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「バイデン政権」でも日本に軍事力強化を要求する

2020-11-08 17:46:47 | 日記

「バイデン政権」でも日本に軍事力強化を要求する

 
 
 
民主党のバイデン氏の「勝利確実」に沸く米国(C)朝日新聞社© AERA dot. 提供 民主党のバイデン氏の「勝利確実」に沸く米国(C)朝日新聞社

バイデン大統領がようやく誕生することになった米国。

ワシントン在住時から現在まで外交・政治問題について米議会等でロビーイングを行い、日本の国会議員らの訪米をアテンドしてきた「新外交イニシアティブ」代表の猿田佐世・弁護士(日本・ニューヨーク州)が今後の日米関係を緊急寄稿した。

***

米大統領選は混乱を極めているが、バイデン氏が大統領になることがほぼ確実視されている。では、「バイデン政権」はどんな対日政策をとるのだろうか。

“Personnel is policy(人事こそ政策だ)”

これは、前回の米政権交代の際に、筆者が元ホワイトハウス高官に言われた言葉である。

米国は4年あるいは8年に一度、政権交代がある。

政権交代の際には、4~5000人の政府職員が各省庁の職を辞し、代わりに政府外から新政権を支える多くの人が各政府機関に登用され「政権入り」する。

この「回転ドア」で人が入れ替わることで、政権交代における実質的な政策の変化を担保するのだが、ホワイトハウスから各省庁まで4~5000人の入れ替わりというのは大変な大移動である。

そこで11月上旬の大統領選挙で当選した勝者は、1月20日に大統領に就任するまでの間、「政権移行チーム」を作り、大統領就任直後からスムーズな政権運営ができるように準備を進めていく。

バイデン陣営も、投票日直後から政権移行チームのウェブサイト「BIDEN-HARRIS TRANSITION」を立ち上げ、準備を進めていることをアピールしている。

そのバイデン政権「移行チーム」における高官たちの顔ぶれを見、彼らがこれまでどのような発信をしてきたのか確認することで、新政権がどのような政策をとるのかが見えてくる。

では誰が高官に就任するのか。

筆者のところには、さっそく米国から政権移行チームの名簿リストがメールアドレスと共に回ってきた。

未確定の名前も含まれていたが、これから米メディア、のみならず日本メディアも、誰が政権の高官になるのか掴むために必死の取材を行っていくことになる。

選挙中から国防長官候補として名高いのがミシェル・フロノイ氏である。

オバマ政権で国防次官を務めていた人物である。

また、選挙中からバイデン氏の外交顧問として公の場で発言してきたアントニー・ブリンケン氏も大統領補佐官、あるいは国務省の極めて高位につくと目されている。

このブリンケン氏もオバマ政権時代の国務副長官である。

他、オバマ時代にバイデン副大統領の安全保障補佐官であったジェイク・サリバン氏やオバマ政権で対アジア政策の中心的存在であったカート・キャンベル元国務次官補の名前も挙がっている。

他にも何人もの名前が挙がるが、その多くはオバマ政権の高官であった人々である。

この4年間、トランプ氏が傍若無人の振る舞いを続けてきたことから、少なくない日本人がバイデン氏当選を期待し、バイデン政権になると日米関係が良くなるのではないかという期待を含めて選挙戦を見ていたと思う。

しかし、この高官候補の名前を並べてみると、オバマ政権そのものを見るようで、既視感にめまいがするほどである。

そして、その既視感は筆者にとって、必ずしも前向きな既視感ではない。

トランプ氏よりは人権や民主主義の観点からバイデン大統領の方が良いと筆者も思うものの、誤解を恐れずにいえば、この名簿は、「戦後長らく続いてきた日米関係に戻り、これまでどおりの問題が私たち日本人を悩ませ続ける」という重い心境になるものであった。

では、具体的にはバイデン政権の対日政策はどのようなものになるだろうか。

先に述べたとおり、政権の外交担当者の多くがオバマ政権の高官であり、バイデン氏自身もオバマ政権で外交を得意とする副大統領であったことから、バイデン政権の外交政策はオバマ政権に非常に近くなると予想される。

もっとも、バイデン政権が時計の針を4年前に戻そうとしても、決定的に難しい点がある。

一つには、トランプ政権下で悪化した米中関係である。

特に今年に入って、コロナウィルスの端緒が中国とされ、また、香港弾圧に代表される中国の対外強硬姿勢がさらに明白になってきていることに対して、米国内に強い反発が起きている。

また、熱狂的なトランプ支持者が国民の相当割合を占めていることがこの選挙でも改めて明らかになっており、今後も一定の影響力をもっていくであろうことも4年前と異なる。

これらのことが相まって、バイデン政権でも対中強硬路線は続くだろうと多くの専門家が分析している。

バイデン政権の具体的対中政策を読むには、国防長官候補とされるミシェル・フロノイ氏の論文を読むのがわかりやすい。

フロノイ氏は、外交分野でもっとも影響力のある雑誌「フォーリンアフェアーズ誌」に寄せた「アジアにおける戦争を防ぐには」との論文で、中国に対抗するためには米国は自国の軍事力への投資を行うとともに、インド太平洋地域への永続的なプレゼンスを強調すること、

また、同盟国やパートナー国との関係を強化することを主張している。そして、同盟国やパートナー国とは、定期的に軍事演習を行い、新しい能力の整備を加速すべきと訴えている。

 

「同盟再構築」「同盟強化」

これが民主党陣営のキーワードであり、対中政策の鍵でもある。日韓に多額の米軍駐留経費を求め、NATO離脱をほのめかすなどしたトランプ氏を「同盟軽視」とバイデン陣営は批判し続けており、8月に出された民主党綱領でも同盟強化を謳っている。即ち、バイデン政権の対アジア戦略は、「日本を含む同盟国の力を借りながら中国に対して厳しく対応する」というものである。

バイデン大統領は米軍駐留経費4.5倍増しといった一見して無茶な請求を日本に対して行うことはないだろう。

もっとも、8月の民主党綱領に謳われているように、氏は「地域の安全保障に、より大きな責任と公平な負担を払うよう同盟国に促す」方針であり、相対的に力を落とす米国の現状も相まって、日本に対して、自国の軍事力を強化せよとの要求が増えていくことはほぼ間違いない。

また、この一ヶ月をみても、中国牽制を目的に、日米に豪印も加わった4ヶ国外相会談が定例化され、4カ国軍事訓練が行われた。この流れもバイデン政権でも引き継がれることが予想される。

さて、日本である。

米国からの日本の軍事力強化の圧力がさらに高まっていくと考えられる中、現政権は、「日米同盟強化」そのものが外交方針であった安倍政権を引き継ぐとしている。

敵基地攻撃能力の保有が目指され、近く防衛計画の大綱が改定予定とされるが、これらは中国を主たるターゲットとしてなされている議論である。

もっとも、中国のすぐ隣に位置する日本の利害は、威勢良く米中対立を激化させても直ちには問題の生じない米国とは全く異なる。

「米国と中国の間で踏み絵を踏まされても困る(経団連中西会長)」のが日本の現状である。

この点、例えば、南沙諸島を抱え米中対立の主戦場ともいわれる東南アジアでは、現在、各国から「Don’t make us choose(選択させないでくれ)」との悲鳴が上がっている。

9月のASEAN外相会議は、米中対立が軍事的レベルにまで高まっていることについて議論が行われたと示唆し、「ASEANは地域の平和と安定を脅かす争いにとらわれたくはない」と自制を促すメッセージを発している。

また、シンガポールのリー・シェンロン首相も、「アジア諸国は、米国はアジア地域に死活的に重要な利害を有する『レジデントパワー』だと考えている。

だが、中国は目の前に位置する大国だ。アジア諸国は、米中のいずれか一つを選ぶという選択を迫られることを望んでいない。」と米誌への寄稿で米中を強烈に牽制した。

この、「米中いずれを選んでもマイナスが大きすぎる」「『選べ』という場面を作るな」という米中の狭間にある悩みは、日本にもそのまま当てはまらないだろうか。

人権侵害を繰り返し、対外積極策に出続ける中国への対応は大変困難な問題であるが、その解決策として日本が防衛力を強化し続けても、10数年、あるいは数十年の間に米国と日本の経済力や軍事力を合わせても中国に敵わない日が来るともいわれている。

その日が来てしまう前に、日本が今一番になすべきは、敵基地攻撃能力を導入して米中ブロック間の対立をさらに激しくすることではなく、日本の安全保障環境の改善のため、米中対立の自制を米国に求め、また、世界中のDon’t make us chooseと叫ぶ国々と連携して国際法の順守や緊張緩和に向けた米中への働きかけを国際社会全体でできるようイニシアティブをとることである。

(新外交イニシアティブ代表 猿田佐世)

※週刊朝日オンライン限定記事


かつて韓国の嘘を暴いたバイデン 「恐中病と不実」を思い出すか

2020-11-08 17:19:26 | 日記

かつて韓国の嘘を暴いたバイデン 「恐中病と不実」を思い出すか

配信

 

 

デイリー新潮
 

2013年12月6日、青瓦台で出迎えた朴槿恵大統領の手を握り締めるバイデン副大統領

 11月3日投票の米大統領選挙は開票の遅れから直ちには決着がつかない見通しだ。

D・トランプ(Donald Trump)大統領の再選を脅かすJ・バイデン(Joe Biden)氏は、意外にも韓国との深い因縁がある。韓国観察者の鈴置高史氏が解説する。

鈴置:バイデン氏は「本当のこと」を語ったため、韓国人から憎まれたことがあります。

2013年12月6日、オバマ(Barack Obama)政権の副大統領として訪韓し、朴槿恵パク・クネ)大統領と会談した際「米国の反対側(中国側)に賭けるな」と申し渡しました。

これが反発を呼んだのです。

ホワイトハウスに残る記録からバイデン発言を引用すると以下です。

「米国の反対側に賭けるのはいい賭けではなかった」と2度も繰り返したうえ、「米国は今後もずうっと韓国に賭ける」と言ったのです。

当時、朴槿恵政権は露骨な米中二股外交に乗り出していた。

そこでバイデン副大統領は「中国側に行っても良いことはないぞ」と警告したのです。

韓国外交部は記者に「通訳のミス」と説明、取りつくろうとしました。

しかし、ホワイトハウスが発表した原文を見れば、ちゃんとそう言っています。誤魔化しようがありませんでした。

バイデンはコメディアン

そこで韓国各紙は、この発言は米政府の本意ではないと強調するために「バイデンは失言で有名」などと人格攻撃に出ました。

中央日報の外交記者、裵明福(ペ・ミョンボク)論説委員は「賭けを要求する前に」(2013年12月10日、韓国語版)で「コメディアンのように、笑いを取るのに汲々とする男」と決め付けました。

――なぜ、韓国人は困惑したのでしょうか? 

鈴置:図星を指されたからです。

2013年当時、米国は日米韓の三か国安保協力体制を構築しようとした。

しかし、韓国は中国に睨まれるのを恐れて、逃げ回っていたのです。  

その際「歴史を反省しない安倍とは組めない」と日本のせいにしていた。

そこでバイデン副大統領が「賭け」発言を通じ「日本のせいにするな。

本当は中国が怖いのだろう」と、公開の場で「韓国の嘘」を暴いて見せたわけです。

「米国は韓国に賭ける」とも言ったのは「中国からイジメられたら守ってやる」との保証です。

――なぜ、本当のことを指摘されて怒ったのでしょうか? 

鈴置:韓国は屁理屈の国です。

他の国では相手にされない、事実に基づかない主張でも大声で言えば通ってしまう。

そんなお国柄ですから、外国人から「嘘だろ。言い訳するな」と指摘されると狼狽し、逆上するのです。

「安倍が悪い」と責任転嫁

――わざわざ「嘘だろ」と迫る必要がバイデン氏にはあったのでしょうか? 

鈴置:屁理屈をこね、逃げ回る韓国政府に対し、米政府はいら立っていました。

ことにバイデン訪韓の2か月前、米国の国防長官がソウルで「ガキの使い」扱いされたのです。

2013年9月30日、C・ヘーゲル(Chuck Hagel)国防長官が朴槿恵大統領を表敬訪問した際、その事件は起きました。

ヘーゲル長官が「三か国安保協力体制のためには歴史問題を含む現実問題が適切に管理される必要がある」と述べると、大統領は以下のように答えました。

左派系紙、キョンヒャンの「朴大統領『退行的な日本の指導部のために信頼を作れない』」(9月30日、韓国語)から発言を拾います。

・(歴史・領土の葛藤で)ますます退行的な発言をする日本指導部のために信頼を作れない。

・今も痛みを抱えている国民が、傷を受ける国民がいる。国民が共に解決する問題であって、首脳2人が座って解決できない問題だ。

・例えば、慰安婦のおばあさんの問題は今も進行中の歴史だ。この人たちは花のような青春をすべて失い、これまでも深い傷を負って生きてきた。それなのに日本は謝罪をするどころか侮辱している。

・そのおばあさんだけでなく国民も共に憤怒しており、このままではいけないと見る状況だ。

・そんな中で韓日の指導部が話し合ったとして、問題が解決するのか。日本が誠意ある態度を見せ、両国首脳も話し合って共に進まねばならぬのに、それは無視して誠意を見せもせず、傷口に塩を塗り込みながら対話をすればよいというのか。こういう困った状況だ。

「勝手に公開」に怒った米国

――話がすり替わっていますね。 鈴置:まさに「すり替え」です。

三か国安保協力体制を強化する、といっても日韓が軍事同盟を結ぶわけではない。

GSOMIA(軍事情報包括保護協定)の締結――軍事情報の交換程度の話です。  首脳会談を開かないと結べない協定ではありません。実際、日韓が2016年11月23日に結んだ際には、駐韓日本大使と韓国の国防相が署名しただけです。

というのに、朴槿恵大統領は「慰安婦で日本が誠意を見せない」の一点張りで逃げたのです。

そのうえ大統領の発言を米国の了解もないまま、公表した。

これが米国の怒りに油を注ぎました。

さすがに韓国でも問題視する声が上がりました。

キョンヒャンの「青瓦台の『朴槿恵プレーアップ』 外交的な欠礼」(10月1日、韓国語)が強く批判しました。

ポイントが以下です。

・青瓦台(韓国大統領府)は10月30日夜の会談の要旨を報道資料の形で公開し、朴大統領が日本に対し強硬な態度をとった発言だけを集中的に紹介した。

・問題は、このような内容をメディアに公開する前に、米国側と協議していないことだ。青瓦台関係者は事前協議したのかとの質問に「そのようなことはなく(内容が)とてもよいと考え公開した」と語った。

外交慣例上、どこまで公開するかは双方で定める。米国防総省の報道資料には「ヘーゲル長官が北朝鮮の脅威に対応するため、韓米日の協力を強固にすべきと強調した」とあるだけだ。

・韓日の葛藤によって三か国安保協力体制がきちんと進まない状況を米国は深刻に受け止めており、この葛藤が表面化したことを極度に憂慮している。

・朴大統領の強硬発言が青瓦台の発表により、米日のメディアに大々的に報じられたことに米国は相当な不快感を持ったという。

「中国へのゴマすり」が始動

――なぜ、青瓦台は公開したのでしょうか? 

鈴置:見出しなどから判断するに、キョンヒャンは「国民の人気取りのため」との前提で書いています。

しかし、「中国へのゴマすり」部分も大きかったと思います。  

三か国安保協力体制の強化こそはもっとも中国が嫌がる動きです。

朴槿恵政権は中国に対し「米国防長官にもけんもほろろに断りましたからね」と示したかったのは間違いありません。

――要は、ヘーゲル訪韓時に米国を怒らせていたのがポイントですね。

鈴置:そこで2か月後のバイデン訪韓の際、米国は「日本のせいで三か国安保協力体制を組めない」という「韓国の嘘」を暴いた。

「やりかえした感」もありました。韓国がやったように自分の側の発言を公開する手法を使って「本当は恐中病からだろ?」と指摘したのですから。

図星に逆上して居直り

――図星を指された韓国メディアはどう反論したのですか?

 鈴置:「米中二股のどこが悪いのか」と居直ったのです。

先に紹介した、中央日報の裵明福・論説委員は「賭けを要求する前に」で以下のように書きました。

韓国政府が言いたくても言えないことを代弁した感もあります。

・バイデン米副大統領の「賭け発言」は韓国外交史の1ページを飾る可能性が大きい。

・朴槿恵政権は均衡外交に出て、米中の間で危うい綱渡りをしている。米国は米国と日本の側につくことを望んでいる。中国は自分の側に引き寄せようと力を尽くす。しかし、韓国はどちら側にも全部を賭けるわけにはいかない。分けて賭けるしかないのだ。

・バイデン氏はアジア太平洋での再均衡への強力な意思を明らかにした。それなら静かに行動で見せてくれればよい。すぐにできることをしないで、できない選択を韓国に強要するのは賢明ではない。

裵明福・論説委員は「バイデン発言が韓国外交史の1ページを飾る」と評しました。が、「米中二股外交」を認めて居直った、この記事こそが画期的でした。それまで韓国人に米中二股を指摘すると、否定したうえ「韓米の離間を図る日本の陰謀だ」と怒りだしたものです。

日本よりも重要な同盟国に

――当時から、世の中を見誤っていたのですね、

韓国人は。 鈴置:李明博イ・ミョンバク)政権(2008年2月―2013年2月)の半ばあたりから韓国人は「米中二股をやっても米国から怒られない」と信じ込んでいました。

経済力の伸長とともに国際的な地位が急上昇したため、1999年にはG20(20か国・地域)に開設メンバーとして参加。

2010年には、日本よりも先に首脳会議を主催しました。

2009年9月、日本で民主党政権が発足し、米国との関係を決定的に悪化させたことも誤解を加速しました韓国人は

「米国にとって我が国がアジアでのもっとも重要な同盟国になった」と考えたのです。

バイデン発言に韓国人が怒ったのは、それが「我が国は日本よりも大事な同盟国」という幻想を打ち砕いたからでもあります。

もし、米国が韓国の方が大事にするのなら「慰安婦の言い訳」を聞いてくれたはずだからです。

2016年11月23日に締結された日韓GSOMIA。

退陣運動が燃え盛ったことが朴槿恵大統領の背中を押しました。ただそれまで、バイデン発言が韓国の言い逃れの道を絶っていたのも確かです。

離婚を誘発した調停委員

――業績に乏しい、と批判されるバイデン氏。「日韓がらみ」ではそれなりに仕事をしていたのですね。

鈴置:2015年12月25日の日韓慰安婦合意の「保証人」も務めました。米外交誌『Atlantic』のインタビュー「The Geopolitical Therapist」(2016年8月26日)記事で以下のように語っています。

「安倍に会ったら『朴との関係を助けて欲しい』と言われた」

「そこで朴に『こうするつもりはないか』と電話した」

「自分は結婚生活を元に戻す調停委員の役割を果たした」――というわけです。

もっとも慰安婦合意は韓国によっていとも簡単に破られました。

これもあって日韓関係は極度に悪化し、日本人は「韓国は約束をかわせない国」と確信しました。バイデン氏は「結婚生活を基に戻す調停委員」ではなく、「離婚を誘発した調停委員」になったわけです。

 


なぜ日本は自発的に「貧困化」へと向かうのか? 内田樹が語る“日本再建のビジョン”

2020-11-08 14:57:58 | 日記

なぜ日本は自発的に「貧困化」へと向かうのか? 内田樹が語る“日本再建のビジョン”

内田 樹
 

新型コロナウイルスの危機はグローバル資本主義のあり方に急激なブレーキをかけ、疑問符を投げかけた

今後、アンチグローバリズムの流れで地域主義が加速すると分析する思想家の内田樹が、新著『 コモンの再生 』にこめた日本再建のビジョンを語る。(全2回目の1回目。 後編を読む )

◆◆◆

――ポストコロナ時代における1つの大きな見立てとして、今後、「地域主義」が加速していくというのはどういうことでしょうか。

内田 パンデミックによってヒトとモノの流れが停滞して、グローバル資本主義が事実上、機能不全になりました。

クロスボーダーに人と商品と資本と情報が超高速で移動することを前提に制度設計されてるのがグローバル資本主義です。

内田樹氏© 文春オンライン 内田樹氏

電磁パルスはこれからも国境を越えて移動するでしょうけれど、生身の人間は身動きがならない。

そして、生身の人間が移動しないとどうにもならないことが世の中には思いがけなくたくさんあった。

これから先も間欠的に新型ウイルスが発生して、その都度パンデミックが起きるとすると、早晩グローバル資本主義というシステムは破綻するでしょう。

今回わかったことの1つは、「本当に必要なもの」が金で買えないことがあるということです。

ビジネスマンたちは「必要なものは、必要な時に、必要なだけ市場で調達すればいい」という「在庫ゼロ」を理想とするジャスト・イン・タイム生産システムにこれまでなじんできました。

とくにアメリカではそれが徹底していた。

ですから、感染拡大の初期には、防護服やマスクまで戦略的備蓄がほとんどなかった。

その後「主要な医療器具と医薬品に関しては、輸入に依存せず、国産にする」と方針を切り替えました。

事情はヨーロッパも同じです。

イタリアは医療崩壊したときにドイツとフランスに支援を求めましたが、両国とも医療品の輸出を禁止した。

危機的事態になると友邦さえ門戸を閉ざすということをそのとき世界の人々は学んだ。

ですから、医療品やエネルギーや食料といった社会にとって必要不可欠なものは、たとえ国際価格より割高でも自国内で調達できる仕組みにどこの国も切り替え始めてゆくと思います。

中産階級が没落し、市民の政治参加意欲が失われた日本

――日本でも深刻なマスク不足がおきて、国内での増産体制を強化しました。

内田 グローバル資本主義では、メーカーは税金が安く、人件費が安く、環境保護規制がゆるいところに生産拠点をアウトソースしてきました。でも、そういう手荒なやり方自体がこれからはもう成り立たないでしょう。

生産拠点を海外に移せば、国内の雇用が失われ、賃金が下がり、国内市場は縮小します。

でも、企業は「国内の購買力が落ちたら、海外に市場を求めればいい」と考えて、国内市場を底上げする努力を怠ってきた。

その結果、ブラック企業が増え、雇用条件は劣化し、中産階級が痩せ細り、消費は冷え込み、階層の二極化がさらに進んだ。

でも、中間層の空洞化はもともとはビジネスサイドの要請に応じたらそうなってしまったということですけれど、実際にそうなってみたら、政治的に望外の結果が得られた。

それは政権の安定です。国民が貧しくなったら、統治コストが安く上がるようになった。

普通に考えると、中産階級が没落してプロレタリアート化すると、この「鉄鎖の他に失うべきものを持たない」人々は収奪されたものを奪還するために立ち上がって、革命を起こすはずなのですが、そうはならなかった。

貧困化し、権利を奪われた市民たちは、ただ無力化し、政治への期待を失っただけでした。考えてみれば、たしかにそうなって当然だったのです。

近代史を振り返ると、中産階級が勃興すると、市民の政治意識が高まり、それが市民革命をもたらしました。

ということは、逆から考えると、政治意識の高い中産階級が没落して、貧困化し、無力化すれば、むしろ市民の政治参加意欲は失われる。

そんな歴史的実験をした先進国はこれまでありませんでしたが、日本ではそれが起きてしまった。

実際に中産階級が痩せ細って、プロレタリア化したら、彼らは無力化して、政治参加意識を失い、むしろ消極的にではあれ政権を支持するようになった。

「長いものには巻かれろ」「寄らば大樹の陰」という手垢のついた事大主義的な言明を上から下まで、知識人から労働者までが唱和するようになった。

「国民が貧乏になると、国民は統治し易くなる」という意外な命題が成立したのでした。

振り返れば、1960~70年代の高度成長期、国民が「1億総中流」化した時代は「荒れた時代」でもありました。

学生運動も市民運動も労働運動もその時期が一番激しかった。

革新自治体が日本中に広がったのもその頃です。

経済がぐいぐい成長し、若い人たちが元気に走り回り、あらゆる分野でイノベーションが起き、国としての発信力が高まった時には、実は中央政府によるコントロールが難しい時期だった。

国運の向上期には統治コストが嵩むということです。

だから、その逆に、経済活動が非活性化し、貧困化が進むと、国民の権利意識は萎縮し、政治運動は沈静化する

統治する側から見たら、ありがたい話なんです。

統治コストを最少化しようと思ったら、国民を無権利状態に落とせばいい。

福祉制度を空洞化し、社会的弱者は「自己責任で弱者になったのだから、公的支援を期待すべきではない」と突き放す。

国民たちは貧しくなればなるほど、口を噤んで、黙って下を向くようになる。

なにしろ「現状を改革したければ、現状を改革できるくらい偉くなってから言え」という強者の理屈に社会的弱者たちが進んで拍手喝采するような世の中なんですから。

国民を無権利な状態に叩き落せば、監視する必要がない

――貧困化で統治コストが最少になるというのは、ドキリとする指摘です。

内田 安倍政権の7年8ヶ月の成功体験だと思います。

安倍政権は反対する国民については、これを「敵」と認定して、その意向をすべて無視しました。

逆に、自分の身内や味方には公権力を使って便宜を図り、公金を使って厚遇してきた。

ふつうはそんなことすれば国民が怒り出すはずですけれども、そうならなかった。

あまりに当然のようにはげしい身びいきをしたせいで、国民はすっかり無力感に蝕まれてしまった。

権力のある人は何をしても処罰されないのだ、権力者は法律より上位にあるのだと国民は信じ始めた。

そのような圧倒的権力者に逆らっても仕方がない、大人しく服従しようということになった。

その時の成功体験を踏まえて、菅政権もそれと同じことをしようとした。

反対者を潰し、社会福祉制度は骨抜きにして、中産階級の無権利化をさらに進めるつもりでいると思います。

お隣の中国は、監視カメラによる顔認証システムやSNSでの発言チェックやカード利用歴のビッグデータを利用した全国民監視システムを作り上げました。

国民監視のために膨大な国家予算を投じている。

治安対策費が国防予算を超えたと聞いています。それだけの統治コストをかけるのは、国民が中産階級化してきたからです。豊かになると市民の権利意識が高まり、政治的な動きが始まる。そのことを中国政府は恐れているのです。

――2億台を超える監視カメラによる顔認証システム「天網」が中国全土に導入されていますね。

内田 ところが日本ではそんなことのために予算を使う必要がない。中国とは逆に、国民が貧しくなるにつれて、権利意識が希薄になり、政治参加意欲が減殺されているからです。

うっかり反政府的なことを口走ると、すぐにお節介な奴らが「こいつ反日ですよ」とご注進に及んでくれて、公的な場から叩き出し、公的支援を止めるように陳情してくれる。

だから、政府には国民監視の実務をする必要がない。官邸で寝転んでテレビを見て、「問題発言」をする人間をブラックリストに書き足すくらいの仕事で済む。マイナンバーとかほんとは要らなかったんです。別に大金をかけて国民監視システムを作るより、国民を貧乏で無権利な状態に叩き落せば、監視する必要がないほど弱体化するんですから。今や統治コストの安さにおいて、日本は東アジアでは群を抜いていると思います。

自民党の西田昌司議員が「そもそも国民に主権があることがおかしい」と発言する画像がネットでは繰り返し流されていましたけれど、あれはまさしく自民党の本音だと思います。

うっかり国民の意見を聞くと、国民の側に権利意識が芽生える。

次々と要求してくる。1度でもそれを聞いてしまうと、病みつきになって、どんどん要求が増えてくる。

だから、初めから「お前たちの要求は何も聞かない。

お上が施してくれるものを口を開けて待ってろ」と、ピシッと言って聞かせた方がいい。そう考えている。

社会的弱者を攻撃する「貧乏マッチョ」な人たち

統治コストを最少化したければ、国民に権利を与えないのが一番いい。

口には出しませんが、今の自民党の政治家はそのことがわかっている。

とはいえ、国民がみんな死んだような顔になって、社会がどんより暗鬱なものになり過ぎるとそれはそれで困る。

だから、ときどきは五輪だ、万博だ、カジノだ、リニアだと中味のない景気のいい話で気分を盛り上げる。

そんなのは所詮「打ち上げ花火」で一過性の効果しかないことは仕掛ける側だってわかっています。

本気でもう1度経済をV字回復させようと思ったら、戦後日本の成功体験は「1億総中流」しかない。

でも、それだけはやりたくない。

だから、国運が衰微することと、国民が無力化して統治コストが安く済むことのどちらがいいか天秤にかけて、安倍政権は国運の衰微を選んだのです。

――政権批判はかっこ悪い、デモに参加するなんて「ダサい」みたいな空気もここ数年で急に強まった印象があります。

内田 そうです。デモをしたりするのは社会的弱者であることをカミングアウトすることであり、それは恥ずかしいことだという考え方がもう深く広まっています。

弱者に転落したのは自己責任だから、公的支援を期待してはならないと言い出したのは英国のサッチャー首相です。

「ゆりかごから墓場まで」の高福祉社会から「小さな政府」への切り替えは70年代に始まりましたが、その時に「社会など存在しない」とサッチャーは公言して、労働者階級を攻撃しました。

それに当の労働者たちが拍手喝采した。

「福祉制度のフリーライダーは国民の敵だ」というアイディアを最も熱烈に支持したのは労働者階級でした。

オレは貧乏になっても国には頼らない、自己責任で貧苦に耐えると宣言する「貧乏マッチョ」な人たちが福祉制度の受益者である社会的弱者を攻撃する先頭に立った。

そうやって労働者階級は分断され、市民のアトム化が進行して、市民たちの権利意識は希薄化し、統治コストは削減されました

この新自由主義の流れはそれからずっと続いています。アメリカでも、日本でも、それは変わりません。

トランプの最も熱烈な支持者はまさにこの「貧乏マッチョ層」ですから。

――たしかにみなが互いに協力して守り合うという感覚が現代社会では極めて希薄です。

内田 相互支援のための互助的なネットワークの解体を進めたのは、マーケットと政治です。

マーケットの側の理屈では、相互支援ネットワークが存在して、身内の間では市場を介さずに商品やサービスが活発に行き来すると、資本主義的には困ったことになります。

ものが売れないから。

だから、まず血縁・地縁共同体を解体した。

市民を孤立させれば、生きるために必要なものは市場で、貨幣を投じて調達しなければならない。資本主義の発展のためには相互支援ネットワークは邪魔なんです。

政治の側の理屈で言うと、市民を孤立させ、無力化させると統治コストは削減される。

この点でマーケットと政治の利害が一致した。国民を分断して、誰からも贈与されず、誰からも支援もされない状態に置いた方が消費活動は活性化するし、統治はし易くなる。

いいことずくめじゃないかという話になった。

そういう歴史的文脈の中で、再び相互支援の公共性を再構築することが喫緊の課題だと僕は考えています。それが「コモンの再生」というこの本のテーマです。

内田樹(うちだ・たつる)

1950年東京生まれ。思想家、武道家、神戸女学院大学名誉教授、凱風館館長。東京大学文学部仏文科卒業。東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程中退。専門はフランス現代思想、武道論、教育論など。『私家版・ユダヤ文化論』で小林秀雄賞、『日本辺境論』で新書大賞を受賞。他の著書に、『ためらいの倫理学』『レヴィナスと愛の現象学』『街場の天皇論』『サル化する世界』『日本習合論』、編著に『人口減少社会の未来学』などがある。

「僕が死んだあと、私有地も道場も“面倒な”コモンにする」 内田樹が門徒に苦労させるワケ へ続く

(内田 樹/ライフスタイル出版)


手前勝手に改竄した歴史を日本に押し付ける国・韓国

2020-11-08 13:03:59 | 日記

手前勝手に改竄した歴史を日本に押し付ける国・韓国

 
武藤 正敏
 
「日本は歴史問題で謙虚になるべき」などとの発言を重ねて来た韓国の文在寅大統領(写真:YONHAP NEWS/アフロ)© JBpress 提供 「日本は歴史問題で謙虚になるべき」などとの発言を重ねて来た韓国の文在寅大統領(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

 文在寅大統領は、昨年の年頭記者会見でNHKの高野洋ソウル支局長の質問に対して、「日本は歴史問題で謙虚になるべき」と語った。

「謙虚」とはどういう意味か。私の解釈では、「歴史認識については韓国に正義がある。韓国は正しい、日本は誤っている。したがって日本は韓国の主張を受け入れるべきだ」ということであろう。

 また、昨年の大統領就任2周年に際し、進歩系元老を青瓦台に招いての政策評価で、ある元老が「日韓関係を改善しなければならないのでは」と述べたのに対し、「日本は歴史問題を政治利用している」と述べた由である。その元老はさすがにあきれ返り、後に周囲に「政治利用しているのはどちらか」と述べたようである。

真実を求めていない韓国の歴史研究

 韓国で歴史とは何か。日韓歴史共同研究に参加していた日本人の学者によれば、日本側から歴史の事実を指摘し、韓国側の考えを問うたところ、「あなたは韓国を愛していないのか」という反応があったという。その学者によれば、韓国における歴史研究は、歴史の事実を積み上げて、真実を追求するのではなく、そもそも期待する歴史認識が前提にあり、それを何とか説明するために、断片的な歴史の事実を探し求めることであるという。

 日韓でいくら歴史共同研究を行っても成果が乏しいのはこうした背景がある。ヨーロッパで歴史共同研究が成果を上げた背景には、国民感情をいったん排除し、客観的に歴史を見ようとの了解があったからであると聞く。歴史共同研究に出てくる韓国の学者は、韓国の国民感情を背負って出てくる。これでは歴史認識で歩み寄れるはずはない。

文在寅氏の歴史問題への対応はご都合主義

 最近の中国との朝鮮戦争に関する発言への低姿勢、5・18光州事件に対する真相究明問題、韓国の発展の基礎を築いた「漢江の奇跡」という事実の抹殺を見ると、文在寅氏は自分たちの都合のいいように歴史を改竄し、それを北朝鮮・中国への接近、保守派弾圧に政治利用しようとしている姿勢が見て取れる。

 文在寅政権の歴史への取り組みがいかに不健全なものか具体的事例を通じて実証してみたい。

中国は朝鮮戦争への介入を「帝国主義侵略に抵抗した正義の戦争」と主張

 米中対立が激化する中、中国は朝鮮戦争で米国に対抗して北朝鮮を支援したという「抗米援朝」を唱えている。朝鮮戦争は言うまでもなく、北朝鮮の南進によって始まったものであるが、戦争の原因には言及することなく、「米国に抵抗する正義の戦い」と位置付けているのである。

 10月23日、中国政府は北京人民大会堂で「中国人民支援軍の抗米援朝出国作戦70周年記念大会」を開催、習近平国家主席が出席して中国人民支援軍が参戦した朝鮮戦争を「帝国主義侵略に抵抗した正義の戦争」と強調した。

 この戦争で、韓国は国連軍と合わせ約18万人の戦死者と、約99万人の民間人犠牲者を出し、国土は焼け野原となった。これに対し中国は「侵略者を打ちのめした」などと言っている。しかし、韓国政府は習近平政権の歴史歪曲に対する抗議はおろか、まともな反論もせず、国民から屈従外交だとして非難を浴びている。

 戦争の初期、韓国軍は北朝鮮に比べ圧倒的に劣勢であり、3日でソウルは陥落し、釜山近辺まで追い込まれたが、マッカーサー元帥率いる国連軍の参戦によって形勢は逆転、国連軍と韓国軍は北朝鮮と中国の国境の鴨緑江まで進撃した。しかし、そこで中国軍が参戦し、ソウルが再び陥落するなど一進一退を続け、38度線付近で休戦協定が成立した。

 現在の文在寅政権の朝鮮戦争に対する認識は、北朝鮮にすり寄る姿勢を続けているため、真実を曲げるものとなっている。韓国の歴史教科書では「韓国戦争(朝鮮戦争)は南進」という表現がなくなっている。多数の中・高校の歴史教科書では「戦争直前まで38度線を境に頻繁な衝突があった」などと記述し、朝鮮戦争の責任が南北双方にあり、内戦だという「両非論」が目立っている。これは文政権幹部の見解でもある。

 ちなみに、中国共産党青年団は「当時、北朝鮮と韓国は互いに朝鮮半島に対する主権があると主張した。これは内戦だ」と言っている。韓国政府は中国側の主張を取り入れるのか。

中国や北朝鮮の誤った歴史認識には反論もしないのに

 このように卑屈な韓国政府であるから、韓国を代表するK-POPグループ「BTS」に対する中国のネットユーザーの批判にも沈黙している。BTSは韓米親善団体が主催した会合での授賞式で「今年は韓国戦争70周年として両国が共に経験した苦難の歴史とたくさんの犠牲を記憶しなければならない」と述べた。これに対し、中国のネットユーザーは、「抗米戦争に参戦して米国の侵略を阻んでくれた中国人を侮辱した」とし、「BTSは誤った歴史認識を習った」と非難した。

 こうした中国からの批判に対して米国務省は直ちにBTS援護に乗り出し、西欧のマスコミも中国に対して批判的な記事を掲載した。しかし、韓国の外交部はBTS擁護どころか、中国の「抗米援朝」主張に対し沈黙したままである。

 そればかりか韓国で活躍する中国出身のアイドル歌手EXOのレイなどがSNSに「抗米援朝70周年記念」「英雄に敬意を表する」などの文章をアップし物議をかもし、韓国マスコミから批判されている。ただ、韓国政府は知らぬふりだ。

 韓国は、日本に対しては常に自分たちが正しい、日本はそれを受け入れろという。しかし、中国や北朝鮮に対しては明らかに中朝の歴史認識が誤っていても反論しない。これでは歴史認識の正当性を主張する資格はない。

 歴史の真実を改竄するのは韓国政府ばかりでなく、元慰安婦を支援する団体、韓国挺身隊問題対策協議会(=挺対協、現在の正義連)が典型的である。挺対協は元慰安婦から聞き取った、自分たちに都合のいい内容を慰安婦問題のすべてであるかのように作り上げ、それが慰安婦の歴史だとして、それ以外の事実を認めない。韓国の大学教授が深く掘り下げ研究した成果をまとめた本に対し、挺対協の見解と異なるとして出版差し止めを求めて裁判に提訴した。

 慰安婦の問題について、日本は強制的に連れて行ったものではないと否定している。すべてがそうでなかったといえるかどうかは研究者に一任するとして、挺対協が作り上げた、強制的に連れていかれた慰安婦という歴史解釈をそのまま受け入れろと言われてもそれはできない。

 こうしてみると韓国の歴史認識は、そもそも自分たちに“都合のいい歴史”ありきで、それを立証するためのものであることが理解できよう。この傾向は文在寅政権で顕著であるが、韓国に一般的に言えることだとすれば、日本は客観的歴史を毅然と主張し、妥協はしないとの姿勢を取り続ける以外ないのではないか。

歴史改竄を強権力で進める文政権

 最近、「共に民主党」は「5・18歴史歪曲処罰法」「5・18真相究明特別法」を党議で決定し、国会提出を進めている。総選挙で圧勝したことにより、野党との対決法案でも国会上程が可能となった。好き勝手に国会運営をしているのが文政権の与党である。

 この法律は、朴正煕(パク・チョンヒ)大統領暗殺後、学生や労働者による民主化要求を当時の全斗煥(チョン・ドゥファン)氏率いる軍部が戒厳令を出したのを受け、光州で学生と軍部が衝突したが、軍部により鎮圧された事件である。この事件に関し、北朝鮮親派が意図的に起こした事件であるとの主張があり、文政権はこれを厳しく取り締まろうとしているのである。

 この法律に違反した者には7年以下の懲役または7000万ウォン(約640万円)以下の罰金が科せられるようになる。

 この法律によって文政権の5・18事件の歴史認識に反する発言や行動をする自由は奪われることになる。国民は文政権の歴史認識に従わざるを得ない。それで正しい歴史の解釈が生まれるであろうか。

 歴史の解釈は、そもそも研究者が自由な立場から歴史事実を研究し、積み上げ、分析し、研究者間の活発な議論を経て生まれるのが民主主義国の歴史観ではないのだろうか。文政権は、こうした研究なしに歴史観を作り上げ、研究者にはその解釈を正当化する理論を奨励し、それを国民に強権力で押し付ける。これは歴史的見れば全体主義者がやってきたことではないだろうか。

政権発足後すぐ始まった文在寅大統領の「歴史改竄」と「歴史の政治利用」

 文在寅政府によって最初に歴史の改竄が行われたのは、朴正煕政権が韓国発展の礎を築いた「漢江の奇跡」という経済成長戦略、実績を教科書から抹殺したことだろう。長期左派政権の継続を目指す文在寅氏としては保守派であり、軍出身の大統領が成し遂げた輝かしい成果は歴史から消し去ることが保守派の力を蘇らせないため必要と考えたのであろう。

「漢江の奇跡」は明治維新後の日本の発展をモデルとしたものであり、当時日本は真摯に韓国経済のテークオフのため協力した。浦項製鉄の設立にあたって、当時の浦項の会長だった朴泰俊(パク・テジュン)氏は当初世銀などの国際機関に協力を求めたが断られた。そこで最後に新日鉄の稲山嘉寛会長に依頼したところ、稲山会長は「日本は韓国を併合した歴史があるのでできるだけの協力はすべき」として全力を傾けて協力したそうである。

 文政権の「漢江の奇跡」抹殺によって、日本の韓国に対する協力も一緒に忘れ去られてしまった。

私は何も韓国に対し、「日本の協力に感謝しろ」などと改めて言おうとしているのではない。しかし、韓国の一般の国民が、戦後の日本の韓国に対する協力を理解したならば、日本に対しいつまでも「歴史を反省しろ、謝罪しろ」とは言わなくなるだろうと常々考えていた。韓国政府が日本との協力を望むなら、日本の協力をもっと周知すべきと考えた。そして、そのことを大使としての勤務を終えて離任するときに韓国の要人にも言って歩いた。

 私は常に韓国の歴史観がこのように形成されていることを残念に思っていた。韓国の人々が日韓の歴史をより客観的に考えてくれるなら、日韓関係はよりスムーズなものとなるだろう。

 そしてそれは韓国における国論の分裂を抑えることにもなるだろう。その意味で文在寅氏の歴史観に懸念を覚えていることを指摘したい。