バイデン側が外国接触禁止令中なのに…韓国外交部長官の訪米「ナンセンス外交」(1)
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2020.11.11 08:02
米国大統領選以降、ワシントンでは「勝者対敗者」ではなく「勝者対不服者」の間の過去初めての対決が続いている。
韓国の康京和(カン・ギョンファ)外交部長官の訪米はまさに「その渦中に」行われた。トランプ側・バイデン側双方と接触し、韓米同盟の強化を試みるという野心に充ちた目標だ。
だが、外交界では康長官の訪米計画発表以降、「なぜ?」「それも今?」という質問が絶えない。
退くドナルド・トランプ政府との業務協議は実益がなく、ジョー・バイデン当選者キャンプや業務引継委員会は外国政府の要人とは接触していないためだ。
ところが与党「共に民主党」韓半島(朝鮮半島)タスクフォース(TF)所属の宋永吉(ソン・ヨンギル)・金漢正(キム・ハンジョン)・金炳基(キム・ビョンギ)・尹建永(ユン・ゴンヨン)議員も16~20日に米ワシントンを訪問してバイデン側の人々との接触を調整すると明らかにした。
朴振(パク・ジン)議員が率いる野党「国民の力」外交安保特別委員会も訪米を検討中だ。政府だけでなく政界も先を争って「バイデン詣で」だ。
もちろんバイデン側とは可能なすべてのルートを使って人脈を構築するのは間違ったことではない。
だが、そうであるなら大統領選レースが本格化する前に、水面下で行うべきだった。
現在、バイデン業務引継委員会は米国駐在外交使節が電子メールを送っても一切答えない「既読スルー」モードを稼働中という言葉までワシントンからは出てくる。
いわゆる「マイケル・フリン効果」のためだ。元大統領補佐官だったフリン氏は、トランプ業務引継委員会時期にロシア大使と会ってロシア制裁を議論しながらも、連邦捜査局(FBI)調査でそのような事実はないと虚偽の答弁をして偽証容疑で起訴された。
負けを認めようとしないトランプ側も心中が穏やかなはずがない。
マイク・ポンペオ長官は康長官と9日、業務昼食を取っただけだ。外交部は両長官が平和プロセス進展のために努力していくことにしたと明らかにしたが、具体的な結果を期待するのは難しい。
韓国国家戦略研究院の申範チョル(シン・ボムチョル)外交安保センター長は「承服しないトランプと共和党の立場では、バイデン側と接触しに行く韓国の行動が軽々しく映る可能性もある。
バイデン側は韓国がこれまでの縁を基に面談をねだっているように見えて負担を感じるか、面談禁止原則を破って韓国と会う人々の立場がかえって弱まる場合もある」と話した。外交は信頼がカギなのに、双方から信頼を失う場合もあるということだ。
それに加えて、韓国の外交部長官が直接動いたことがかえって負担をさらに重くしかねない。
ある前職外交官は「駐米大使館の政務公使がすればいいことに長官が出るため、レベルを合わせなければならない問題のために互いに負担になりえる」と説明した。
康長官は10日、バイデン陣営に属した官民の要人に会ったというが、ちゃんとしたチャネル構築の意味があるかどうかは今後をみなければならない。
事実、指針は文在寅(ムン・ジェイン)大統領が9日に出したも同然だ。
文大統領は首席補佐官会議で「バイデン当選者」と呼び、「韓半島(朝鮮半島)平和プロセスの進展にいかなる空白も作らないようにする」と述べた。
バイデン側に文政府の北朝鮮政策を伝えて協力を要請することが康長官の任務という点を確認したといえる。
だが、先走ったとしてもあまりにも先走りすぎている。康長官は「(バイデン政府がオバマ政府の)戦略的忍耐に戻るわけではない」と述べた(8日ワシントン)。
バイデン側が外国接触禁止令中なのに…韓国外交部長官の訪米「ナンセンス外交」(2)
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2020.11.11 08:05
◆バイデンキャンプは外国接触禁止令…康長官はなぜ、いま訪米したのか
この外に「戦略的忍耐ではなく、クリントン政府の積極的関与政策に進む可能性が高い」〔9日宋永吉(ソン・ヨンギル)国会外交統一委員長〕、
「戦略的忍耐は民主党内部でも失敗した戦略なので自ら持ち出すはずがない」〔9日金峻亨(キム・ジュンヒョン)国立外交院長)など、似たような発言が政府の内外から出ている。
言葉自体に誤りがある。バイデン側はまだ北朝鮮政策はもちろん、韓半島(朝鮮半島)ラインの人事に手も付けていないためだ。
業務引継委員会は新型コロナウイルス(新型肺炎)対応、経済再建、人種差別解決など国内問題を優先課題に決めた。
ところが第3国である韓国の責任ある人々が先を争ってバイデン政府が戦略的忍耐に回帰するだのしないだのと「予言」すること自体がナンセンスだ。また、オバマ政府は「戦略的忍耐」を北朝鮮政策の基調だと認めていなかっただけではなく、この表現を非常に不快に受け止めていることは外交界の常識だ。
元外交部韓半島(朝鮮半島)平和交渉本部長の金ホン均(キム・ホンギュン)氏は「バイデン政府の北朝鮮政策に対して、われわれの立場を性急に明らかにするのは役に立たないばかりか、かえってバイデン側に『韓国政府が目的意識を持ってこのような認識をまき散らしているのではないか』と不必要な疑問を抱かせかねない。いま重要なのは韓国政府の北朝鮮政策説得ではない」と懸念をにじませた。
世宗(セジョン)研究所のウ・ジョンヨプ米国研究センター長は「バイデン側が集中しようとしているのは同盟復元、すなわち韓日米安保協力強化なのに、政府が北朝鮮政策だけに焦点を合わせるなら、仮にうまく接触できたとしても議論の層位が合わない場合もある」と話した。
そのうえ韓国政府は
「今までトランプ政府との間で成し遂げた大切な(平和プロセス)成果が次期政府にうまく引き継がれるようにする」(9日文大統領)、
「(トランプ政府の)3年間の成果を土台にしなければならない」(9日康長官)などの立場を公開的に表明している。バイデン氏はトランプ氏の北朝鮮接近法が米国をさらに危険にさらしたという立場なのに、韓国はこれを継承するよう求めているように聞こえかねない。
元外交部韓半島平和交渉本部長の黄浚局(ファン・ジュングク)氏は「トランプ氏の取引的同盟概念とは違い、バイデン氏は民主主義、人権守護という共通の価値が同盟の基盤だとみている。人権問題など北朝鮮の全体主義体制に事実上沈黙してきた韓国政府に対して疑問を持つ可能性がある点を念頭に置かなければならない」と話した。
文大統領が「韓米間の懸案もトランプ政府任期中にするべきことは先送りしない」と述べたことも誤解の素地が充分にある。
どんな懸案であっても次期政府に影響を及ぼす同盟の決定になるはずだが、これを退くトランプ政府と決着させるという意味に聞こえかねないためだ。
梨花(イファ)女子大国際学部の朴仁フィ(パク・インフィ)教授は「バイデン時代には同盟間で浮上するイシュー、沈むイシューがトランプ氏の時とは変わるだろう。
米中葛藤だけとっても異なる様相として繰り広げられることになるが、内部的にこれに対する答えを得ることが、全く準備ができていない当選者側と接触することよりも優先」と話した。
バイデン外交安保ラインの核心であるトニー・ブリンケン元国務副長官は2018年6月にニューヨーク・タイムズ(NYT)の寄稿で北朝鮮観をこう記している。
「非核化の約束は北朝鮮の現在の核能力を小さくしない。北朝鮮は過去にも非核化の約束を数えきれないほど破った」。
韓国政府が今しなければならないことは、このようなバラバラの端緒を総合してバイデン政府の北朝鮮政策が進む方向を研究することだ。
また、韓国政府の政策に反映できる部分は何かを分析することだ。会わないと言っている側に、「とりあえず会おう」と速度戦で強行する場合ではない。一歩先んじれば先覚者になるかもしれないが、十歩先んじれば道に迷って孤独な人になるかもしれない。
掲載者の感想 文政権の反日政策とトランプの独善的・非協調的外交・日本や欧州の各国に共通の悩みであった。文政権は日本を無視することは今後できない。