角岸's blog (Kadogishi s' blog)

酒、酒&映画・・時事問題?

まさにダニエル・デイ・ルイスの神がかった演技を観る「リンカーン」

2013-05-12 23:56:07 | 映画
 さて、スティーブン・スピルバーグ監督の最新作「リンカーン」は観る人によって大きく評価の分かれる映画だと思います。

 もしね、白人の議員たちの議論で「奴隷制度廃止」が決まり、それを傍聴していた黒人たちが歓喜の涙を流すという構図で感動できるとしたら、相当お人よしな方だとオラは思います。

 自分的な結論から言うと、この黒人大統領がが統治する現代アメリカにおいて、熱烈な民主党支持者であるスピルバーグがこのようにあからさまに“アメリカの正義”を振りかざすこと自体、もう胡散臭いったらありゃしない。

 んでもね、リンカーンを演じたダニエル・デイ・ルイスは見事です。ここだけは本当に凄い!!神がかりとはこのこと。これを見に行くための映画と言えるでしょう。



さて、お話は・・・・

 貧しい家に生まれ、学校にもろくに通えない中、苦学を重ねてアメリカ合衆国第16代大統領となったエイブラハム・リンカーン(ダニエル・デイ=ルイス)。当時アメリカ南部ではまだ奴隷制が認められていたが、リンカーンはこれに反対していた。リンカーンの大統領当選を受けて、奴隷制存続を訴える南部の複数の州が合衆国から離脱しアメリカは分裂、さらに南北戦争へと発展する。自らの理想のために戦火が広がり若い命が散っていくことに苦悩するリンカーン。

・・・・というわけで、物語はまさにここから始まります。 
 
 永久的な奴隷制度廃止のため、幾度となく議会で否決されてきた、憲法13条の修正に挑むことに。側近さえも難色を示す中、国務長官のスワード(デビッド・ストラーザン)らと共に、多数決で票を確保するため、なりふりかまわぬ議会工作に乗り出す。

つまり、この「憲法修正13条案(奴隷制度廃止案)」を議会で可決させようとすれば、ダラダラと戦争は長引き、かといって戦争を終結させようとすると、この奴隷制度廃止をあきらめなければならないという状況なんですね。あっちを立てればこっちが立たずとはまさにこのこと。

 で、映画ではリンカーンが両面作戦で権謀術数を駆使しなんとかこの「憲法第13条修正」を通すための、議会の多数派工作をひたすら描き続けます。

まさに「踊るなんとか」とは正反対の、会議室が主舞台の映画なんですね。


 さて、史実ではどーだか正確な知識を持ち合わせない小生ですが、この「奴隷制度廃止案」を猛烈に廃案に追いこもうと画策するのが民主党

 映画では共和党初の大統領になるリンカーンが、共和党主流派議員スティーブンス(トミー・リー・ジョーンズ)らと共に民主党議員を出し抜くあたりが一つのクライマックスになっていますが、なんだか不思議な感じを受けます。

 冒頭でも言った通り、1)スピルバーグは熱烈な民主党支持者なのに、映画では民主党は敵として描いている
 それと、2)何よりも、あれほど黒人奴隷解放をかたくなに拒んだ民主党なのに、いまはそのリーダーにして合衆国大統領は黒人のオバマさんだという点。 うーん、不思議というか考えさせらます。

トミー・リー・ジョーンズ

 さて、この映画は何度も言うとおり、奴隷解放をテーマにした「憲法修正」について、理想論と現実論が激突する完全なる“セリフ劇”です。

 従って、英語をネイティブなみに聞き取れない限り、字幕を追うしかないんですが、これがかなりきつい!! 子供向けの3D映画だけでなく、こういう映画こそ、「吹き替え版」を準備した方が良かったんじゃないかと思いました。

それと、もう一つ。

 「憲法改正」は我が日本でも大きな議論となっていますが、ただただ改正反対というはいかがなものでしょうか?

 どのように、「憲法」をよりよく改正させるかの話し合い自体を拒む勢力がわが国には今だ跳梁跋扈していますが、「憲法」は「聖書(バイブル)」ではありません。

この映画を観て改めて考えさせられました。