もしも、誰かに対して想うことが許されるなら 僕はたぶん…
もしも、何かに対して、ただ切実に憧れる事が許されるなら、僕はたぶん…
もしも、この世界の何かに印を付けて、それを僕の名前で呼ぶことができるなら、僕はたぶん…
もしも、ここに書かれている嘘ばかりの文字列を読んで、それを僕だと呼ぶことができるなら、僕はたぶん…
もしも、四角い窓を透かして見た先に、遠くの誰かを呼び起こすことができるなら、僕はたぶん…
もしも、今日ここで失われた何かを、僕がずっと憶えておくことができるなら、僕はたぶん…
名付けることのできない何かが、ここで生まれた。
そして名前をつけられる前に、ここで死んだ。
出会うことの出来ない誰かが、ここで生まれた。
そして僕が出会う前に、その人は死んだ。
どうしようもなかった。
ただ、誰とも会いたくなかった。
僕は誰もいない世界で、僕の目に見えている世界だけが見えて
僕の耳に聞こえる世界だけが聞こえて
僕の知っている世界で、ただ僕の風景だけが心の奥にみえていればそれでよかった。
人と出会いたくは無かった。
人と出会えるなんて信じたくもなかった。
そして人に壊されるなんて、もっと思いたくなかった。
だから僕は、僕の心に決めた事だけを、ただ誰にも言わないように、ずっと密かに保ち続けた。
それが良かったのか悪かったのか、
僕は幸いにも誰にも会わずに過ごすことが出来た。
街へ出てひとりで歩いても、誰も彼もが僕の背景でしかなかった。
例え誰かがそこで声をかけてくれたとしても、僕にとってそれは耳に残らない、
いつまでもずっと耳に残らずにかき消されていくノイズでしかなかった
遠くまで、雲がのびていた
ただ僕の背景には、失われた色だけが、空という名前で呼ばれた
誰かが今僕を傷つけたとしても、
あの失われた空の蒼さだけは、誰にも汚すことは出来ないと、何度も何度も空を見て思い込んだ。
強く強く、怖がるように思い込んだ。
たぶん僕は、初めて空を見たときから既に自分を失っていた。
どこまで遠く、どこまでも届かない知の領域だけが、僕の住処だった。
僕にとって、この世界はできあがった偽物でしかなかった。
僕は、望んでここには生まれなかった
だから僕は、いつもいつもこの世界にないものだけを望んだ。
望み続けた。
死んでも。
きっと後悔なんかしない。
この世界は、僕が美しいと思える何かが根本的に足りない。
わからない、それが。
なんなのか。
たぶん、僕が生まれる前に壊れてしまったんだ。
この世界は。
誰かがどこかで、何かを間違えたんだ。
たぶん、僕は許さない。
そのことを。
この世界のことを。
誰にも呼ばれることの無かった、どこにも生まれることのなかった世界を、
僕は、許さない。
静かに、息を引き取ろうと思う。
忘れられるように、眠っていこうと思う。
それでも最後の瞬間には、何かの音を立てて。
もしも、何かに対して、ただ切実に憧れる事が許されるなら、僕はたぶん…
もしも、この世界の何かに印を付けて、それを僕の名前で呼ぶことができるなら、僕はたぶん…
もしも、ここに書かれている嘘ばかりの文字列を読んで、それを僕だと呼ぶことができるなら、僕はたぶん…
もしも、四角い窓を透かして見た先に、遠くの誰かを呼び起こすことができるなら、僕はたぶん…
もしも、今日ここで失われた何かを、僕がずっと憶えておくことができるなら、僕はたぶん…
名付けることのできない何かが、ここで生まれた。
そして名前をつけられる前に、ここで死んだ。
出会うことの出来ない誰かが、ここで生まれた。
そして僕が出会う前に、その人は死んだ。
どうしようもなかった。
ただ、誰とも会いたくなかった。
僕は誰もいない世界で、僕の目に見えている世界だけが見えて
僕の耳に聞こえる世界だけが聞こえて
僕の知っている世界で、ただ僕の風景だけが心の奥にみえていればそれでよかった。
人と出会いたくは無かった。
人と出会えるなんて信じたくもなかった。
そして人に壊されるなんて、もっと思いたくなかった。
だから僕は、僕の心に決めた事だけを、ただ誰にも言わないように、ずっと密かに保ち続けた。
それが良かったのか悪かったのか、
僕は幸いにも誰にも会わずに過ごすことが出来た。
街へ出てひとりで歩いても、誰も彼もが僕の背景でしかなかった。
例え誰かがそこで声をかけてくれたとしても、僕にとってそれは耳に残らない、
いつまでもずっと耳に残らずにかき消されていくノイズでしかなかった
遠くまで、雲がのびていた
ただ僕の背景には、失われた色だけが、空という名前で呼ばれた
誰かが今僕を傷つけたとしても、
あの失われた空の蒼さだけは、誰にも汚すことは出来ないと、何度も何度も空を見て思い込んだ。
強く強く、怖がるように思い込んだ。
たぶん僕は、初めて空を見たときから既に自分を失っていた。
どこまで遠く、どこまでも届かない知の領域だけが、僕の住処だった。
僕にとって、この世界はできあがった偽物でしかなかった。
僕は、望んでここには生まれなかった
だから僕は、いつもいつもこの世界にないものだけを望んだ。
望み続けた。
死んでも。
きっと後悔なんかしない。
この世界は、僕が美しいと思える何かが根本的に足りない。
わからない、それが。
なんなのか。
たぶん、僕が生まれる前に壊れてしまったんだ。
この世界は。
誰かがどこかで、何かを間違えたんだ。
たぶん、僕は許さない。
そのことを。
この世界のことを。
誰にも呼ばれることの無かった、どこにも生まれることのなかった世界を、
僕は、許さない。
静かに、息を引き取ろうと思う。
忘れられるように、眠っていこうと思う。
それでも最後の瞬間には、何かの音を立てて。