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文春オンライン / 2019年8月29日 18時20分
韓国の文在寅大統領 ©getty
8月29日、韓国の大法院(最高裁)で収賄罪などに問われた朴槿恵前大統領(67)の上告審が行われた。
朴前大統領は2審で懲役25年・罰金200億ウォンの実刑判決を受けていたが、この日の上告審ではその判決を破棄。
ソウル高裁に審理を差し戻すこととなった。大法院は「2審の判決に法令違反があった」と指摘した。
差し戻された審理はどうなるのか。
朴前大統領をめぐっては、かねてから一部の熱狂的な支持者が「不当逮捕である」「釈放せよ」と主張していた。
その代表格である、朴前大統領の最側近の国会議員に関する記事を再公開する。(初公開 2019年4月19日)
文在寅(ムンジェイン)政権が大々的に演出して行われた「第100周年 大韓民国臨時政府樹立記念式」の様子は先日レポートした( 韓国は“反日”をエンターテインメントにしている――現地イベント潜入ルポ )。
それから2日後の4月13日、韓国・ソウル駅前には大勢の人が集まっていた。
彼ら(主に高齢層の男女)は一様に太極旗(韓国の国旗)を手にし、口々にこう叫んでいた。
「パク、クネ! 大、統、領!」「パク、クネ! 大、統、領!」「(文在寅政権は)殺人的な政治報復、政治的な人身監禁は即刻中断しろ!」
この日、行われていたのは「太極旗デモ」と呼ばれる集会だ。
日本では、朴槿恵(パククネ)前大統領を退陣に追い込んだ市民たちの「ろうそくデモ」が有名だが、それが進歩派(左派)の集会であるのに対し、この「太極旗デモ」は保守派(右派)の集まりである。
彼らが主張しているのは、職権乱用などの罪で拘束・監禁されている朴槿恵氏の「無罪釈放」だ。
道行く人々に釈放を求める署名を集めたり、ピンバッジなどの“グッズ”を販売したりもしていた。
また、朴槿恵氏が拘束満期を迎える4月16日~17日、この集団は彼女が収監されているソウル拘置所の前で1泊2日の“泊まり込みデモ”も敢行した。
分かりやすく言えば、彼らは文在寅政権を憎む“朴槿恵ファン”なのである。
はためく太極旗と、支持者たちの「パク、クネ!」というシュプレヒコール。
その喧噪の中に、多くのデモの参加者から写真撮影を求められているスーツ姿の人物がいた。名前は、趙源震(チョウォンジン)氏。この日の「太極旗デモ」を主催する極右政党・大韓愛国党の代表を務める国会議員である。
「大韓愛国党は政党とはいえ2017年に結成されたばかりで、国会議員は代表の趙氏1人だけ。
趙氏は元々、朴槿恵前大統領のセヌリ党に所属していましたが、朴槿恵氏に“崔順実(チェスンシル)ゲート事件”が起こると、セヌリ党はイメージ刷新のために『自由韓国党』と改名。
すると趙氏は離党し、大韓愛国党を結成しました。
大韓愛国党は、政党としては全国組織さえない“泡沫中の泡沫”ですが、趙氏自身は演説をすれば弁が立つ上に過激な発言をするので、一般的には“イロモノ”扱いですが、最近は右派の高齢層を中心に人気が出てきつつあります。
また、この趙氏は朴槿恵氏の忠実な子分で、かつては“親朴の核心”とまで呼ばれていました。
彼女が弾劾された直後には『朴槿恵を愛する人たちの会』なる組織を立ち上げてもいます。一貫して『(朴槿恵は)無罪である』と主張し続けています」(在韓ジャーナリスト)
趙議員は、日本ではあまり知られていない謎に包まれた人物だ。
しかし、実は今、趙氏は誰よりも過激な文在寅批判を繰り広げ、注目を集めつつある。
昨年12月、趙議員は街頭演説で次のように述べている。
「文在寅政権は無能な程度を超えました! 経済惨事、人事惨事、教育惨事、外交惨事……など、“惨事共和国”を作ってしまった文在寅政権を追い出さなければ、大韓民国が立ち上がることはできない!」
そして、今月15日には記者会見で次のようにも述べている。
「朴槿恵大統領に対する週4回、1日10時間の裁判は(北朝鮮の)金正恩(キムジョンウン)政権よりも残忍な政治報復であるし、殺人的な人身監禁だ!」
そんな趙議員が、最近、全国的に注目されるようになったきっかけが、今月4日に発生した韓国北東部・江原道(カンウォンド)で発生した大規模な山火事だ。
日本でも、X JAPANのYOSHIKIが1億ウォン(約1000万円)を寄付するなど、大々的に報じられた。
趙議員は9日に開かれた国会で、「この山火事への政府の対応が遅かった」とし、次のように質問して物議を醸したのだ。
「(山火事が発生した日の)午後11時11分に会議が始まったのに、何故VIP(文在寅大統領)は午前0時20分に会議に出席したのか? 酒に酔っていたのか? その内容をお聞きしたい」
趙議員が「(文在寅が)酒に酔っていたのか?」と発言したことには理由がある。
実は、韓国の保守系YouTube番組が、「文在寅大統領は山火事の当日にメディアの社長たちと酒を飲んでいた」などと放送していたのだ。
趙議員はおそらくこれを見た上で質問したのだろう。
青瓦台(大統領府)はこのYouTubeの内容に反発。「フェイクニュースである」と断定した上で、「山火事当日の文在寅大統領の行動に関する虚偽操作情報に対し、厳正な法執行が成されなければならない」と、YouTubeへの対抗措置を宣言した。
しかし、フェイクニュースに乗っかって質問をした趙議員については特にお咎めなし。
結果として、趙議員は名前が売れた。YouTubeの内容に言及したのは、目立つための意図的な作戦だったのだろう。
趙議員は今後を見据え、こう息巻いている。
〈私たちは大変だが、希望を見ている。大韓愛国党にノックする政治家、野党政治家たちは多い。大韓愛国党は国民だけを見つめてきた。
信頼の政治、背信なき政治、責任を負う政治をするだろう。大韓愛国党は来年の総選挙で一大波乱を起こすだろう!〉(4月14日付け「大邱新聞」のインタビュー)
しかし、現実の状況は厳しい。今、文在寅政権の支持率が下がってきているとはいえ、韓国では保守派野党への期待も未だに少ない上に、大韓愛国党の存在はあまりにも小さすぎる。
さらに、現状をひっくり返すには保守派政党が連立して進歩派に対抗しなければならないが、趙議員の大韓愛国党は古巣・自由韓国党を批判し、協力を拒んでいる。
つまり、“保守分裂”が起こっているのだ。
実際、4月3日に行われた慶尚南道・昌原(チャンウォン)の国会議員補欠選挙では、自由韓国党の候補と大韓愛国党の候補が並立したため票が割れ、進歩政党の候補が当選する結果となってしまった。
趙議員の数々の言動を見て分かる通り、彼のモチベーションは文在寅政権への「怒り」と「憎しみ」である。
趙議員は「文在寅政権が朴槿恵元大統領に殺人的な政治報復をしている」と主張しているが、仮に将来、進歩政権から保守政権に代われば、現政権に対する“新たなる政治的報復”が行われる可能性は極めて高いだろう。
こうした負の連鎖が延々と続く韓国の政治的構図にこそ最大の問題があるように思える。
◆◆◆
「文藝春秋」4月号 に掲載された「『日韓断交』完全シミュレーション」では、文在寅政権の本質・韓国社会が孕む問題点・日本が取るべき姿勢などの論点で、5人の“韓国のプロ”が議論を重ねている。有識者の知見を借りれば、日々の韓国ニュースの本質が見えてくるかもしれない。
(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2019年4月号)
2018.09.05
韓国は、日本から自力で独立を勝ち取った国ではない。
米軍が進駐して来て、「棚ぼた式」に独立を得たのだ。その点、北朝鮮のほうに一分の利がある。
韓国は日本の敗戦により、自然に独立してしまっただけなので、国家の正統性がない。
その後、自立して立派な民主主義国になれば、それでも国家の正統性が持てたかもしれないが、今の韓国を見ていてどうだろうか。
法治主義も民主主義も危うい。つまり、いまだに韓国には国家の正統性がないのである。
そのため、独立直後から、国家の正統性をひねり出すための様々な虚偽を案出し続けた。
戦前、大韓民国臨時政府と自称して、中国大陸で中国国民党の食客になっていた無頼集団があった。
初代大統領は、後に韓国の初代大統領となった李承晩である。副大統領は、共産主義者の李東輝だった。
この集団は、民族主義者と共産主義者とのごちゃまぜだったから、派閥争いばかりしていた。
李承晩はわずか2年で追放され、米国に渡ることになる。
ソ連から秘密資金をもらっても、李東輝が全部使い果たしてしまったというひどさだ。
光復軍という軍隊を持っていたが、テロリストの金九という人物の私兵のようなものだった。
光復軍の仕事と言えば、ミャンマーのイギリス軍の委託で、9人の兵を派遣したことくらいである。
これらは全部、日本兵を投降させるための日本語の宣伝ビラ作りとして雇われただけなのだ。
イギリス人からもらった雇金は、人事を握っていた金九に全部食べられてしまった。本当にひどい集団なのである。
ところが、現在の韓国では、「これが韓国独立運動と建国の基礎だ」と偽装されているのだ。
全部ウソである。
「ウソをつかなければならなかったのだ、かわいそうに……」などと同情してはいけない。
必ず嵩にかかってくる。
「こんなになったのも、全部日本のせいだ」と開き直るかもしれない。
絡み・ごね・たかりは彼らの唯一の戦術なのだ。
歴史上、モンゴル人も満州人もロシア人も、みんなこれに参ってしまった。
いわば最終の独立兵器なのだ。普通の日本人はかかわらないのが一番だ。
こんなわけで、独立の偽史を捏造するために、韓国は「反日」でなければならないのである。
このような国では、愛国心が反日に変わってしまう。
中国も同じだ。日本軍と戦ったのは国民党軍のほうで、共産党軍ではないから、彼らも自分たちが戦ったのだという偽史を必要とするのだ。
したがって、反日を外すことはできない。
よく韓国人と付き合っている日本人で、「そんなにひどい人たちではないよ、立派な紳士、率直な青年、魅力的な女性もたくさんいる」と、言う人たちがいる。
有名なピアニストの故・中村紘子さんが、次のように言っている。
「私の知る彼らは穏やかで節度があり、しかも親密な人間味に溢れている。
要するに一言で言えば、立派な人たちなのだ。
それで私は何度も当惑してしまう。
マスコミで騒がれている攻撃的な韓国人とは、全く違うではないかと。
まるで違う人種と言って良いほど。
なんて思う私はお人好しのバカカバマヌケなのかしら(といったら、私が尊敬する彼らに対して失礼に当たると思うのだけれど)」(『新潮45』2014年9月号、随筆「この世には、分らないことがいっぱい」)。
失礼だが、当たり前ではないだろうか。
はじめから竹島をコソ泥するような泥棒や、卑劣なテロリストばかりいるわけがない。
しかし、ここからが要注意だ。
なぜその人があなたに紳士的な態度をとってくれるのか、と言えば、ほぼ、あなたに地位やお金やコネがある場合に限られるのである。
魅力的な韓国女性と結婚すると、親族中が日本に遊びにやって来る。
「親しき中には礼儀なし」を本当に実践し、あなたの家の冷蔵庫を勝手に開けて、中のものを食べるかもしれない。注意すると逆にキレて、「反日」を合言葉に怒鳴りまくることもある。
私は韓国に6年間住んでいた。
別に好きで居たわけではない。韓国の大学で教えていただけなのだ。
その時に、何人か友人ができたが、みんな消えてしまった。韓国は浮き沈みの激しい社会なので、すぐどこかへ行ってしまう。
新住所を残してもいかない。初めのうちは一生懸命探していたが、本当に疲れた。韓国人とは親友にはなれない。
日本の大学に戻り、国立大学の教授になると、韓国人が、自分に良くしてくれるようになった。
働くより遊びが基本の人たちだから、韓国の大学教授はしょっちゅう休暇を取る。
日本であんなことをしていたら大変だ。日本の大学に来たいというので手続を取ってあげると、平気でドタキャンする。
怒ると、逆に「この恩知らず!」と言ってキレられる。
別に恩に着ていても、着ていなくても関係ない。
相手に良くしてあげれば、それだけで彼らにとっては恩恵の施しなのだ。
共通の友人がいる場合には、「あいつは恩知らずだ」と告げ口して回る。
朴槿恵前大統領と同じだ。
これを韓国語でイガンヂル(告げ口による離間策)と言う。そういうことをするのは、決して特別な人たちではない。みんな見た目は立派な紳士なのである。
そんなドギツイ人々だが、面白い人たちでもある。無念の恨は、諦めの楽天性をも生むのだ。笑える韓国の冗談を一つ紹介しよう。
韓国人と日本人と中国人が、一緒に豚小屋に入り、誰が一番長く我慢できるかを競争した。
まず日本人が飛び出してきた。
「うう、臭い、たまらん」。
次に韓国人が飛び出してきた。
「まだ中国人が残っているぞ、よくいられるものだ」。
日本人と韓国人が中国人を待っていると、なんとブタが飛び出してきた。
「あんな不潔な奴、連れて来たのはどこのどいつだ」(2007年朝日新聞会員制インターネットサービス、アスパラクラブ「ACI」欄)。
目くそ鼻くそを笑うというか、韓国人は中国人のことを、こんなふうに日常的に侮辱しているのだ。
韓国では人間性を卑【しめるような冗談が朝から晩まで続く。
さて、これからの朝鮮半島と中国との関係がどうなるかと言えば、私たち専門家は、中国・韓国の接近が東アジアの将来像だと思っている。
中国は、北朝鮮に送る原油のパイプラインを色々と操作する。それで北朝鮮はじり貧の状態に陥ったりする。
一方の韓国はどうかというと、国会先進化法という法律を作ってしまったので、強行採決ができない。
議員の5分の3の賛成がないと法案が通らないから、全然法案が成立できない状況が続いている。
経済も、韓国は貿易立国だから、ウォン高は致命的なことだ。
そこに左翼の政党と労働組合がどんどんと力を広げていった。
おまけに、検察と憲法裁判所が勢力争いをしているから、
検察が勢力を伸張しようとして、慰安婦補償請求とか、日本徴用工補償請求とか、日韓基本条約破りの変な判決ばかり出す。
セウォル号の大事故(2014年)を覚えているだろうか?
あの時も、海洋警察や自治体、学校などが別々の事故対策本部を作ってしまい、混乱の極みだった。
あれと同じように、韓国人は分業が苦手なのだ。
分業は仕事を人に任せて成立するわけだから、まず他人を信じなければ始まらない。
分業ができないということは、信頼関係も、約束関係も、契約関係もだめだということだ。
実はこれが、日本から見た場合の東洋諸国の大きな問題なのである。
韓国はこれからも、近代化を乗り越えることができず、どんどん崩れていくことだろう。いわばダーク・サイドに落ちるのだ。
破綻国家の北朝鮮と、ダーク・サイド国家の韓国。
貧困と堕落が統一される日が来るかもしれない。
中国がこの両国をどのように手玉に取るかが、これからの東アジア政治の焦点となることだろう。
DMZ(38度線・非武装中立地帯)がなくなると、ただの廊下に逆戻りし、北から中国の企業が雪崩れ込むかもしれない。
中国の企業はすべて奴隷労働力を必要とするブラック企業だ。
しかし、あまり手玉に取りすぎると、またあの伝統の独立DNAが、絡み・ごね・たかりとなって中国人を襲うことになるだろう。そうなると今度は反中運動が高まる。
なにしろ内心では中国人を馬鹿にしているから、「反中」は「反日」よりもっとひどくなると思われる。
慰安婦問題については、朝日新聞が2014年9月11日に、もう半分謝罪したのだから、
慰安婦の強制連行などなかったこと、韓国の反日団体がこれでメシを食うために話を大きくしたこと、
「河野談話」や「村山談話」が、韓国に同情したり韓国をなめたりしたため、彼らの執拗な独立戦術にはまったということは、もはや明らかだろう。
在米韓国人移民たちが、米国の各地に慰安婦像・慰安婦碑を建てたりしているのは、自分たちが祖国を捨てたという事実を、「反日」という愛国行為によって隠蔽したいという意図が働いている。
そんな彼らが米国で落ち着き、そろそろ自分たちにも正統性がほしいと、心中思ったのであろう。母国とかかわれば、反日運動は儲かるから一石二鳥でもある。
日本海の呼称問題は、彼らのウリジナル(ウリ=朝鮮語で「我々」の意+オリジナルの造語)という意識による。
以前、韓国は「孔子様まで韓国人だ」と言って中国人に怒られたことがあるが、韓国には文化的な特徴が何もないので、外国のものをパクっては自分たちのほうがオリジナルだと言い張るのだ。
「日本海」を「東海」と勝手に呼んでいるのもこのためだ。
劣等感(正統性コンプレックス)を認めずに打って出てくるというのも、彼らの独立DNAの「絡み」の一つだろう。
韓国は東西、南北とも高速バスで3時間あれば横切れる小国である。
元来、廊下のところが38度線で切れて、はじめて国家らしくなった。
日本の対韓輸出額は総輸出額の7%、対韓輸入額は4%にすぎない(2017年度)。
日本人が韓国に無関心でも全く問題ない。
しかし、治安の面では、無関心でばかりいられない。
海を渡ってくる密入国者、詐欺団・強盗団、売春、麻薬組織に対処しなければならないし、これからは爆弾魔もやって来ることだろう。
困った隣人たちから日本国民を守るためにも、まずはこうした基礎知識が必要であろう。
(本文は、古田博司 著『「統一朝鮮」は日本の災難』、序章を再編集したものです)
2019/2/20
2011年3月に起きた東日本大震災による福島第一原子力発電所事故をきっかけに、国内で急速に出てきた脱原発の動き。その有力な代替エネルギーとして、自然エネルギーが注目されました。
世界の多くの国ですでに基幹電源となりつつある自然エネルギー。
ところが、日本ではあまり浸透していません。さらに政府が2030年までに掲げた22~24%の電源を自然エネルギーでまかなうという目標も、多くの先進国と比べると前向きなものとはいえないかもしれません。
なぜ、日本では自然エネルギーへの取り組みが遅れているのでしょうか。
自然エネルギーの基礎的な知識をはじめ、日本が抱える課題、自然エネルギーを導入するにあたってどのようなメリットがあるのか、公益財団法人「自然エネルギー財団」(会長・孫正義ソフトバンクグループ代表)の事務局長・大林ミカさんにお聞きしました。
公益財団法人自然エネルギー財団の事務局長 大林ミカさん 2011年8月、自然エネルギー財団の設立に参加。財団設立前は、アラブ首長国連邦の首都アブダビに本部を置く「国際再生可能エネルギー機関(IRENA)」で、アジア太平洋地域の政策・プロジェクトマネージャーを務めていた。1992年から1999年末まで原子力資料情報室でエネルギーやアジアの原子力を担当、2000年に環境エネルギー政策研究所の設立に参加し、2000年から2008年まで副所長。2008年から2009年までは駐日英国大使館にて気候変動政策アドバイザーを務めた。2017年、国際太陽エネルギー学会(ISES)よりグローバル・リーダーシップ賞を受賞。
―― 石油など有限と言われる化石燃料に代わるものとして、自然エネルギーの普及・開発は国内のみならず世界中の大きな課題として注目されています。具体的に自然エネルギーとは、どのようなものがあるのでしょうか。
大林ミカ(以下、大林) 自然エネルギーとは、再生可能エネルギーとも言われ、使い続けても枯渇することがなく、なおかつ自然に存在する資源のことを指します。
電気やガス、石油などのエネルギー供給事業者に対して原子力や化石エネルギーの有効的活用法を促進する「エネルギー供給構造高度化法」という法律も制定されているのですが、その中で再生可能エネルギーは以下のように定められています。
再生可能エネルギー(自然エネルギー)とは? 太陽光、風力その他、非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができると認められるものとして政令で定めるもの (出典:経済産業省資源エネルギー庁『なっとく!再生可能エネルギーとは』より
実際にさまざまな資源がありますが、その中でも代表的なものとして、太陽光、風力、水力、地熱、バイオエネルギー、海洋の6種類が再生可能なエネルギーとして注目されています。
(出典:公益財団法人自然エネルギー財団『自然エネルギーの電力を増やす企業・自治体向け 電力調達ガイドブック』より
―― そもそも再生可能エネルギーが議論されるようになったのは、いつ頃からなのでしょうか。
大林:代替エネルギーとして一般的に広く注目されるようになったのは、1970年代の石油ショックのあたりからですが、研究そのものはもっと古くから続けられてきています。
1990年代より気候変動・地球温暖化が地球規模の深刻な環境問題として議論される中で、石炭を中心とする化石燃料の利用を減らして、人間活動から発生する温室効果ガスをいかに削減し、地球の温度上昇を食い止めるかが、大きな課題となっています。
エネルギー生産には、自然エネルギーのほか、石炭やガスや石油の化石燃料、そしてウランを利用する原子力の三つがあります。すでに化石燃料については、国際的なエネルギーの専門機関「国際エネルギー機関(IEA)」などが、気候変動の不可逆的な影響を避けるためには、採掘可能な化石燃料の三分の二は、「採掘してはいけない=利用してはいけない」と警告し、各国で石炭離れが始まっています。また、原子力についても、チェルノブイリや福島原発事故の影響だけではなく、放射性廃棄物の処分場が見つかっていないこと、安全性の問題、建設コストの上昇などから、導入が滞っています。
気候変動問題や、エネルギーの環境に与える影響を考えるなら、エネルギーの利用を減らす省エネルギーやエネルギー効率化とともに、自然エネルギーの利用しかないのです。
―― 自然エネルギーの導入で何が変わりますか?
大林:自然エネルギーのメリットは、大きく6つあります。
1.エネルギー源が枯渇しない 2.化石燃料を活用した火力発電や、原子力発電のように二酸化炭素や放射性廃棄物を排出しない 3.燃料そのものが不要である 4.基本的に燃料に費用がかからないので、ほぼ初期投資のコストのみで運転でき、技術革新により、世界各国で最も安価なエネルギーとなった 5.化石燃料やウランのように資源が偏在しないため、資源をめぐる争いがなく、ほとんどどの国でも利用が可能である 6.地域にねざした分散型の利用となる
自然エネルギーは、気候変動対策としてだけではなく、地域の経済社会の仕組み、ひいては世界の地政学すら変える可能性があるエネルギーです。
―― 分散型エネルギーとは、どういうことですか。
大林:ひとことで言えば、利用の規模が小さく各地に分散するエネルギー、ということです。原子力や火力発電の設備は、大きなエネルギーを提供できる一方で、分散して建設することはできないし、一箇所で大きく発電して、大量消費地に一気に送る、ということになります。太陽光で大きいといわれる「メガソーラー」でも、原子力や火力の1,000分の1の規模です。
分散型エネルギーは、各地域で発電所の建設が可能となり、市民が主体となって、投資や建設に参加することも可能です。そして、地域ごとに発電所が増えていけば、その地域での雇用が増え、これまで地域外から購入していたエネルギーを地域で創ることができ、地域経済の活性化に寄与することができます。
日本国内の地域をみてもこういった効果がありますが、国レベルでみると、海外からの輸入に依存していたエネルギー利用を、国内で賄う国内経済の活性化と、なによりエネルギー安全保障の確立につながります。
特に途上国では、国家予算の多くを化石燃料の輸入に費やしていたり、また、多くの国が貧困層のエネルギーアクセス問題を抱えています。自然エネルギーは、国家経済の改善に貢献し、送電網などのインフラが整う前にもすぐに導入することができるので、貧困の解決や、化石燃料からの脱却による環境保全にもつながります。
またレジリエンス(回復力、復元力という意味)という観点からも、分散型の自然エネルギーは優れています。1箇所に集まる集中型エネルギーの場合、常に、事故や自然災害でシステム全体が一気に落ちる可能性を考えなくてはなりません。その影響力は、大変大きなもので、それをカバーするために、電気事業者は、大きなコストをかけているのです。
一方で分散型エネルギーの場合、ひとつ落ちたとしてもすぐにほかの発電所がカバーできる体制が整えられます。近年、気候変動が進み、自然災害への対応が吃緊になっていますが、緊急時に柔軟に対応できるという点も、分散型エネルギーの大きな特徴と言えるでしょう。
―― 自然エネルギーは、地域社会の仕組みそのものを変えられる可能性もあるということですね。
(デンマークの首都、コペンハーゲン沖にあるミドルグルンデン洋上風力発電所)
―― 日本では2011年に東日本大震災と福島原発事故が起こり、原子力発電が停止、電力政策の見直しを迫られました。その後、政策が導入され、自然エネルギーも伸び始めていますが、実際に現在の日本での普及率はどのくらいなのでしょうか。
大林:2018年10月の日本国内の自然エネルギー電力は、水力を含めて16%程度です。国外をみると、たとえば、自然エネルギーへのシフトを国が率先して推進してきたデンマークでは、2016年の時点で発電で51.8%に達し、2050年には100%自然エネルギーを目指しています。またドイツは2018年には42%に達しており、2030年には65%まで引き上げることを決めています。水力などの利用が可能という利点もあって、ノルウェー、オーストリア、ニュージーランド、アイスランド、コスタリカなど、すでに100%、あるいはほとんど100%自然エネルギーに達している国もあります。他にも多くの国が、少なくとも電力については、100%自然エネルギーを目指しています。こうした国々の実績と比較すると、足元では自然エネルギーは増加しているものの、日本政府が掲げているのは2030年までに22〜24%と、低い目標です。
―― このヨーロッパと日本の自然エネルギーに対する理解、推進力の差は、何が原因なのでしょうか。
大林:まず、大きな壁となっているのは政策の整備の遅れです。日本では自然エネルギーを効率的に利用するための電力市場や送電網の運営規則が、まだ整っていません。また、自然エネルギーのコストが他国に比べて大変高いのですが、これは建設を効率的に行うための技術が、まだ未熟であるということが原因に挙げられます。日本では、自然エネルギーの本格的な商業利用は震災以降に始まったと言ってよく、今後、コスト削減のための技術や政策のイノベーションが期待されています。
日本では、2012年に「固定価格買取制度」が導入され、自然エネルギーの本格導入が始まりました。この制度は、「自然エネルギーで発電した電気を一定価格で一定期間買い取る」という制度です。自然エネルギーは、基本的に燃料費がかかりませんし、燃料の調達が変化することもないので、一定した価格で買い取りが保証されることで、安定した事業を展開することができるのです。
また、補助金と違って設備への補助ではなく、発電した電力に対する保証なので、発電すればするほど利益を得ることができ、より効率的に発電するための技術革新が進みます。まず米国で80年代にこの制度の原型が導入されてから、世界各国でさまざまな形で導入され、自然エネルギーの大きな起爆剤となってきました。こういった制度が、将来の国の野心的な目標値と一緒に導入されることで、投資家や企業が、安心して自然エネルギーの技術開発や事業展開に取り組むことができ、競争が起こり、コストが下がり、導入量が拡大していくのです。
(太陽光を電気に変える技術は、ここ数年の間に大きく進化。よりコンパクトな設備でも生活に必要な電気量は十分にまかなえるようになったことから、太陽光エネルギーは一気に身近なものになった)
―― 欧米と同じように、政府の力によるものも大きいと思いますが、そのほかにも自然エネルギーが急速に普及し始めている要因はありますか?
大林:なによりもコストが下がっていることが拡大の一番大きな要因です。技術の進歩が、自然エネルギーのコスト低下の大きな後押しとなっています。また、太陽光はここ10年で8割もコストダウンし、今後5年でさらに6割コストが下がる、と予測されています。太陽光や陸上風力はすでに世界の多くの地域で最も安い電源となっています。洋上風力や集光型の太陽熱発電など、これまで高いと思われていた電源もどんどんコストが下がり、市場で競争しています。また、IT技術の進捗によって、太陽光や風力など発電が変動する自然エネルギーの電力市場への統合が容易になりました。
技術と政策の両方のイノベーションが、自然エネルギーの拡大を加速させています。日本国内でも自然エネルギーの拡大が進み、変革が起き始めています。この流れをさらに加速させるためにも、まだまだ改善しなければいけない法整備を進めていくと同時に、電力の利用側、特に企業との連携も重要なポイントになってくると考えています。
―― 企業が自然エネルギーを導入する上で、どのようなメリットが考えられますか。
大林:企業活動へのプラスの効果が生まれます。自然エネルギーの導入に積極的に取り組んでいる企業は、企業活動そのものが社会貢献につながることになります。自分たちが働く活動を通して、自然エネルギーを増やし、環境に貢献できる、これは社員個々にとって働く意義を問う、大きなモチベーションとなるはずです。
また、世界的な動向では、投資家はSDGsが掲げる持続可能な社会づくりに寄与する企業を高く評価する傾向にあり、企業評価が高まります。いまや、SDGsへの取り組みは、経営レベルで企業のミッションにもなっています。その選択肢のひとつとして、自然エネルギーを選択することは、企業経営にとっても実質的なメリットとして注目されています。
実際にアップル社やグーグルは、電力を100%自然エネルギーにシフトし、さらに自社のサプライチェーンの100%自然エネルギー化を目指しています。エネルギーがグリーンでなければ、こういった大企業のサプライチェーンから外される可能性も出てきているのです。逆にいえば、グリーンなエネルギーを使っている企業は、高く評価される、と言うことです。
アップル社やグーグルは、発電側に直接投資をしてその電力を長期にわたって購入する「PPA(電力購入契約)」という方法を使っています。こういった取り組みをする企業は、電力を利用する消費側としての役割だけでなく、自然エネルギーに直接投資をして発電を拡大する、投資家としての役割も担っています。
日本では、企業が自然エネルギーを導入する際の市場の仕組みが整っていません。PPAは海外では一般的な方法ですが、日本ではまだ可能ではないし、二酸化炭素の排出に課金する本格的な「カーボン・プライシング」政策が導入されていないので、自然エネルギーを導入する環境メリットがありません。
しかし、日本の企業でもすでに自然エネルギー100%を達成するキャンペーン「RE100」への参加を表明している企業が出ています。また、わたしたち自然エネルギー財団がWWFジャパン(公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン)やCDPジャパンと始めた気候変動イニシアティブは、脱炭素社会に向けたパリ協定の達成を後押しするためのネットワークですが、2018年7月の発足時には100社あまりだった参加団体が、2019年2月には340社以上に増えるなど、多くの賛同を得ています。こうした動きが、制度作りを後押ししていくことでしょう。
―― 再生可能エネルギーをはじめ、SDGsを企業理念に取り入れていかないと、将来的には企業活動そのものが持続できなくなる可能性も考えられるということですね。
大林:前述の気候変動イニシアチブは、日本がSDGsについて取り組まなければ、企業活動そのものが持続可能でなくなることを懸念した、日本の企業の動きが発端となっています。企業そのものが、国に対しても自らについても、気候変動への取り組みを積極的に行うよう求め、自ら行動する動きです。
自然エネルギーは、広く多くの人が携わることのできる分散型のエネルギーです。「太陽を巡る戦争はない」という言葉があります。自然エネルギーを基盤とした社会では、開放的で自由な文化が根付き、精神的な豊かさも育まれていくのではないか。持続可能な社会づくりという目的だけでなく、そうしたメリットも自然エネルギーにはあるのではないかと個人的には思っています。
公益財団法人 自然エネルギー財団 https://www.renewable-ei.org/ 2011年、ソフトバンクの孫正義氏が設立。脱原発を標榜し、自然エネルギー(再生可能エネルギー)100%を目指して、研究機関の支援と科学的知見に基づく政策提言を行う。東日本大震災による福島第一原子力発電所事故を受け、政府に対して「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」を強く提言し、制定を後押しした
<取材・編集>サムライト