ガイド日誌 - 北海道美瑛町「ガイドの山小屋」

北海道美瑛町美馬牛から、美瑛の四季、自転車、北国の生活
私自身の長距離自転車旅
冬は山岳ガイドの現場をお伝えします。

カンタベリー平野を駆け抜ける南風。の巻。 自転車で旅するニュージーランド

2016年10月29日 | 自転車の旅 海外
ラカイア − アッシュバートン
カンタベリー平野

昨夜の雨は朝には上がったけれど、
気温がガクンと一気に下がった。
8時になっても5度までしか上がらす、仕方なく長袖を準備した。

ニュージーランドは南半球にあるため、いろんな非常識が常識になり、またその逆もある。

西から昇ったお日様が、東へ沈む。

時計の針が逆に回っている。

まさかの本当だ。

あ。
すみません嘘つきました。(駄)

まあ、ありそうなことではある。
ないか。

仕切り直そう。かなり、くだらない。

太陽は、正午頃に真北の空にある。

北風は暖かく、南極からやってくる南風は冷たい。

12月は真夏。サンタはサーフボードでやって来る。

星空に北極星はない。北斗七星もない。

ハロウィンやらない。(オーストラリアも)

つまり、あれだ。
きょうは南風で寒いよと言いたいのだ。

前置きが長かった。

さて。
いまカンタベリー平野を南へとひた走っている。

ニュージーランド南島は形といい、大きさといい、日本の本州に例えやすい。

つまり僕は、東京を出発して関門海峡を目指して名古屋、大阪、広島、というふうに南下しているイメージだ。下関からは日本海側を津軽海峡を目指して北上して、青森からは再び南下。本州をぐるりと一周して東京に戻ろうとしているわけだ。

このように本州一周は、ニュージーランド南島一周のイメージに近いのだ。

カンタベリー平野とは、東京から名古屋までずっと平野だよ〜、というイメージでいい。
富士山の位置にマウント・クックがそびえている。
まったくイメージしやすい。
イメージしやすいが、人口は違いすぎる。
たぶん100分の1もないと思う。

僕はいま、つまり沼津あたりにいる感じだ。
道路はひたすら直線だ。

ひたすら農場がつづく。
景色は富良野地方に似ている。
上富良野あたりのような錯覚をしそうだ。

南風が吹いている。
冷たい、南風。
南に向かっている僕はそれを、正面からまともに受け止める。
しかも、結構強い。

きつい。

長袖を着てガンガン漕いでいるのに、ちっとも暖かくならない。
気温は7度。
強風にさらされて、身体がどんどん冷えていく。

日差しが出てきたが、暖かくない。
寒すぎる。
昨夜の雨は山では雪だったようで、山岳地帯は真っ白になっている。
たぶん主要な峠は雪だろう。

ともかく寒い。
強風にあおられて、ふらつく。

レスト・エリアが見えてきた。

高速道路でいう、パーキングエリアだ。
売店などはないが、休憩できる。

屋根あり。ベンチあり。
典型的なレストエリア。

カンタベリー平野の真っただ中にある。

ただ、寒い。

遮るもののない、カンタベリー平野を吹き抜けていく冷たい南風を真正面から受け止める。
スピードはまったく上がらない。

昼頃、アッシュバートンの町に着いたが、身体が隅々まで冷えて、どうしようもない。

アッシュバートン鉄道駅がなくなっていた。
旅客が廃止になって以来、閉鎖されていたが、入り口ドアには「JCBカード」のステッカー、いらっしゃいませ、というカット文字が貼ってあった。

アッシュバートン鉄道駅 2013年
あの昭和な駅舎が取り壊されたのは、ちょっと残念。

その駅舎跡に建てられた、小洒落た現代風の建物、
i SITE(観光案内所)で休憩させて貰ったが、
再び寒風に逆らう覇気はみなぎらない。

次の町までは4時間ほど。再び逆風に立ち向かわなければならない。

アッシュバートン泊まりは予定になかったが、急遽、宿探しすることにした。
身体を温めたい。
時間はまだ早いが、飛び込み訪問で交渉してみることにした。

交渉一軒目のモーテルでクリア!
チェックインの時間にはまだ1時間以上あるが、
部屋に入れるという。
しかも、割安な部屋に通してもらえた。

ストーブ、ストーブ!

ありがたい。

生き返った。

夕方、スーパーに行ったら、アジア食材コーナーで「いなり寿司の皮」を見つけた。
きょうの夕食は決まった。

きょうは辛かった。
明日の風は、どう吹くだろうか。









君は「フォー スクエア」を知っているかい?の巻。 自転車で旅するニュージーランド

2016年10月28日 | 自転車の旅 海外
ラカイア2
カンタベリー平野


ニュージーランド通の君たちへ。
「フォースクエア」を知っているかい?
ははん。
ちっ!て、いま舌打ちしたね?

大きなスーパーマーケットがない人口1000人を切る町にある、我らが味方。
田舎の救世主。
それが、フォースクエアだ。

グリーンと赤を見たらホッとするだろ?食糧袋が寂しくなった頃、ようやく、しなびたバナナが買えるじゃないか。

じゃあ、君たちに尋ねる。
「フォースクエア」が、二軒ほとんど隣り合わせにある町がある。
それはどこだ?

えー。
そんなんあるわけねーじゃん。
そんなキャパあるなら最初からニューワールドあるしょ。

だよな?

チッチッチ。それが、あるんです。

ラカイア!

ラカイア、それは、
サーモン釣りの町。
人口は800に満たない。

なのに、
線路に面して一軒。

それから、

1881年に建てられた旧バンク オブ ニュージーランドを挟んで反対側、

大通りに面してもう一軒ある。

こちらのほうが新しいようだけど、品揃えは残念。

どうだい?
ラカイア・トリビアさ。(暇)

これは、旧郵便局。1910年建造。

こちらは、1872年開業の駅前旅館だ。もちろん現在もパブ/酒屋として営業している。

ラカイアは、きっと昔は賑やかだったんだろう。

こちらは、僕が滞在しているキャンプ場だ。

ラカイア河の畔にある。
写真の奥の直線道路は、もちろんラカイアブリッジだ。

ああ。
エントランスには残念な看板があって、気が滅入った。

うち(ガイドの山小屋)と同じ悩みを抱えているみたいだ。

撮らなかったけど、このすぐ脇の植え込み陰には、汚れたトイレットペーパーが咲いていた。
それも、うちと同じだ。
夏の間、せっせと、拾ったものな。

この先すぐに公衆トイレがあるというのに、
なぜわざわざこんなことするんだろ?

それも、うちと同じだ。

わけわからん。

いやな話をしちゃったよ。
今夜の豪華メニューでも見て、気分を直してくれ。

僕の今夜のディナー。

きょうは、ビタミン摂取デー。
もちろん、先のフォースクエア線路に面した店で買い求めた。

きょうは、
とうとう雨は、降らなかったなー。

連泊したのにな。

やけに、風が強いぜ。








ラカイア河を全速力で走り抜けろ!の巻。 自転車で旅するニュージーランド

2016年10月27日 | 自転車の旅 海外
クライストチャーチ − ラカイア
カンタベリー平野

クライストチャーチを出発したのは朝10時くらいだろう。
うまい朝飯を食い、のんびりお茶などしていたらすっかり遅くなってしまったのだが、急ぐ旅でもないのでこれでいいのだ。
兄弟の家は快適なので、なかなか去りがたかった。

さて。
仕事に追われてこの半年は全く運動をしなかったけど、走り出しは順調のようだ。クライストチャーチ郊外を軽快に走り抜ける。
荷物満載フル装備の自転車は流石に重たくてフラフラする。フロントキャリア(前部荷台)はまだ真新しく過積載でもないはずだけど、振動でゆらゆらしている。もしかしたら旅の途中でどこかが断裂するかもしれないと思う。

お昼前に「団さん出る」という村に着く。
「ダンサンデル」、変換が変。
誰が団さんやねん?

僕のお気に入り。
「ダンサンデル ストア」

このティールーム(いま風に言えばカフェ)のサンドイッチは美味い。
そして、いつも繁盛している。

クライストチャーチを旅立ったチャリダーは昼前にここを通るはず、という、程良い場所にある。
クラシックで清潔な建物も素敵だ。ここはイートインも出来るけれど、向かいは公園になっているし、清潔な公衆トイレもあるから、天気が良ければピクニック気分で外がいいだろう。

お店は若い女性が2人と、キッチンに男性が1人。団さんらしき人はいなかった。(ひつこい?)
僕の英語はかなり怪しいはずだけど案外と通じるもので、激励などしてもらった。

素直に嬉しい。

きょうは、サーモンのサンドイッチにした。
でかいサーモンの切り身が入っている。
食べ応えあり、うまい!
9ドル50セントはお値打ちだ。

さてさて。
ダンサンデルを出てまもなく、困ったことになってきた。
太腿が強烈に痛くなってきたのだ。
筋肉痛のヒデブなやつで、太腿が破裂するかと思った。とうとう耐えがたい激痛レベルに達して僕は所構わず何度も絶叫した。

なんなんだ?
ぎゃー!

ケンシロウに秘孔を突かれたか?と思う崩壊系だ。(北斗のなんちゃら)

お約束どおり、お尻も痛くなってきたけど、太腿痛はそれを遥かに超える。初めてのことだ。しかも、いきなりレッドゾーンだ。
そのうち耐えられなくなって自転車を投げ出して道路脇の草むらに突っ伏した。倒れ込んでしばらく痛みに喘ぎ、それから、少し落ち着いてからは必死にマッサージした。

茫然としていたら、すぐ脇を貨物列車が轟音と共に走り去っていった。倒れ込んだ草むらは国道と鉄道に挟まれていたのだ。

うーむ。
これが、年齢。加齢というヤツか?
参ったな。
いままでのようにはいかなくなったということか。
腿を揉みながら、なんだか口惜しかった。
口惜しかったが、鍛え直してクリアにしてやろうではないか諸君!みたいな根拠のない自信みたいなものも湧いてきたから、なんやかやで、うまく付き合おうと思う。

そこからは5キロ毎に腿を揉みながら進んだ。
スピードがガクンと落ちたが仕方あるまい。

ところで。
この先には難関がある。
難関といっても峠とかではなく、橋なのだが、
この橋が、やたら長い。

ラカイア河はサザンアルプスに源を発する。雪や溶けた氷河の水を集めて南太平洋に注ぐ大河である。
北海道でいえば、十勝川や歴舟川が印象に近いかと思う。
川幅は広い。広すぎる。

そのラカイア・ブリッジという橋は、全長1.75キロある。なんでもニュージーランドで一番長い橋らしい。

歩道?そんなものはない。

道路は、時速100k制限。つまり日本ならば高速道路だ。
橋なので道幅は狭くて、路側帯もない。

ここを走り切らなければならない。
うーむ。腿、耐えられるか?

橋のたもとで入念に腿を揉んだ。
途中で力尽きるわけにはいかないのだ。
時速100kとはいかなくとも、全速力で走り抜けるしかない。
頑張れ俺!頑張れ腿!

ラカイア河キター!

1.75km全力疾走をあなたも体験しよう!

走り切ったところにホリデーパーク(キャンプ場)がある。ラカイア河南岸だ。
僕のお気に入りのひとつ、ラカイア リバー ホリデーパーク(現在はファミリーパークという名称)、ここにはナイスなバンガロー(キッチン付きキャビン/食器あり/寝具なし寝袋持参)があって、3000円くらいで泊まれる。そして、チャリダーには何かと親切にしてくれる。
きょうはさらに30キロ先のアッシュバートンに行こうと思ったけど、やはりココにしよう。
古傷のケア。痛いお尻。初めて激痛が走った両太腿のケアをしよう。
なんだかワヤだな。


しかも。
明日は、雨になるかもしれないという。









ニュージーランドには、チャリダー専門書があるぞ! の巻。 自転車で旅するニュージーランド

2016年10月26日 | 自転車の旅 海外
ニュージーランドには優れた自転車旅行専門書がある。
一冊1200円ほどの小冊子で、
南島編、北島編の2冊がある。

いつからあるのかはわからないけれど、15年前にはすでにあったように思う。
内容は変わらないけれど、少しずつ改定されていていて情報もちゃんと新しい。

たぶん自費出版じゃないかと思う。

「ペダラーズ パラダイス」つまり、
「チャリダー天国」まんまやん!
自転車愛が詰まった素晴らしい冊子だ。

僕は縁あって美瑛町観光協会の理事を務めている。
理事会では、定期的に
「良いサイクリング地図を作りましょう!」という話になる。
僕はいつも、ペダラーズパラダイスみたいな地図(美瑛町だけならば、本冊子の4ページ分で済むだろう。しかも予算も半分以下)を作りましょう!と言いたくなるのだけど、各人には色々と考えがあり自分の意見を反映させたいものなので、僕の意見などは強く言えないでいる。

日本は色々と気を使う国なのだ。

まあ、やるならば、自分で作り、著作権を設定して(やや毒)、自分のお客さんだけに配ろうと思う。(笑)

ペダラーズパラダイス。
内容は簡素で、実用性だけを考えて作られている。
写真など一点もなく、もちろん完全モノクロ。

ルートの傾斜、距離、何があるのかを簡潔かつ克明に記してある。
ペン先に注目してほしい。
「屋根あり、トイレ&テーブル、ブヨ多い」とある。旅チャリダーには、極めて重要な情報だ。

さて。
まだクライストチャーチにいる。
日本との時差は4時間。(サマータイム)
外はもう夕方で、家路を急ぐ人が見られる。
きょうはラム肉焼いて食おうとか考えながら歩いているに違いない。
朝から降っていた冷たい雨は、ようやくあがったようだ。

天気が落ち着かなかったり、そういう気分じゃなかったりと、出発が伸び伸びになって今日まできた。

兄弟の家は、毎日楽しい。

仔羊の肋肉を七輪で焼くのだ。

家族みんなでうまいものを食い、


ニュージーランドの移民文化を垣間見た。

アフガン。つまり、アフガニスタン料理。

アフガニスタン料理、キターーー!!

アフガニスタン人の親父がオーダーをきく。
「はう めに ぴーぽー?」

メニューは選べない。人数だけだ。
「はう めに ぴーぽー?」(笑)

本日の定食、的な

めちゃくちゃ、うまい。
そして、量が半端ない。
一人前20ドル、1500円くらい。四人前をオーダーしたけど、適当にドカドカ盛って、ほいと渡してくる。足りなきゃ言え!くらいの勢いだ。
実際、イートインのお客さんにもアフガン親父「足りなきゃ言え。おかわり自由」とか言ってた。呼応した二人連れの皿に蒸したライスが2合くらい盛られて戻ってきたのを目撃した。笑
俺たち北村家はテイクアウェイしたのだけど、四人前がその日のうちに食べ切れず、翌日の昼になってようやく完食。

うーんアフガン。(ここは、「うーんマンダム」の口調でいこう)

アフガニスタン料理の「アフガン」
それは、クライストチャーチにある、男らしすぎるレストランであった。

あー、食った、食った。

さてと。
いよいよ明日、南の果てを目指して出発する。
思い残すことはもう、ないのだ。
たぶん。






クライストチャーチでビールを作るのだ。の巻。 自転車で旅するニュージーランド

2016年10月24日 | 自転車の旅 海外
クライストチャーチの家では、
兄弟がビールづくりに精を出していた。
兄弟は凝り性なのだ。

麦の煮汁を濾す作業のあと、
煮汁に酵母を混ぜる。

ふらりとやってきた板前しょうへいちゃんも、日本から留学に来ている兄弟の姪も、みんなで参加する。
働かざる者、飲むべからず。なのだ。

タンクの中には23リットルのビール原液。
だいたい大瓶30本になるそうだ。

なかなか重たい。

これからタンクの中で一次発酵が始まる。
この家の特等席で2週間どんと構えている。

板前しょうへいちゃんも嬉しそうだ。

発酵が活発になると、ボコボコ音もまた元気になる。
酵母が呼吸している。というか、興奮しているようだ。

以前、山葡萄でワインを仕込んだときと同じだと思った。

瓶詰め後さらに2、3週間、瓶の中で二時発酵させると炭酸のようなシュワシュワ感が醸し出され飲めるようになるそうだ。

こうして飲むビールは、まさに生きていると感じる。
本物の、生ビールなのだ。