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ラストベルト化におびえる「現代タウン」-韓国一豊かだった蔚山

2019-09-21 11:30:43 | 日記

ラストベルト化におびえる「現代タウン」-韓国一豊かだった蔚山

            2019年8月22日 10:17 JST                                                
  • 世界的な造船業界の激変のみならず財閥の構造的問題も影響            
  •  蔚山から現代側が「研究開発を担う人材と利益を持ち出す」との指摘            

造船世界一の現代重工業で溶接工として15年間にわたり働いたパク・ジンオクさんは2016年に早期退職に応じた。

それ以降、3万5000人ほどが同じように同社を辞めるか仕事を失った。

 
現代重工の造船所がある蔚山はかつて、9年連続で1人当たりの所得が韓国一となるなど豊かな都市だったが、劇的な凋落(ちょうらく)に見舞われている。
 
世界的な造船業界の激変のみならず、韓国を世界有数の工業国に押し上げた「チェボル」と呼ばれる財閥の構造的な問題も浮き彫りとなっている。
 
 
SKorea Ulsan Eco

蔚山にある現代重工の造船所

撮影:ソン・ジュン/ブルームバーグ

蔚山でのインタビューで、パクさん(46)は「定年まで数年しかなく、高い給料をもらっていた人には特に大きなプレッシャーがあった」と語った。

釜山にも近い蔚山は「現代(ヒュンダイ)タウン」として知られる。
 
巨大な造船所のみならず、世界最大の自動車組立工場や世界的規模の製油所もある。
 
現代グループを創業した故・鄭周永氏が1970年代に始めた4キロメートルに及ぶ造船ドックは、競合する欧米の造船会社を葬り去った。
        
そして今、韓国が直面するのは、中国からの同じ脅威だ。
 
ブルームバーグ・インテリジェンスによれば、世界造船市場における中国のシェアは2021年までに52%に達する。08年は24%だった。
 
一方、08年に38%のシェアを誇った韓国は21年までに22%に低下する見通し。
 
中国はまた中国船舶重工集団と中国船舶工業集団の合併を計画しており、現代重工をはるかにしのぐ巨大造船会社を誕生させようとしている。
Rise of China’s State-Run Shipyards

多くの業界で成長が鈍化している韓国では、チェボルによる産業モデルの有効性に疑問を抱く国民が増えている。     

 現代重工は今年3月、韓国の大宇造船海洋との提携で合意し、世界1、2位の造船会社を新たなソウルの持ち株会社の下に置くことを決めたが、
 
債務に苦しむ現代重工の造船事業が置き去りにされるとの懸念から、蔚山では抗議行動が続々と起きている。5月には市長が公の場で剃髪し抗議した。
SKorea Ulsan Eco

「現代タウン」と呼ばれる蔚山

写真家:ソン・ジュン/ブルームバーグ

蔚山大学のキム・ヨンミン教授(生産工学)によれば、蔚山から現代側が「研究開発を担う人材と利益を持ち出す」ことになる。

蔚山の産業が衰退し「ラストベルト(さびついた工業地帯)化する高い可能性がある」と同教授は語った。

SKorea Ulsan Eco

現代重工が製造した船舶用プロぺラ

写真家:ソン・ジュン/ブルームバーグ
SKorea Ulsan Eco

現代重工の造船所近くにある市場

撮影: SeongJoon Cho/Bloomberg

日立、成長投資へ1兆円調達 守りから攻めの財務に 22年3月期まで M&A・設備投資向け

2019-09-21 11:09:35 | 日記

日立、成長投資へ1兆円調達 守りから攻めの財務に 22年3月期まで M&A・設備投資向け

2019/9/21付

情報元

日本経済新聞 朝刊

 
日立製作所が「攻めの財務」で成長戦略を再加速する。

2022年3月期までの3年間に借入金や社債で約1兆円を調達。本業で稼ぐ資金なども合わせて、M&A(合併・買収)や設備投資を合計約4.5兆円と倍増させる。

非中核事業の売却などで財務改善が進んだため、負債を活用して資本効率(総合2面きょうのことば)を高める戦略に転換する。

これまで日本企業は借金返済を優先し、投資などは抑制してきた。そうした縮み志向を抜け出す企業が増えていく可能性がある。

 

負債で設備投資などを増やして業績拡大につなげれば、少ない資本で効率的に稼ぐことになる。これを「財務レバレッジ」といい、米国企業などが得意とする戦略だ。

投資家が重視する自己資本利益率(ROE)を押し上げる効果もある。

この財務レバレッジを効かせる戦略に日立は転じる。08年の米金融危機後の業績悪化を受けた構造転換が進んだためだ。

金融や物流、工具などの事業を相次いで売却し、09年当時に22社あった上場子会社は4社まで減少した。

海外プラントなど不採算事業からも撤退した。投資は抑制し、有利子負債は19年3月末で約1兆円と36年ぶりの低い水準になった。

 

調達する1兆円は全額を負債でまかなう。銀行借り入れが中心で、社債も発行する。

財務改善で格付けはダブルAマイナス(格付投資情報センター)と10年ぶりの高さになっており、低利で調達できる見通し。

非中核事業や持ち合い株などの不稼働資産もさらに8000億円相当を売却する。

持ち合い株は「ゼロにするのは難しいが、できる限り減らす」(西山光秋・最高財務責任者)。現預金を2000億円取り崩し、本業で稼ぐ現金(営業キャッシュフロー)も加えて今後3年で約4.5兆円を成長投資に回す。

19年3月期までの3年の約2倍の規模となる。

最大の項目はM&Aで総額2.5兆円を投じる。スイスABBの送配電部門には負債の引き受け分も含めて1兆円規模を振り向ける。

そのほかでは、「海外のIT(情報技術)サービスなどで良い案件があれば検討する」(西山氏)。日立はあらゆるモノがネットにつながるIoTビジネスを拡大しており、相乗効果が見込めるためだ。

残る2兆円は設備投資や研究開発などに充てる。

センサー設置による工場の新鋭化などの投資や、人工知能(AI)やロボットの研究が重点分野となる。配当などの株主還元も業績拡大に応じて充実させる。

日本企業の財務は攻めの機運が徐々に強まっている。

M&Aや設備投資を増やした結果、上場約3600社(金融など除く)は18年度に手元資金を考慮した純有利子負債が約130兆円と1年前より6%増えた。金利低下を受けて、足元では社債発行が急増している。

日本企業のROEは10%弱と米国勢(15%)を下回る。日立は前期実績で6.8%だった。

財務レバレッジの効果でROEが世界水準に近づけば、日本企業は投資マネーを呼び込みやすくなる。

その半面、負債を過度に積み上げると不況には弱くなる。景況感などを見極めながら、攻めの度合いを最適化する手腕が問われることになる。