日本と世界

世界の中の日本

橋下徹「日本の外交が韓国より弱い理由」 これが膠着した事態を動かす交渉術

2020-11-07 16:43:12 | 日記

橋下徹「日本の外交が韓国より弱い理由」 これが膠着した事態を動かす交渉術

 

北朝鮮情勢が劇的に動いている。トランプ米大統領、金正恩朝鮮労働党委員長という米朝両国の個性的な指導者に注目が集まる中、

橋下徹氏は、自国の国力を冷静に見極め北朝鮮に対して「妥協・譲歩」を行った文在寅韓国大統領の交渉力に注目する。

日本外交が学ぶべきポイントとは? プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(5月8日配信)より、抜粋記事をお届けします――。

現状維持では真の外交といえない。弱腰批判を乗り越え妥協・譲歩の道を

自分自身に力のある者が、さらに他人の力を借りる場合には無敵となる。ところが自分自身では力のない者が、他人の力を借りる場合には、交渉相手や周囲からはバカにされるし、何と言っても、その力を借りた他人とは、完全に上下の関係に陥ってしまう

 

自分自身弱い力のまま、相手と譲歩して交渉を進めるべきか。それとも他人の力を借りて、強気に交渉を進めていくべきか。

原則は、前者。まずは自分のありのままの力を基に、交渉を進めていくべきである。

どうせ力を借りた他人から見返りの利益を求められるなら、その見返りの利益分を、交渉相手に直接提供した方がいい。

力を借りた他人に見返りの利益を渡すことと、他人の力を借りずに交渉相手に直接利益を与える譲歩をすることを比べて、当方の持ち出しに大差がないのであれば、まずは他人の力を借りずに、交渉相手に直接利益を与える譲歩をすべきだ。なぜなら、他人の力を借りた場合の方が、交渉相手や周囲からリスペクトをされない分、マイナスになるからだ。

具体的に見てみよう。日本はアメリカの力を全面的に頼っている。日本固有の問題である北朝鮮による日本人拉致問題についても、アメリカや韓国に、北朝鮮との交渉議題に上げてもらうよう頼んでいる。

憲法9条の下、自らの力が制限されている日本においては、アメリカや韓国の力を頼るしかない。しかし、そのようにアメリカや韓国の力を頼れば、アメリカや韓国にそれ相応の見返りを求められることを覚悟しなければならない。

そのような見返りに応じるくらいなら、今の力の弱い日本のまま、北朝鮮に直接それなりの譲歩をした方が、北朝鮮はもちろん周囲の世界各国からも、ジャイアンであるアメリカの力を借りるスネ夫のように見られることは避けられる。

(略)

韓国の文在寅氏は、アメリカや日本から苦言を呈されながらも、融和政策つまり北朝鮮への譲歩の姿勢を貫いた。自分たち韓国に、北朝鮮と軍事的に勝負する力がないことを認識していたなら、的確な判断だ。アメリカの力を横に置き、自分たち韓国の軍事力を率直に分析・評価する。それも単純な軍の力だけでなく、国民が被害を受けたときのことをも想定する。

北朝鮮はあのような国だから、国民に被害が出てもどうってことない。しかし民主国家である韓国の場合は異なる。国民に大きな被害が出れば政権が吹っ飛ぶ。日本は韓国以上に国民の被害に神経質だ。

このようなことを考慮し、もちろん同一民族による融和という思想を基に、「自らの意思」で北朝鮮に譲歩し、融和をお願いしたということが北朝鮮情勢を動かした。自分たちに力がないなら、譲歩することによってしか事態は動かせない。

逆に、北朝鮮は核兵器保有という「自らの意思」を貫いたことによって事態を動かした。

この点僕は、「日本は自らの意思で事態を動かしていない。外交に意思がない」と「橋下徹の日本改造論」というインターネットの番組(AbemaTV)で指摘した。そしたら出演者の松川るい参議院議員(外交官出身)が、次のように反論してきた。

「日本も尖閣諸島については防衛の意思をはっきり示し、防衛力を強化している。『自由で開かれたアジア太平洋戦略』も明確な日本の外交意思だ」とね。

この日本外交が良い方向であることは否定しない。でも事態を動かす「自らの意思」とは言えないんだよね。

尖閣諸島の防衛強化は、あくまでも中国に攻められているところを防戦=食い止めるところまで。すなわち中国公船の領海侵入を食い止めたり、接続水域への侵入に警告を発するところまで。それ以上に、港や灯台などの公的施設を尖閣に設置するなどして尖閣を完全に日本の領土として確保するまでの意思は示していない。また「自由で開かれたインド太平洋戦略」は、皆で仲良くしていきましょうね、といういつもの日本の外交戦略で、中国が力を入れている南シナ海の領海化や一帯一路構想に「対抗するだけ」であって、膠着している事態を自らの意思と能力でグリグリと動かしていくものじゃない。あくまでも防戦なんだよね。

(略)

これが日本外交の弱さなんだ。それは力がないことの弱さではない。事態を動かす強い意思がないことが日本外交の弱さだ。日本は軍事力で事態を動かすわけにはいかない。そうであれば、力がないなら、ないなりの対応でもって、事態を動かさなければならないのに、その強い意思がないことの弱さなんだ。

(略)


わが国の総合的な外交力の強化をめざして

2020-11-07 16:28:02 | 日記

制作提言

わが国の総合的な外交力の強化をめざして


 森喜朗元総理が委員長、私が事務局長を務める自民党「外交力強化に関する特命委員会」の中間報告「12の提言」がまとまりましたので、以下、その全文及び参考資料を掲載します。


茂木敏充

もてぎ としみつ
外務大臣
 
 
 

平成18年11月24日
自由民主党政務調査会
外交力強化に関する特命委員会

はじめに

 今わが国の外交に求められているものは、国際社会の諸問題に機動的かつ的確に対応し、国益を踏まえた強力な外交を展開するためのオールジャパンとしての総合的な「外交力強化」である。

 そのためには政治が主導して、在外公館やマンパワーの増強など外交力強化の核となる外交実施体制を充実するとともに、経済人・有識者・NGOなど、広く外交にかかわる多様なプレイヤーとの連携を強化することが必要である。さらに、日本の持つ経済力、科学技術力、文化・情報発信力やODAなどのあらゆるツールを総動員し、外交に取り組む体制を構築することが不可欠である。

 なお、この外交力強化にあたっては、政府の歳出削減の方向性や外務省改革の進展と評価にも配慮することが肝要である。

 外交力強化に関する特命委員会(森 喜朗 委員長)では、有識者や専門家からのヒアリングを通じ、これまで集中的に協議を重ねてきた。その成果を中間報告として取りまとめ、以下の通り提言する。

1.総合的な「外交力強化」の核となる外交実施体制の充実

提言1.英仏並みの150大使館体制に向け在外公館を増強する。

(1)

外交ネットワークの抜本的な強化に向け、在外公館の増強・整備を実現する。特に、大使館については、わが国の国益と相手国との相互主義の原則等を踏まえ、英仏並みの150大使館体制を目指す。(資料1、2参照=資料はこちらからご覧ください.下記資料3~10もこのファイルに掲載されています.資料をご覧になるにはAdobe Readerが必要です.)

その際、現存する各在外公館についても、効率的に運営されているかについて詳細に検証し、各国に複数ある総領事館については、必要性に応じ改廃を検討する。

また、新設の大使館の規模については、医療・治安を含む地域の事情、必要性等を踏まえ、柔軟に決定し、その役割を限定したコンパクトな大使館が可能か否かについても検討する。

(2)
大使には民間人・役人OBを問わず、経験豊かで強い人脈を有した人材を積極的に起用する。また、地域の事情に応じ年齢について柔軟に対応し、外務省の中堅職員や外部人材を起用していく。

提言2.10年計画でマンパワーを増強する。

(1)
第一回会合において決議した『外交力強化に関する緊急提言』の通り、今後10年間での定員2,000人増の達成を目標としつつ、実質的なマンパワーの増強を図る。その際、海外経験豊富な商社OB、青年海外協力隊OB等を採用するとともに、これまでのルールの見直しを含め他省庁からの積極的な人材活用を推進する。さらに、優秀な現地人材や民間の専門家等の一層の活用を図る。なお、本省と在外公館の適切な人員のバランスについては、実際の必要性を踏まえつつ検討する。(資料3参照)

(2)
上記のマンパワー増強の取り組みに際しては、国家公務員純減に向けた取り組みの中でメリハリのある配分を行い、平成19年度において、目標達成に向けた着実な第一歩となる定員増を実現する。

2.「オールジャパン」としての多様なプレイヤーとの連携強化

提言3.経済界との連携を強化し、日本経済の活力を活かした外交を展開する。

(1)

総理外遊への経済界からの必要に応じた同行や経済界の地域別ミッションとの連携強化を図る。この提言については、既に『外交力強化に関する決議』(10/6)を取りまとめ、委員会として政府・関係機関に対し申し入れを行ってきた。その結果、早速、APEC首脳会議後の総理のベトナム訪問に際し、経済界が100人を超えるミッションで同行することになったことは大きな第一歩である。(資料4参照)

今後は総理外遊に加え、外務大臣や経済産業大臣等の閣僚の外国訪問に際しても、経済界との連携を図っていく。

(2)
企業の海外展開を支える現地の法的基盤整備や知的財産権保護等への対応など、わが国の企業支援を在外公館の本来の仕事の一つとして積極的に推進する。その一環として、日本企業の相談相手となる実務相談窓口を在外公館に設置する。

(3)
企業人が家族を伴い安心して海外勤務ができるよう、日本人学校・補習校等のあり方を検討し、これら生活基盤整備への支援を抜本的に強化する。


提言4.「オールジャパン」のプレイヤーを発掘し、NGO等との連携を強化する。

(1)

現地に根付いて「日本の顔」として活躍する日本人を「親善大使」(仮称)とするなど、対外広報、情報発信、文化交流等の分野での連携を強化する。

 また、知的交流や広報活動等において有識者をより戦略的かつ効果的に派遣する。

(2)
NGOを今後の外交の主要なプレイヤーの一人として位置付け、連携を更に強化する。このため、NGOの自助努力を促すとともに、NGOの能力向上支援を拡充し、また、可能な限り柔軟な支援のあり方を検討する。

(3)
都道府県や市町村といった地方が果たす外交面での様々な役割を十分認識し、姉妹都市交流のみならず地方自らの国際的な取り組みの一層の促進に向け、さらなる連携強化を図る。


提言5.外交の一翼を担う議員外交を積極的に展開する。

(1)
議員外交はわが国外交の重要な一翼を担うものであり、日本での国際会議の開催等を通じ、各国からの議員招請を増加させ、その活動を主要国・近隣諸国に遜色のない水準に高めるべく努力する。また、米国をはじめ主要国において次世代を担うヤングリーダー達との間の交流を積極的に推進する。

(2)
議員外交の活性化に向け、衆参両院の関連予算の充実、運用の拡充を検討するとともに、委員会の海外派遣のあり方についても見直しを図る。これらの具体化に向け、当特命委員会としてはさらに検討を重ねていく。


提言6.将来の外交を支える人材、国際社会に通用する人材を育成する。

(1)

国際機関の邦人職員の増強、特に国際機関の「長」の獲得、将来を見据えたトップクラス若手人材の派遣に積極的に取り組む。(資料5参照)

また、様々な国際会議の議長職等を担い得るマルチ外交の人材の育成についてもキャリアパスのあり方の検討も含め取り組んでいく。さらに、平和構築分野における人材育成やPKO活動への幹部要員等の派遣を推進する。

(2)
将来、日本と外国との「架け橋」となり、日本外交の「財産」となるような知日家・親日家を戦略的に育成する。


3.多様な外交ツールの総動員

提言7.戦略的なODAをより強力に実施する。

(1)
わが国民間企業の海外進出や投資の呼び水となるようなインフラ整備に対してODAを積極的に活用する。また、ASEANとのEPAの早期実現を始めとする経済連携促進に向け、現地の経済・社会環境の整備等にODAを戦略的・効果的に活用する。

(2)
このような戦略的なODAの活用等のため、大使館・政府関係機関の垣根を越えた協力(いわゆる「4J」、「5J」:Japan Embassy, JICA, JBIC, JETRO, Japan Foundation)を推進するとともに、「4J」、「5J」とわが国企業との連携を強化する。

(3)

今後5年間でODA事業量を100億ドル積み増すことを目指すとの国際的なコミットメントの実現に向け、外交の重要なツールたるODAを拡充する。

その際、ODAの質の改善に留意するとともに、無償・技協・円借款・国際機関への協力等の適正なバランスを確保する。(資料6参照)


提言8.日本外交への幅広い理解獲得を目指し、情報の発信力を強化する。

(1)
力強い外交を推進するためには、内外の世論の幅広い理解や支持の獲得が不可欠であり、パブリック・ディプロマシー(広報外交・対市民外交)を、拠点の拡充を含め抜本的に強化することが肝要である。このため、政府・外務省ホームページのさらなる充実や在外公館による英語・中国語・韓国語等によるホームページの拡充など、インターネットを通じた発信力を強化するとともに、世界に通用するTV国際放送の実現をめざす。(資料7参照)

(2)
総理・官房長官の記者会見を英語で迅速に発信するとともに、わが国の主張が外国の主要メディアに取り上げられるよう様々なレベルでの活動を推進する。


提言9.「美しい国、日本」の文化外交を積極的に推進する。

(1)
文化外交は、軍事力に頼らないわが国外交の大きなツールの一つであり、今後とも文化交流や人物交流、文化協力などを積極的に展開していくことが必要である。このため、伝統文化や現代文化(ポップカルチャー)などジャパンブランドの発信基地となる海外拠点を整備・拡充するとともに、青少年交流の拡充や日本研究者への支援などを通じ、外国における日本文化理解者の裾野を拡大するための取り組みを抜本的に強化する。(資料8参照)

(2)
日本語教育を強化し、特に、例えば「モノづくりのための日本語」のような日本企業の進出に役立つ日本語教育を実践する。同時に、日本企業による日本語習得者の積極的な雇用を推奨する。


提言10.世界に誇る日本の科学技術、ノウハウを積極的に活用する。

(1)
わが国には世界トップレベルの科学技術やエネルギー問題、公害問題などを乗り越えてきた経験、ノウハウが存在する。資源エネルギー、保健衛生、地球環境など国際社会の諸課題の解決に向け、わが国の科学技術を駆使した国際協力に取り組む。

(2)
また、省エネ、公害対策、教育、防災など途上国が必要としているわが国の経験・技術・ノウハウを外交の力として積極的に活用していく。

 

4.強力な外交を支える外交基盤の整備

提言11.外務大臣が重要案件に集中できる体制を整備する。

(1)
国際社会の主要なプレイヤーであるわが国の外務大臣としては、国会開会中であっても重要な国際会議には可能な限り出席すべきである。また、外務大臣が重要外交案件に集中して取り組めるよう、外務大臣が出席することが通例となっている委員会のうち、衆議院外務委員会および参議院外交防衛委員会への出席は原則外務大臣とするものの、その他の関連委員会については、外務副大臣出席による柔軟な対応が可能となるようにする。(資料9参照)

(2)
外務大臣を始めとする関係閣僚が効率的に随時国際会議に出席できるよう、中型で利便性の高い政府専用機を導入すべくその予算化を図る。



提言12.外交の最前線基地である在外公館の活用とその強化を図る。

(1)
邦人保護、医務官による保健相談等の医療サービスの充実など在留邦人を支える在外公館の機能を強化する。

(2)
企業の輸出促進・投資誘致・観光促進のイベント等に大使公邸を積極的に活用する。例えば、わが国の農水産品等を紹介する物産展の開催や公邸料理人による日本料理の提供など、大使公邸を日本の「食」文化の発信基地とする。これらの機能を的確に果たすよう、日本を代表する施設として公邸を含む在外公館施設の整備・充実を図る。

(3)

民間企業や各国外交官の給与・手当の水準及び各地の事情を考慮した在勤手当の見直しを行い、為替・物価の変動や経費増などを反映させる形で待遇を含む勤務環境を改善する。(資料10参照) 特に、厳しい勤務地については、治安・医療・子女教育等の問題に充分な配慮を払う。また、外交活動に係る配偶者の果たす役割にも配慮する。

情報収集など外交活動に係る諸経費の充実、更なる予算化を図るとともに、運用の柔軟化を図る。


5.最終報告に向けて

 以上が、外交力強化に関する特命委員会として、これまでの議論を取りまとめた「12の提言」である。提言の実現に向け政治がリーダーシップを十分発揮し、今後の予算編成や制度改革に積極的に取り組んで行くことが何より重要である。

 一方、総合的な外交力の強化に向けては、これまで十分に取り上げられなかった課題やさらに詳細に検討すべき問題も残されている。当特命委員会としては、来年の最終報告に向け、(1)各提言の実現に向けた具体的な検証・検討、(2)情報の収集・分析体制の強化など残された重要テーマについて、さらに検討を重ねていく予定である。


中国がWTO事務局長選挙で韓国を支持しなかった3つの理由

2020-11-07 16:15:30 | 日記

中国がWTO事務局長選挙で韓国を支持しなかった3つの理由

2017年ワシントンでの米韓通商会議での兪明希候補(韓国産業通産省HPから)

韓国政府はWTO(世界貿易機関)事務局長選挙の最終ランドで同じ女性のナイジェリアのヌコジ・オコンジョイウェアラ元財務相に完敗した兪明希・産業通商資源部通商交渉本部長の引き際を巡って苦心しているようだ。

両候補への支持国の数は公式的には明らかにされていないが、AFPなどの外電によると、オコンジョイウェアラ候補はWTO加盟国(164か国)のうちアフリカ連合やEU諸国を含め104か国から支持を得たとされている。

「票差」が僅差ならば、事務局長の選出は全加盟国のコンセンサス(全会一致)が条件となっていることから米国の後押しがあれば、1999年の時のように任期を6年とし、両候補に3年交代で事務局長をさせる案も浮上する可能性もあったが、これだけ大差が付くと、選出されることの正統性が問われ、現実的に難しい

(参考資料:WTO事務局長選挙 ギブアップしない韓国に起死回生の逆転のシナリオはあるのか?

韓国としては、オコンジョイウェアラ候補を推したアフリカ諸国やEU諸国との関係上、また保護主義の米国と歩調を合わせれば、WTOが掲げる自由貿易主義の基調に反することから本来ならば、

WTO理事会が先月28日にオコンジョイウェアラ候補を推挙した段階で撤退を表明すべきだったが、WTOの最大スポンサーである米国がオコンジョイウェアラ候補への拒否権を行使したため辞退のタイミングを逃してしまったようだ。

次期事務総長は9日に開かれるWTOの一般理事会で決まることになっているが、どうやら延期される見通しだ。

オコンジョイウェアラ候補の選出案を上程しても、米国が拒否すれば、否決されるのが目に見えているからだ。

開催地のスイスは新型コロナウイルスが再び拡大し、現在5人以上の集会が禁じられている。

そのため延期は表向き「コロナ」を理由にしているが、実際は米国の大統領選挙結果に伴う米国の態度変更を期待しての引き延ばしとみられている。

大統領選挙の結果、国際協調主義のバイデン氏が当選すれば、米国が拒否権を行使しない可能性もあるからだ。

どちらにせよ、米国の反対でいつまでもトップが決まらなければ、WTOの正常な活動が制限されかねない。

このためWTOにとっての理想は兪明希候補が進んで辞退することだが、韓国としても米国との関係上、そう簡単には引き下がることができないのが実情である。

韓国にとって予想だにしない展開となったのは、EU諸国の支持を取り付けられなかっただけでなく、アジアの大国・中国が韓国を支持せず、ナイジェリアの後方支援に回ったことだ。

なぜ、中国は韓国の兪候補を支持しなかったのか?その理由は主に3つある。

一つは、アフリカは中国にとって一帯一路(シルクロード経済ベルトと海洋シルクロード)を実現するうえで欠かせないことだ。

中国にとっては投資拡大も含めてアフリカへの進出は国家戦略となっているし、友好国のナイジェリア出身の事務局長選出は中国の利益になるとみている。

オコンジョイウェアラ候補は中国の戦略を理解していることで知られている。

彼女は2018年にファイナンシャル・タイムズ紙に「中国とアフリカの人口は全世界の人口の3分の1を占めているので両国が相乗作用すれば世界経済に莫大な影響を及ぼせる」と寄稿していた。

次に、韓国の兪候補が事務局長に選出されれば、事務次長のポストを失うからだ。

現在、4つの事務次長の一つを中国の易小准WTO常駐代表が占めている。

中国人初の次長である。仮に事務局長が韓国から選出されれば、次長は同じアジアから出すことはできない。

ちなみに、前任のブラジル出身のアゼベド事務局長の時は中国のほか、ドイツ、ナイジェリア、米国から選出されていた。

最後に、中国は兪候補を「親米派」とみなしていることだ。

中国は米国と貿易戦争の真っただ中にある。すでに米国とは訴訟合戦も始まっている。

米国の中国製品に対する関税は不当として、WTOの紛争処理小委員会で争っている。

従って、WTOの事務局長が中国よりか、米国寄りかは、中国にとっては死活的な問題でもある。

兪候補は昨年発効した米韓自由貿易協定(FTA)の改定に産業通算資源部通産交渉室長として携わったことで米国の受けが良い。

米韓FTAの改定は2018年1月に交渉が始まり、9月に署名、批准,発効と短期間で決着している。

米通商代表部には友人も多く、そのことは今回、米国が「紛争解決の仕組みがコントロール不能で基本的な透明性の義務を守る加盟国がない時期において、実戦経験を持つ真の専門家が率いる必要がある」として兪候補を全面的に支持したことからも明らかだ。

WTO事務局長選挙に手を挙げてしまったがために貿易パートナー1位の中国と2位の米国の板挟みにあい、どうやらあちら立てればこちらが立たずの状況に置かれしまったようだ。まさに、進むも地獄退くも地獄である。

(参考資料:WTO(世界貿易機関)事務局長選挙で韓国が勝てない4つの理由

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊


ソウルの電気代は東京の半額、国策に苦しむ韓国電力

2020-11-07 15:44:55 | 日記

ソウルの電気代は東京の半額、国策に苦しむ韓国電力

2020/11/6 2:00
日本経済新聞 電子版
<form id="JSID_formKIJIToolTop" class="cmn-form_area JSID_optForm_utoken" action="https://www.nikkei.com/async/usync.do/?sv=NX" method="post">
 
</form>
NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

 

韓国電力は経営の自由度が極端に低い(韓国南東部の蔚山市の原子力発電所)

韓国電力は経営の自由度が極端に低い(韓国南東部の蔚山市の原子力発電所)

アジアの主要都市で電気料金が安い場所はどこか――。答えは物価水準が日本とほぼ変わらない韓国ソウル。

日本貿易振興機構(JETRO)の調査によると、ピーク時の業務用電気料金はジャカルタと並んでソウルが最も安く、東京のおよそ半額だった。

韓国政府は国策として料金価格を安くして産業発展を促してきた経緯がある。それを一手に支えてきたのが半官半民の韓国電力だ。

韓国取引所に上場する同社株は18%を韓国政府、33%を政府系の韓国産業銀行が保有する。

それでも27%を持つ外国人投資家など一般投資家も49%を占める。

上場企業ながら電気料金は政府方針で押さえつけられ、脱原発を掲げる文在寅(ムン・ジェイン)政権の発足後は電源選択にも厳しい制約が課せられる。

 

 

そのため韓国電力の業績は振るわない。

19年12月期の売上高は前の期比2.2%減の58兆9300億ウォン(約5兆5000億円)で営業損益は2兆8400億ウォンの赤字(前年同期は2兆1900億ウォンの赤字)だった。

文政権発足後の18年、19年は大幅赤字を記録。

20年は感染症に伴う資源価格下落で燃料コストが減少し黒字転換も見え始めている。

それでも営利企業としての先行きは暗い。

5月には学識経験者や市民団体で組織する政府主催のワーキンググループが「電力需給基本計画」の草案を策定した。

そこでは2034年までに電力構成の原発比率を現在の約20%から10%以下に制限され、同じく割安な石炭火力は現在60基の発電所を30基に半減させることが盛り込まれた。

代替電力として、太陽光や風力など相対的に割高な再生可能エネルギーの比率を現在の15%から40%以上に引き上げる指針が示された。

 

 

韓国電力の金鐘甲(キム・ジョンカブ)社長は韓国紙、毎日経済新聞の取材に「公益性だけを追求するのは株式会社ではない」と明言しており、電力料金の見直しを求めるとともに事業の多角化を進める方針を示す。

目先で収益貢献を期待するのが原発輸出プロジェクトだ。

政府と産業界一体で受注したアラブ首長国連邦(UAE)での4基建設計画に続いて、サウジアラビアでの原発建設・運用の受注を狙う。

ただ世界的に原発新設への風当たりは強く、安全性の強化などでプロジェクトの遅延やコスト増の懸念がつきまとう。

金社長は発電コストの増加を電力料金に転嫁しようと発電原価も公開し、電気料金制度の改変の必要性を訴える。

もっとも韓国電力が値上げを断行すれば、生産工程で電気を大量に使う半導体工場や自動車工場など韓国の主要産業の競争力の低下につながる。

輸出主導型の韓国経済の屋台骨が弱まれば文政権が掲げる雇用拡大など主要政策に綻びが生じかねない。

大きな政府を志向する文政権と与党勢力。一方で手足を縛られながらも資本効率の追求を促される上場企業、韓国電力。半官半民の同社の宿命ともいえる苦悶(くもん)は終わることはない。

(ソウル=細川幸太郎)


韓国経済に暗雲もたらす現代自動車の業績悪化、深刻な台所事情とは

2020-11-07 14:52:03 | 日記

韓国経済に暗雲もたらす現代自動車の業績悪化、深刻な台所事情とは

韓国の輸出を支えてきた
現代自動車が営業赤字

今年7~9月期、韓国の実質GDP(国内総生産)成長率は前期比1.9%増だった。

GDPの中身を見ると、輸出がプラス成長を支えた格好だ。

コロナショックを境に、韓国経済は輸出依存度を一段と高めているようだ。

その状況下、韓国の輸出を支えてきた現代自動車が営業赤字に陥った。

赤字の要因として、中国市場における販売減少とエンジン欠陥への対応費用の増加がある。

世界の新車販売市場の中で、中国市場の回復はかなり早いペースで進んでいる。

それにもかかわらず、販売台数が伸びず市場シェアを落とす現代自動車はそれなりの問題を抱えているとみられる。

現代自動車の業績悪化が、輸出主導で景気を回復してきた韓国経済に与える影響は軽視できない。

足元の世界経済を俯瞰(ふかん)すると、大手ITプラットフォーマーに加え、有力な自動車メーカーが各国経済の持ち直しに重要な役割を発揮している。

ややばらつきはあるものの日米欧の自動車需要も徐々に上向いている。

わが国ではトヨタ自動車がそうした動きをとらえ、景気下支えに重要な役割を果たしている。

そのため、各国経済にとって自動車産業の重要性は増している。

今後、世界の自動車業界では買い替え需要の取り込みに加え、自動車の電動化や自動運転の実現といったCASEや、さらに長期的には都市空間の一部としての自動車開発が進む。

機動的かつ大規模に設備投資を行うなど、自動車メーカーの力が経済の安定にかなりの影響を与えるはずだ。

技術面で不安を抱える現代自動車が熾(し)烈化する競争環境に対応することは容易ではないだろう。それは、韓国経済の先行き懸念を高める要因の一つだ。

懸念される中国など
主要市場でのシェア低下

10月26日、現代自動車は7~9月期の業績発表を行った。

全体の印象として、同社の業況は見た目以上に厳しい。

まず、地域別の売り上げ動向が目を引く。

特に、中国での販売が前年同期比31%減だったことは見逃せない。

欧米での販売も減少した。それに対して、インド、ロシア、韓国国内の販売台数は増えた。

中国に着目する理由は2つある。

まず、中国市場の新車販売台数の回復の勢いは強い。

4月から9月まで、補助金政策の延長などによって、中国ではこれまで我慢してきた自動車の買い替え需要が回復している。

中国市場の需要回復ペースは他の国・地域を凌駕している。

2点目として、中国では高価格帯の車種が人気を得ていることだ。

良い例として、トヨタのレクサスブランドの売れ行きが好調であることだ。

9月までトヨタの中国販売台数は6カ月連続で増加した。

中国経済の成長に支えられた購買力の高まりや、低燃費車としてのHV(ハイブリッド自動車)を中国政府が重視し始めたことにトヨタは機敏に対応している。

サーフィンに例えれば、ビッグウエーブをうまく捕まえた。

現代自動車の業況は、トヨタとは大きく異なるように映る。世界に先駆けて需要が戻った中国市場で、同社は消費者のニーズに応えることが難しくなっているのかもしれない。

インドとロシアでの販売台数の伸びは、どちらかといえば、ローエンド車種中心のメーカーとして現代自動車のポジションが定着化しつつあるように映る。

そうしたブランドイメージを持つ消費者が各国で増えれば、同社が高価格帯の高級ブランドを育成し、収益性の向上を目指すことは容易ではない。

それに加えて、現代自動車の基礎的な技術力への不安も高まった。

過去、現代自動車のシータ2エンジンの発火が報告されてきた。

今回、同社はエンジンの欠陥をあらためて認め、7~9月期の決算で引当金を計上した。それも赤字決算の主要因だ。

また、同社が成長の起爆剤として重視するEV(電気自動車)、「コナ・エレクトリック」は火災事故の発生によってリコールが行われている。

短期間での高い成長を
目指したツケ?

現代自動車は、短期間での高い成長の実現にこだわってきた。

エンジンの発火やEVリコールなどの発生は、その「ツケ」といえるかもしれない。

エンジンを搭載した自動車の生産には3万~5万点もの部品が必要だ。

最も重要な安全性の確立をはじめ、振動や騒音の抑制、車体やエンジンの耐久性の実現には多くの時間と労力が伴う。

ある自動車の専門家は、「数多くの実験を繰り返すなど、ある意味では回り道をした方が技術を蓄積しやすい」と指摘する。

しかし、それでは競争に遅れてしまう恐れがある。

独フォルクスワーゲンがディーゼルエンジンのデータを改ざんしたのは、その負担があまりに大きかったからだ。

欠陥が指摘されてきた現代自動車のシータ2エンジンは、三菱自動車など海外の技術、ノウハウを導入して開発された。

それは、韓国が重視するわが国からの技術移転の一例だ。

現代自動車はわが国から主要技術を移転することによって、短期間での相応の技術力の発揮を目指した。

ラーニングカーブ(学習・習熟曲線)をイメージすれば、同社はわが国自動車メーカーに比べてよりスティープな(急勾配の)学習効果の発揮を目指し、日本の自動車メーカーに追いつき、

追い越せのスピリットを高めた。高い成長にこだわるアニマルスピリットは企業の成長を支える重要な要素だ。

また、技術移転は、工業力が相対的に未熟な国が比較的短い期間で資本を蓄積し、高い経済成長を目指すためにも有効である。

ただ、企業は常にゴーイング・コンサーンでなければならない。

そのために自動車メーカーにとって、人々が安心して運転、乗車できる基礎技術が不可欠だ。それが、企業と社会(消費者、規制当局、投資家など)との良好かつ持続的な関係を支える。現代自動車に関していえば、ゴーイング・コンサーンという企業のレゾンデートル(存在意義)をどう理解してきたかに疑問符が付く。

 それよりも、現代自動車は短期間で世界のシェアを手に入れようと無理を重ねてきたようにみえる。引当金計上などによる現代自動車の業績悪化を一過性の問題として扱うのは早計だ。

輸出依存度高まる
韓国経済への打撃

 エンジンの欠陥とEV発火問題は、今後の現代自動車の業績だけでなく韓国経済に無視できない影響を与える可能性がある。なぜなら、自動車は半導体と並ぶ韓国の主要輸出品目だからだ。

 7~9月期、輸出が韓国経済の回復を支えた。9月15日の米国の制裁発動を控えて、中国のファーウェイなどがサムスン電子などから半導体の在庫を買い集めたため、輸出が押し上げられた。他方、内需は低迷している。個人消費は減少した。民間企業の設備投資は増えたが建設投資の落ち込みが大きく、総資本形成も減少した。新型コロナウイルスの感染が引き続き深刻であることと、ワクチン開発の不確実性を踏まえると、韓国の内需は低迷し、輸出依存度は高まる可能性がある。

また、米中対立が韓国経済に与える影響も軽視できない。米商務省はサムスン電子に対してファーウェイへの有機ELパネル供給は認めたが、主力製品である半導体の供給は認めていない。その状況が続けば、これまでのように半導体輸出の増加を中心に韓国経済が安定を目指すことは難しくなる。

 その一方で、中国は補助金政策の強化などによって半導体の自給率向上を目指している。韓国にとって中国企業は重要顧客から競争上の脅威に変わり始めている。スマートフォン市場では中国メーカーが価格面を中心に競争力を発揮し、サムスン電子などのシェアを奪い取ろうとしている。

 輸出によって経済の安定と成長を実現してきた韓国経済にとって、エンジン搭載車と今後の成長産業としての期待を集めてきたEV事業面で、現代自動車の基礎的な技術力への不安が高まった影響は大きい。自動車産業のすそ野は広く、自動車部品の生産の減少や、業績悪化懸念による労働争議の激化など「負の影響」が連鎖的に波及する恐れがある。

 足元、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、「日本海」の呼称などを巡ってわが国への批判を強めている。その背景の一つには、現代自動車の業績悪化などが景気先行き不安を高め、結果として世論が自らを批判する展開を避けようとする思惑があるだろう。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)