勝又壽良のワールドビュー
好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。
憲政史上初となる現職検察総長の職務排除という事態を受け、一線の検事の反発が「検察の反乱」に拡大する兆しを見せている。
大検察庁(最高検)の研究官らは25日、会議を開き、「秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官の指示は違法で不当な措置だ」とする声明を出したのに続き、釜山地検東部支庁の検事らも全国の検察庁で初めて、末端検事による会議を開き、同様の立場を表明した。
政権支持メディアの『ハンギョレ新聞』は、これまで法務部長官サイドの情報を流してきたが、検察官の反発が全国的な規模になる動きを見て狼狽える様子を見せている。
『ハンギョレ新聞』(11月26日付)は、「韓国の検事ら、法相による検察総長の職務停止命令に反発する声明を発表」と題する記事を掲載した。
憲政史上初の現職検察総長の職務執行停止命令に、検事たちが集団行動に出た。
一般の検事たちの反発が激しくなるにつれ、集団行動の形である「一般検事会議」が開かれる可能性も取りざたされている。
(1)「検察総長の参謀組職である最高検察庁検察研究官約30人は25日に会議を開き、検察内部の掲示板にユン・ソクヨル総長の職務停止の見直しを求める声明を発表した。
彼らは「納得しがたい手続きと過程を経て電撃的に(ユン総長が)職を遂行できなくなった。
検察業務の独立性を侵害するだけでなく、法治主義を深刻に傷つける行為で、違法であり不当だ」としたうえで、「検察が憲法と良心によって与えられた職務と責任を全うできるよう、法務部長官が今からでも職務執行停止処分を再考してくださるよう切に要請する」と書いた」
(2)「釜山(プサン)地検東部支庁の一般検事約20人も「事実関係が十分に確認されていない現時点で検察総長に対して懲戒を請求するのは、違法であり不当な措置」だとし、「真相を確認する前に検察総長の職務を排除したのは納得しがたい」という意見を示した」
ユン検察総長の業務停止という韓国で初めての「事件」に韓国の検察官に激震が走っている。身分のいかんを問わず、政権に不利な捜査をすればこういう仕打ちを受けることへの怒りだ。
個別の検察庁から全国的に拡散する兆しも表れている。
他地域の一部検察庁でも検事らの動きがあったとされる。
ある検事は「政権の不正疑惑を捜査していた検事をあぶり出す『虐殺人事』、尹総長の辞任を迫る相次ぐ捜査指揮権発動、検察への不当な指示反発など秋長官に対して募っていた検事らの怒りが爆発するのではないか」と話した。
これは、『朝鮮日報』(11月26日付)記事である。
(3)「検察内部の掲示板には、幹部級の検事らの公開批判も相次いだ。
ユン総長とともに国政壟断の捜査に参加した釜山地検東部支庁のキム・チャンジン刑事1部長は「政権の利益にならない事件を捜査すれば、総長も懲戒を受け、職務から排除される可能性があるというシグナル」とし、「事実上、検事たちに対する警告」だと指摘した。
キム部長検事は「検事も過ちを犯した場合は懲戒を受けなければならず、総長も例外ではないが、(総長が)何の対応もせず職務から排除されれば、怖くてものも言えなくなるのではないか」と反問した。
清州(チョンジュ)地検のチョン・ヒド部長検事も「長官一人でこうした驚くべきことができるだろうか。政権に寄生する政治検事と協力者がいたからこそ可能なことだ」と一喝した」
部長検事という幹部クラスが、自分の身に降りかかる政権からの圧迫をものともせずに立ち上がっている。
これは、韓国社会の特色であるが、怒りの火が一挙に燎原の火になる可能性を秘めている。政権にとっては、命取りにもなりかねない動きだ。
(4)「検事らはチュ長官が掲げたユン総長の職務排除の事由に「根拠がない」と主張した。
済州地検のキム・スヒョン人権監督官は「総長を職務から排除するにはそれにふさわしい根拠、正当性と名分がなければならないが、職務排除の事由のどこにもそのような内容はない。憂鬱で惨憺たる気持ちだ」と書き込んだ。
匿名希望のある部長検事は「汚職で起訴されたチョン・ジヌン光州(クァンジュ)地検次長検事は引き続き一線で事件を決裁するのに、総長は明確でない事由で退かなければならないのが理解できない」とし、「検察改革ではなく検察掌握だ」と反発した」
文政権が掲げる「検察改革」は、「検察掌握」であると非難されている。
政権は、検察改革という名目によって検察を骨抜きにして刃向かわないようにする意思だ。
文大統領が、この権について沈黙しているのは、自らが退任後に検察捜査を受けないように予防策を張り巡らしている結果であろう。
(5)「同日、ソウル中央地検のいくつかの部署は、部長検事の主宰で会議を開き、対策を協議した。
会議に出席したある検事は「一般検事や副部長級以上の幹部たちがこの問題にどう対応するかについて議論したが、まだ明確な解決策は見つかっていない」と述べた。
地方検察庁では「一般検事会議」が召集される可能性もあると見られる。
ある検事は「光州や大田(テジョン)などで一般検事会議を計画中だと聞いている。集団声明はこれから始まるだろう」と予測した。
若手検事たちの集団行動である「一般検事会議」は、ファン・ギョアン法務部長官がチェ・ドンウク検察総長を婚外子疑惑を口実に監察を指示したときの2013年以来招集されていない」
「一般検事会議」とは、ヒラ検事の会議である。この段階まで火が燃え移ると、事態の解決は容易でなくなろう。
文大統領は、今回の騒動を黙認しているが、いずれ自身に飛び火するリスクもでてきた。