今日も虫を殺した。
たぶん、誰も責めないだろう。
せめて僕くらいは、僕のことを忘れないように書いておこう。
いや、もしかすると忘れる為に、か?
別に虫一匹殺したからといって何がどうということはない
いつもやっていることだ
いや、いつもやっていることが問題なのだ
というか、ここ最近は、妙に家に虫がたくさん湧いているのだ。
主に米から。玄米から。
そういう蛾の類や、漆黒から生まれたとされる小さな生き物たちは
分類上、生き物だと言われている
にも関わらず、罰則は特に存在してない
別に、だからといって生類哀れみの令がどうたらこうたら…ということもないのだけど。
特別反省はしていない
たぶん、明日も殺すだろう。
特に蚊は、僕を不快な気分にさせるので、まず間違いなく殺すだろう。
別に、どうということはない。
なんでもない。
なにもない。
問題ない。
なにごともないのだ。
別に僕は、ここにたって、今更命の大切さなんてせつせつと語ったりはしない
とくとくと説得したりもしない。
命が大切でもないんでもないことくらい、ずっと前から知ってる。
たぶん、生まれるよりずっと前から。
ただ、僕は虫を殺す時の自分があまり好きではない。
そこに自分なんて確固たるものは、ありはしないのだろうけど、
けれどその時僕を見つめるもうひとつの目線をも、あまり好きにはなれない。
ただ、どうしても気になること
いや、むしろ気にならなくなるのが怖いこと、
それは僕がそのうち無意識に虫を殺すようになるんじゃないかっていう
そのことなのかもしれない。
僕はいちおう、虫は全て殺すようにしている。
クモは、殺したり殺さなかったりする。
蝶々も多分捕まえたら殺すと思う。
別に、もう美しいとは思わないから。
特にほとんど何も感じないから。
ただ、それでもときどき、てんとうむしや、アゲハチョウや、モンキチョウや、モンシロチョウを見ると、
妙に追いかけたいような衝動にかられることはある。
その時追っている者は、そのとき追っている僕自身の後ろ姿で、
むしろ僕はそのときその場所であることを避け、
少年であることも避け、
少年自身であろうとする。
つまり、思い出したいのだ。
無性に人の心をくすぐる、あのなつかしい、かぐわしい羽ばたきを追って
僕自身をこの世界から消し去りたいのだ。
けど、たぶん僕はそのことを段々と忘れていって
きっと何も気付かずに虫を殺すようになるだろう。
そのことを、少しだけ、ときどき怖いと思う。
子供の頃、ハエを障子の側で叩き落として解体した。
解体すればするほど、中から細かい虫が出て来た。
僕は蟲が虫からできていて、分解するともっと細かい虫になっているのかと思うとゾッとした。
息をするたびに、虫を吸い込んでるんじゃないかと思って。
大きくなるに連れて、それがウジだと思うようになった。
白い細かい生き物が黒い生き物の腹から出てくるあの光景は、
分解の主体者である僕自身が記憶せねばならないのだろう。
そして、気味悪がったりしながらも、気味悪い自分を味わって
気味が悪いのだ、と感じたりしなければならないのだろう。
僕は虫が好きではありません。
だけど虫を恐れたりもしない。
ただ黙々と、力ずくで虫を殺していく。
強引な力で、僕は切断を
たぶん、誰も責めないだろう。
せめて僕くらいは、僕のことを忘れないように書いておこう。
いや、もしかすると忘れる為に、か?
別に虫一匹殺したからといって何がどうということはない
いつもやっていることだ
いや、いつもやっていることが問題なのだ
というか、ここ最近は、妙に家に虫がたくさん湧いているのだ。
主に米から。玄米から。
そういう蛾の類や、漆黒から生まれたとされる小さな生き物たちは
分類上、生き物だと言われている
にも関わらず、罰則は特に存在してない
別に、だからといって生類哀れみの令がどうたらこうたら…ということもないのだけど。
特別反省はしていない
たぶん、明日も殺すだろう。
特に蚊は、僕を不快な気分にさせるので、まず間違いなく殺すだろう。
別に、どうということはない。
なんでもない。
なにもない。
問題ない。
なにごともないのだ。
別に僕は、ここにたって、今更命の大切さなんてせつせつと語ったりはしない
とくとくと説得したりもしない。
命が大切でもないんでもないことくらい、ずっと前から知ってる。
たぶん、生まれるよりずっと前から。
ただ、僕は虫を殺す時の自分があまり好きではない。
そこに自分なんて確固たるものは、ありはしないのだろうけど、
けれどその時僕を見つめるもうひとつの目線をも、あまり好きにはなれない。
ただ、どうしても気になること
いや、むしろ気にならなくなるのが怖いこと、
それは僕がそのうち無意識に虫を殺すようになるんじゃないかっていう
そのことなのかもしれない。
僕はいちおう、虫は全て殺すようにしている。
クモは、殺したり殺さなかったりする。
蝶々も多分捕まえたら殺すと思う。
別に、もう美しいとは思わないから。
特にほとんど何も感じないから。
ただ、それでもときどき、てんとうむしや、アゲハチョウや、モンキチョウや、モンシロチョウを見ると、
妙に追いかけたいような衝動にかられることはある。
その時追っている者は、そのとき追っている僕自身の後ろ姿で、
むしろ僕はそのときその場所であることを避け、
少年であることも避け、
少年自身であろうとする。
つまり、思い出したいのだ。
無性に人の心をくすぐる、あのなつかしい、かぐわしい羽ばたきを追って
僕自身をこの世界から消し去りたいのだ。
けど、たぶん僕はそのことを段々と忘れていって
きっと何も気付かずに虫を殺すようになるだろう。
そのことを、少しだけ、ときどき怖いと思う。
子供の頃、ハエを障子の側で叩き落として解体した。
解体すればするほど、中から細かい虫が出て来た。
僕は蟲が虫からできていて、分解するともっと細かい虫になっているのかと思うとゾッとした。
息をするたびに、虫を吸い込んでるんじゃないかと思って。
大きくなるに連れて、それがウジだと思うようになった。
白い細かい生き物が黒い生き物の腹から出てくるあの光景は、
分解の主体者である僕自身が記憶せねばならないのだろう。
そして、気味悪がったりしながらも、気味悪い自分を味わって
気味が悪いのだ、と感じたりしなければならないのだろう。
僕は虫が好きではありません。
だけど虫を恐れたりもしない。
ただ黙々と、力ずくで虫を殺していく。
強引な力で、僕は切断を