「日本に手を差し伸べ、首脳会談で決着を」という寝言
中央日報「韓国大統領府が日本に手を差し伸べている」
相変わらず、韓国メディアからは寝言が垂れ流されているようです。
菅氏は安倍氏とは違う? 日本に手を差し伸べる韓国大統領府
輸出規制をめぐって韓日葛藤が深まっていた昨年7月、チョ・グク当時青瓦台(チョンワデ、大統領府)民情首席は<<…続きを読む>>
―――2020.11.25 07:35付 中央日報日本語版より
冒頭から記述が間違っているのはご愛嬌でしょうか。これまで日本は韓国に対し、輸出規制を適用した事実はいっさいないからです(これから経済制裁の一環として発動することはあるかもしれませんが…)。
ただ、本記事の「ツッコミどころ」は、そこではありません。次の一文です。
「最近、青瓦台は日本に手を差し伸べている」。
思わず「え!?」と思った人は多いでしょう。通常、「手を差し伸べる」という表現は、困っている人を助けるときに使うものだからです(「青瓦台」とは韓国大統領府のことです)。
どうも中央日報は、文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領が14日の「ASEAN+3」のテレビ首脳会談で、菅義偉総理を名指しして「うれしい」と親近感を示したことや、姜昌一(きょう・しょういち)元国会議員を駐日大使に内定したことなどを、「日本に手を差し伸べている」と述べているようなのです。
中央日報は昨年の「輸出『規制』」(?)発動時点と比べ、今年の韓国大統領府の日本に対する温度差が大きいとしたうえで、その背景に次の3点を挙げています。
- バイデン政権の発足…「ジョー・バイデン米国大統領当選者」(※原文ママ)が今後、日韓関係の回復に直接乗り出す可能性があること
- 北朝鮮問題のテコ…日韓関係の回復を北朝鮮問題進展のためのてことして活用する
- 安倍氏ではない菅氏…文在寅政権に対する不信感が強かった安倍晋三総理と異なり、菅総理に対しては新たに信頼関係を構築しようとしている
…。
なかなか、すごい認識ですね。
不法行為を仕掛けて来たのは韓国の側
冷静に考えていけばわかりますが、現在、日韓関係を破壊しようとしているのは、まぎれもなく韓国の側です。くどいようですが、李明博(り・めいはく)政権時代から韓国が日本に対して仕掛けてきた反友好的な行為のほんの一例を振り返っておきましょう。
李明博・朴槿恵・文在寅の各政権下で発生した事件のほんの一例
- ①ソウルの日本大使館前に慰安婦像設置(2011年12月)
- ②李明博大統領の竹島上陸・天皇陛下侮辱発言・野田首相の親書返送(2012年8月)
- ③安倍晋三総理大臣による米上下両院合同演説の妨害(2015年4月)
- ④明治期の産業革命関連施設の世界遺産登録妨害(2015年7月)
- ⑤釜山の日本総領事館前に慰安婦像設置(2016年12月)
- ⑥旭日旗騒動(2018年9月頃~)
- ⑦自称元徴用工判決問題(2018年10月30日、11月29日)
- ⑧レーダー照射事件(2018年12月20日)
- ⑨国会議長による天皇陛下侮辱事件(2019年2月頃)
- ⑩日本による韓国向けの輸出管理適正化措置(2019年7月1日発表)
- ⑪慰安婦財団解散問題(2019年7月までに発生)
- ⑫日韓請求権協定の完全な無視(2019年7月19日に完成)
- ⑬日韓GSOMIA破棄騒動(2019年8月22日~11月22日)
- ⑭対日WTO提訴騒動(2019年9月11日~11月22日、6月2日~)
- ⑮日本人に対するビザ免除措置の停止(2020年3月9日以降)
こうやって改めて眺めてみると、じつに壮観です。しかも、①や②については、安倍総理の時代ではなく、野田佳彦元首相の時代に発生していますし、①、⑤、⑦、⑧、⑪、⑫、⑭などについてはいまだに問題が解決されていません。
日韓関係が破綻の危機に瀕しているのは、それこそ、韓国が日本に対し、こうした不法行為の数々を仕掛けて来たことが原因です。「破綻の危機に瀕している日韓関係」に「日本が手を差し伸べる」のならばまだわかりますが、加害者の側が「手を差し伸べる」とは、なかなか斬新な発想でしょう。
ちなみに国民大学の李元徳(り・げんとく)教授は、菅総理にとっては来年開催の東京五輪成功が「最も重要で、韓国や北朝鮮との関係回復も不可欠」などとしつつ、安倍総理との差別化のために「韓日間で和解ジェスチャーが行き来している」と述べたそうです。
この程度の認識で大学教授が務まるというのも興味深い点ですね。
首脳会談すれば日韓問題は解決するんですか?
思うに、韓国側では現在、「菅義偉総理と文在寅大統領の間で首脳会談さえ実施できれば、韓日関係の現状を打開することが可能だ」、といった認識が広まっているフシがあるのですが、これは大統領府だけではないようです。
同じく中央日報には今朝、こんな記事も掲載されていました。
金鍾仁氏「徴用問題は韓日首脳が会って解決すべき」
最大野党・国民の力の金鍾仁(キム・ジョンイン)非常対策委員長が24日、「北が核を放棄せず最後まで持っていくのなら、我々も核武装についてまた考えてみる必要があるのではないかと思う」と述べた。<<…続きを読む>>
―――2020.11.25 07:52付 中央日報日本語版より
これは、最大野党「国民の力」の金鐘仁(きん・しょうじん)非常対策委員長が24日、自称元徴用工問題を巡って、日韓の「双方が法的な判断だけに固執すれば問題は解決しない」、「両国の首脳がより高い次元で会い、協議を通じてのみ解決できるだろう」と述べた、というものです。
調べてみると「国民の力」は朴槿恵(ぼく・きんけい)前大統領らの出身母体だった保守政党などを糾合した政党のようですが、今年9月以降、この新党名を名乗っているのだそうです(※余談ですが、党名をコロコロ変えるあたり、日本の民主党・民進党・立憲民主党などとそっくりですね)。
どうでも良いのですが、自称元徴用工問題は国際法的に最終的かつ完全に解決済みであり、国際法を無視しているのは韓国の側です。「法を無視して政治決着せよ」などと主張する人物が「保守政党」を名乗っているということ自体、もはやたちの悪い冗談かなにかにしか見えません。
相手を変えるな、自分が変われ!
ただ、この記事を読んで看過できないのは、その点だけではありません。
この金鐘仁氏という人物、韓国の「核武装論」にも言及しているのです。
中央日報によると、「米国の核兵器を韓国に搬入することができず、北朝鮮も非核化に応じない場合には、(韓国も)核武装を検討してみる必要がある」と述べたのだとか。
記事のなかではサラッと流していますが、さりげなく爆弾発言ですね。
また、米中が対立するなかでの韓国の外交的な方向性については、「強固な韓米同盟関係を基盤に、経済的側面では中国と別途関係を維持するのが最善」などと述べたそうであり、「米中二股外交」ないし「コウモリ外交」は保守政党にも健在、ということがよくわかります。
こうしたなか、日本国内で「文在寅氏が任期を満了し、後任に保守派が大統領に就任すれば、日韓関係はマシになる」などと寝言を述べる人もいます。
たとえば、昨年の『「日韓関係悪化は中国を利する」、その何が問題なのですか?』で紹介したとおり、わが国でも新進気鋭の国際関係アナリストとして名が知られている人物は、文在寅(ぶん・ざいいん)政権を巡って、次のようなことを主張しました。
「日本と米国は、習近平を喜ばせすぎないよう、『文が大統領を辞めた後の韓国に親日、親米政権が立つよう』努力すべきだろう」
非常に残念な話ですが、外交関係において「相手を変える」ということは非常に難しい話です。
正しいアプローチは、「相手がこういう人たちだ」という前提において、私たちがどう国益を最大化するか、という視点だと思うのですが、いかがでしょうか?
1964年、愛知県出身。私立東海中学、東海高校を経て、早稲田大学法学部卒。
日本のバブル崩壊とサブプライム危機・リーマンショックを事前に予測、的中させた。
現在は世界に誇れる日本を後の世代に引き渡すために、日本再興計画を立案する「日本再興プランナー」として活動。
日本国内であまり紹介されていないニュースの紹介&分析で評価の高いブログ・「日本再興ニュース」( https://nippon-saikou.com )の運営を中心に、各種SNSからも情報発信を行っている。
近著に『左翼を心の底から懺悔させる本』(取り扱いはアマゾンのみ)。