途中での食糧袋の中身(ナラボー平原)
南オーストラリア州の州都アデレードのチャイナタウンで購入した日本っぽい食材が元気の源だった
他に常時、水を15リットル携行していたけどナラボーは100kおきに農場集落やロードハウス(オアシス 給油、食事、簡易宿泊)があって食糧と水の確保は比較的容易だった
雨の日はこれらの荷物も水びたしになった
もちろん防水バッグであることは言うまでもない
下の写真は爆撃のような雷雨が去ったあとの大陸横断ハイウェイ ナラボー平原
ボクが大陸横断ハイウェイをまっすぐ西に向かっていたとき、雷雨に遭遇したのだ
地平線の向こうから雷雲が沸きだすようにやってきて大地を覆うから逃げようもない
落雷はじゅうたん爆撃のようで、周囲に無差別にドシドシ落ちた 戦争かよ
半径100m以内に落ちたらボクはタダでは済まなかったと思う
写真は美しいが、このときのボクはすっかり命をすり減らして全身ボロボロだった
生きてロードハウス(オアシス施設)にたどり着いたとき、
ハイウェイの人たちに拍手で迎えられた。
不思議に思って振り返ると、
西日を真正面から浴びた自転車のボクが巨大な虹を背負って地平線から現れた(ように見えたらしい)ことに気づき、
ちょっと泣いてしまった。