韓国株に4つの苦難、投資家は「わな」に注意
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は先に、自国の株式ファンドに私費を投じることで韓国企業を個人的に支援する姿勢を示した。
しかし、投資家が文大統領のまねをして韓国株を買うのは軽率だろう。
マクロ経済面でこれほど多くの問題に圧迫されている株式市場は、あまり例がない。目立つ問題は4つある。
その一部は国内に起因するもので、残りは海外要因だ。
第1の問題は、貿易および製造業のハブという韓国の特性ゆえに、米中貿易戦争の悪影響を他の多くの国より受けやすいということだ。
第2の問題は、韓国が半導体チップの主要輸出国だということだ。半導体チップの売り上げは、たとえ貿易摩擦がなかったにせよ、自動車やスマートフォン、パソコンなどの世界的な需要減を背景に低迷するだろうからだ。
第3の問題は、韓国の国内経済が後退し、潜在成長率が急激に落ち込んでいる兆候があることだ。
最低賃金を急激に引き上げたことで、雇用情勢が悪化した可能性がある。最後の問題は、韓国が日本政府との特異な経済紛争のさなかにあることだ。
最後の点に関して言えば、文大統領が投資ファンド「NH-アムンディ必勝コリア株式ファンド」を選んだのは悪い兆候だ。
資産運用会社NH-アムンディによれば、同ファンドは日本の貿易措置への直接的な対応として国内企業に投資する。
つまり、同大統領に事態を沈静化させるつもりはないことがうかがえる。
韓国株は一部の指標では、とんでもなく割安に見える。
わずか0.8倍という株価純資産倍率(PBR)は過去15年の最低に近く、金融危機のさなかに付けた水準を試そうとしている。
しかし、利益との関係では株価の魅力は大きく減じて見える。
現在の予想PER(株価収益率)は11倍だが、こちらは過去10年の最低水準ではなく最高水準に近い。
企業利益の回復が見込まれるにもかかわらずだ。
ファクトセットによると、韓国企業の利益は2019年の不振のあと、来年に約25%の回復を示すとみられる。
もし米中貿易戦争がより穏やかな局面に入れば、韓国株は間違いなく恩恵を受けるだろう。
しかし、韓国株は依然として4つの苦難のうち、3つに取りつかれている。
韓国が終末に直面している訳ではないが、市場は実勢を十分に織り込んでいないように見える。投資家は距離を保っておくべきだ。