知ってる人は少ないと思いますが、6月20日から、TOHOおいらせにおいて「死亡遊戯」('78)が1週間だけブルーレイ上映されました。ところが・・・・
あのジョン・バリー作曲の格闘者のファンファーレから始まるこのブルース・リーの遺作「死亡遊戯」。
この名曲は、浪速のジョーこと辰吉丈一郎選手がボクシング試合入場に使用していたので覚えている方も多いと思います。
この映画、ブルース・リーがラストシーンだけ撮影しておいたのに、ロバート・クローズはじめ「燃えよドラゴン」('73)のスタッフが結集し、ソックリさんらを駆使して完成させた映画のため、過去のフィルムも大量に使われています。
で、この壮大なテーマ曲が流れてから問題はここからです。冒頭は「ドラゴンへの道」('75)のローマ、コロッセウムでのチャック・ノリスとの死闘部分が使用されているんですが・・・・、あのブルース・リーの有名な怪鳥音がニセモノなんですよ。
このハリウッド版「死亡遊戯」の吹き替えやってるのがクリストファー・ケントという、なんだかスーパーマンみたいな名のおっさん。
本物の怪鳥音は「うわちゃーっ!!」って感じだとすれば、ニセモノのクリケン怪鳥音は「アタァッ、アタ~」と実に情けないヘタレぶりです。
ブルース・リーマニアの小生は、ジョンバリのテーマ曲大いに盛り上がった後に、このクリケンのヘタレ怪鳥音を聞くともう一気にテンションが下がってしまうんですね。
やっぱね、ブルース・リーの魅力はもちろんあの目にも止まらぬ直線的な動きの鋭いマーシャルアーツの動きであることには間違いありませんが、彼独自の強烈なカリスマは多くの部分、あの「怪鳥音」が占めてると思うんですよ。
例えが変ですが、八代亜紀以外の歌手が「舟歌」を唄ってもちっともよく聞こえないのと同じです。ブルース自身の怪鳥音でなければ、ブルース・リーの魅力は半減するのは間違いありません。
さて、当時このフィルム見た配給会社はコレを観て、マズイと思ったのか、なんとブルースの本物声を他の映画からひろって、このクリケンのヘタレ怪鳥音と全部差し替えて上映したんですね。これが「東宝東和・日本公開バージョン」と言うヤツです。これがもうスゴイのなんのって迫力が全然違います。事実、ブルース・リーのソックリさんが格闘してるシーンなんかでも、この本物の怪鳥音でみると、ホントにブルースがよみがえったような感じになるから不思議です。
後年テレビのロードショーなんかでも、全てこのバージョンを日本語で吹き返したものが放映されので、今の我々世代の「死亡遊戯」ファンはおそらくこのバージョンが馴染み深いと思うんです。
ところが長い間、何故かDVDでも、NHKでも「クリケン・ヘタレバージョン」でやってきたため、マニアはがっかりしてきたのですが、ついに2012年にブルーレイで、この本物バージョンが収録されて発売されました。即効ゲットしました小生。
さて、ずいぶんと前置き長くなりましたが、6月26日(木)の夜、高校に行ってる息子を迎えに行きそのまま下田へ直行。なんと、お客さんはオラと息子の二人だけ。んでも、ワクワクしながら席について上映開始時間を待ちます。
そしたら、ちょっとした機械の不具合で上映が2、3分遅れると支配人と思しき方謝りに来たんですね。
そこで小生すかさず、 「ところで、今日の死亡遊戯は何バージョンですか?」と聞くと、
支配人「何バージョンとおっしゃいますと・・・・?」
と、そこで簡単に小生上記のことを説明し「どうせ、お客さん我々だけだし、東宝東和版上映してもらえないですか?」
支配人: 「そうおっしゃられても、本部から送られてきてるのは一つのバージョンだけですし」
小 生: 「なんなら、私車に持ってきてるので、お持ちしますか?」
支配人: 「いや~、それはちょっと困ります。まずとりあずご覧になっていただけますか」
そして、いよいよ上映・・・・・ジョンバリの壮大なテーマ曲が映画館に流れ小生感動のあまり涙が出そうになったのですが、その後、劇場内に響いたのははたせるかな、あのクリケンのヘタレ怪鳥音でした・・・・・・。
上映後。
支配人: 「いかがでしたか?」
小 生: 「(かくかくしかじかで) ヘタレ怪鳥音でした」
支配人: 「いやー、この映画がニセモノのブルース・リーの怪鳥音だって初めてしりました。後で詳しく勉強させていただきます。」
いや、支配人、あなたを責めてるのではない。
しかし、しかし、せっかく35年の時を経て再上映するのなら、あなた方の東宝配給会社の大先輩の「日本のブルース・リーファンをがっかりさせてはならない」と本物の声をひろったバージョンを上映していただきたかったです。それが、大先輩たちの努力への礼儀と言うものではないでしょうか。
うちの息子は、なんだかモジモジして恥ずかしそうにしてるし、まぁいいっか。
「息子よ、刻ノ屋で、横浜家系ラーメンでも食ってくか」
と、帰路についた我々でした。
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