実家で暮らす母に、今年もメロンを贈った。
このメロンは、
富良野でメロン農家を営む友人夫婦が育てたもので、
とにかく丁寧に丁寧に栽培していることを
身近で見てきたオレは、よく知っている。
話がそれるが、
オレは性格がひねくれているので、
例えばワインなどは特に、
うんちくを有り難がるのはアホらしい。
オレのワイン哲学は、
そのワインが作られている葡萄畑に、
この足で実際に立つことが、とても大事だ。
「ああ、ここのワインが飲みたい!」
ブドウ畑の強い日差しを浴びながら、身悶える。
それが、
オレのワイン哲学。
だから、オレのワイン知識は、
いくつになっても“しょぼい”ままだけれど、
誰よりも南オーストラリアと、ニュージーランド(特に南島)のワインには詳しい。
いや、詳しいというか、
実際にその場所に立って、
思いきり風に吹かれてきたから、確信に近い。
専門家のうんちく、
ナンボのもんぞ。
オレは行くぞ。
ブドウ畑で、愛をさけぶ。
「ワインを飲ませてくれー!」
こうして、やっとうまいワインに出会えるのだ。
だから、
行ったことがないフランスのワインのことを
オレはまだ知らない。
知ったかぶりをするのは嫌なので
値段と相談しながら見当を付けたシャブリなど買う。
ん。うまい。
悔しいけど、うまいね。
そのうち行こう。
待ってろフランス
それからドイツとライン河流域。
チリだって、そのうち行くからな
自転車で。
前置きが、くどい。
くどいけれど、うまいものには人の愛が注がれているのは間違いない。
オレはこの目で見てきた。
この目でみて、肌で感じる。
まだまだ見知らぬ「うまいもの」が
世界にはたくさんあるはずだ。
だからオレは
旅を続けるぞ。
さて。
くだんのメロンだ。
富良野の「上田オーチャード」という。
九州男児の上田さんと、かわいいモモちゃんの夫婦。
ちゃらちゃらしたことが大嫌いで寡黙で頑固な上田さんは、
メロンに関してはびっくりするくらい饒舌になる。
モモちゃんは小さな身体で重たいメロンを運び続ける。
この2人の仕事は、心がこもっている。
今年も、
神戸で暮らす母のもとに、
富良野の上田さんからメロンが届いた。
それを聞きつけて、
神戸の大学に通う娘2人が、おばあちゃんちに押しかける。
ふだんはなかなか遊びにこない2人が
メロンに惹き寄せられてくる。
一緒に来ればよいのに、
2人は入れ替わりやってくる。
うまい晩飯をたらふくご馳走になり、
デザートに、富良野のメロンがどんと出る。
おいしい、おいしいと、
メロンにカブりつく。
北海道で生まれ
北海道で育ち
いまは遠く、神戸の大学に通う2人の娘にとって
富良野から届く上田さんのメロンは、
北海道の夏そのもの。
神戸から北海道は遠い
簡単には帰省できない。
大学が長い休みに入ると
生活している女子寮はガランとして寂しくなり
ひとりぼっちになってしまうこともあるという。
富良野のメロン
北海道のお日さまが詰まっている
きっと遠い故郷に
思いをはせているに違いない。
ふるさとの味。
うまいに決まっているじゃないか。
一度に4分の1も食うなんて!!
母の機嫌も悪いはずがない。
10歳くらい若返ってイキイキしている。
メロンを中心に
みんなの笑顔があふれる。
こんな幸せなことはない。