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分断社会としての朝鮮半島と儒教思想(京都大学公共政策大学院/経済学研究科 教授)

2019-09-30 16:38:09 | 日記

分断社会としての朝鮮半島と儒教思想

岩本武和

(京都大学公共政策大学院/経済学研究科 教授)

2019.08.19

分断社会とマージナル・マン

分断社会としての朝鮮半島と儒教思想

岩本武和

(京都大学公共政策大学院/経済学研究科 教授)

2019.08.19

 

痛ましいほどの「分断社会」である朝鮮半島。国家が南北に分断されているばかりか,南北とも,社会そのもの・人々が分断されている。

北における密告社会,拷問・公開処刑,

南における成人男性の高い自殺率,歴代大統領が現政権によって訴追され,収監されるのは当たり前,殺害や自殺に至るほど悲惨な社会は,

世界中・歴史上でもでもめったにないのではないかと思う。

分断された社会・人々をまとめるため,外に敵を求める。これも,南北に共通した朝鮮半島の特徴。

もっともこれは,秀吉の朝鮮征伐や,西郷の征韓論など,日本(や諸外国)に共通の「狂った為政者」による統治原理であったことは確かであるが。

関西在日の出身の多くは,済州(チェジュ)島。

朝鮮戦争後の1948年~1954年にかけて起こった「済州島四・三事件」で李承晩政権の密告・自民族による大量虐殺・日本への密航等で,済州島では事件前の1948年に28万人いた島民が,1957年には3万人弱にまで激減したという

朝鮮人によって密告・虐殺され,かつ日本人によって差別まみれにされた済州島の人間に,寄ってすがるべきアイデンティティ(居場所)はどこにもない。

ただ,寄ってすがるべきアイデンティティがどこにもない人間は,しばしば「マージナル・マン(境界・限界を生きる人)」(M.ウェーバー)として,社会においてずば抜けた力を発揮し,歴史的にもその名を残した偉人が多くいる。

恨の思想とルサンチマン

他方,分断社会である朝鮮半島に住む人の多くが,「恨(ハン)」という思考様式をもっているといわれる。

「恨の思想」は,西洋思想では,ニーチェの「ルサンチマン」がこれに当たる。

弱者が強者に対して抱く妬みや恨み,憎悪や復讐心といった概念だが,ニーチュの『善悪の彼岸』が凄いのは,キリスト教の起源を,被支配階級であるユダヤ人の,支配階級であるローマ人に対するルサンチマンに求めたことだ。

ルサンチマンは,強い者や豊かな者は「悪」,弱い者や貧しい者は「善」という屈折した価値観を作り出した。

さらに欲望や快楽を否定し,最終的にキリスト教の原罪,禁欲主義,現世否定主義につながっていった。

ニーチェは,キリスト教の起源だけでなく,近代以降の社会主義革命,さらに一般的に道徳の根底にこのルサンチマンがあるとした。

確かに,キリスト教のみならず(オーム真理教を含めた新興)宗教は,その起源においては,教祖も信者も,トンデモ「奇跡」(革命の成功,日本に勝つ!)を信じ,支配者(社会一般)から迫害され,教祖が処刑されたら,何と教祖のトンデモ「復活」を信じている。

分断社会と儒教思想

この分断社会ができたのは,朝鮮半島の長い歴史,特に李氏朝鮮以降の「儒教思想」に由来する。

儒教思想は統治原理としては不適切・最悪,ないしは統治原理にはなり得ない典型的な歴史的事例が,朝鮮半島であると思う。

儒教思想が国家の統治原理として最悪な事例が,北朝鮮王朝であり,互いに憎しみを抱き合っている現在の韓国も同様の歴史を持つ。

李朝時代に培われてきた崇儒廃仏,中華主義と華夷秩序の世界観。

韓国からすれば,日本は明らかに自らも劣った野蛮な夷族の地と認識している。

今なお韓国は「日本は文化的に低い位置にある」と見なし,その「侮日観」によって,自国民は絶対善であり,日本は絶対悪でなければならない(呉善花『韓国を蝕む儒教の怨念~反日は永久に終わらない』小学館新書)。

地位の高い人,成功した人,富める者,男性は「徳を積んだ人」であり,地位の低い人,敗した人,貧しい者,女性は「徳を積まなかった人」である。

「成功した人は頑張ったからだ,成功しなかった人は怠けたからだ」という日本の通俗道徳にも,全く因果連関がないが,「成功した人は徳を積んだからであり,成功しなかった人は徳を積まなかったからだ」という,まったく科学的根拠のない儒教思想は,やはり宗教だ。

だからこそ,日韓関係が歴史的に最悪な今だからこそ,必要なのが,「YouTubeで動画を見るなら,日韓の軍事摩擦の喧伝動画ではなく,ぜひ『韓国人が日本焼き鳥専門店初体験』をお勧めする。

日韓の若い世代が,大人げない嫌韓・反日を振りかざす大人たちを全く余所に,実に健全な隣国交流を続けていることに安堵するはずである。

この世代の健全さを,思考を停止した大人たちが,『毅然とした態度をとれ」などという通俗道徳を振りかざすことで,二度とぶち壊さないことを念じている」という姿勢である(岩本武和「新自由主義と通俗道徳」『世界経済評論IMPACT』2019年1月14日)。

日本(世界中)も朝鮮半島を嗤えないほどの分断社会になっている。

それが生み出すものがファシズムであることは,戦前の日本(世界)でも明らかだ。

貧困は自由を憎む。競争を嫌う。自由と競争が貧困を生み出すからだ。

その結果が,国家社会主義(ナチスと日帝)だ。二度とその轍は踏むまい。


韓国における少子化の原因とその対策 ―「低出産・高齢化社会基本計画」の成果と今後のあり方―

2019-09-30 16:26:18 | 日記
2014年03月12日

韓国における少子化の原因とその対策 ―「低出産・高齢化社会基本計画」の成果と今後のあり方―

 

生活研究部                                                                            准主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任                    

金 明中                                                                                

 

■要旨

  • 2012年の韓国の合計特殊出生率(以下、「出生率」)は、最近少しずつ上昇しているものの1.30に過ぎず、OECD加盟国の平均出生率1.74(2010年)に比べると著しく低い水準である。
  • 一方、韓国の2012年の高齢化率は11.8%で、日本の24.1%に比べるとまだ低いが、
  • 高齢化のスピードが速く、2025年には20%を、さらに2037 年には30%を越え、2050年には37.4%まで上昇することが見通されている。
  • 韓国の人口政策は、大きく三つの期間((1)1961~1995年、(2)1996~2003年、(3)2004年以降)に区分することができる。
  • 人口政策の第3期(2004年以降)には、低出産・高齢化問題に本格的に対応するために、2006年から「低出産・高齢社会基本計画」を実施している。基本計画実施以来、実際に出生率は2006年の1.12から2012年には1.30まで増加した。しかしながら、2013年の出生率は1.19まで低下することがすでに暫定発表されており、今後の出生率増加の動向については、政策の効果に疑問が持たれている。
  • 韓国における少子化の原因としては、(1)女性の学歴上昇と晩婚化や未婚化の進行、(2)若年女性の労働市場参加の増加、(3)仕事と家庭の両立を支援する制度が依然として不十分、(4)教育費負担の増加、(5)結婚と子供に対する価値観の変化、(6)改善の進まぬ若年層の雇用及び所得の不安定状態が挙げられる。
  • 2006年から実施された「低出産・高齢社会基本計画」は、「すべての世代がともに生きる持続可能な社会」というスローガンの下で、第1段階(2006年~2010年)には「少子高齢化社会に対応するための基盤構築」を、第2段階(2011年 ~2015年)には「漸進的な出生率の回復及び高齢社会に対する対応策の確立」を、第3段階(2016年~2020年)では「OECD平均の出生率回復と高齢社会への円滑な適応」を目標にしている。
  • 第1次基本計画の実施以降、嬰・幼児保育・教育費支援率は、2005年の21.9%から、2010年には42.0%に上昇した。また、同期間における育児休職制度の利用者割合も、26.0%から50.2%まで上昇する効果が現れた。しかしながら、第1次基本計画は、支援対象が低所得層に限定されていたために、子育て世帯全体としては、育児や教育に対する負担感はそれほど減らず、全体的には出生率の改善効果も大きくなかった。
  • 第2次基本計画における低出産改善分野の政策方向は、出産と育児に有利な環境を形成することである。このために
  • (1)仕事と家庭の両立の日常化、
  • (2)結婚、出産、育児の負担の軽減、(
  • 3)児童・青少年の健全な成長環境の形成という三つの方向を設定した。
  • 「低出産・高齢社会基本計画」の成功の鍵は、何よりも、女性が結婚、出産、育児により労働市場を離れ、キャリアが断絶されてしまう現象を防ぐことにある。そして、そのためには、育児や家事に対する男性の積極的参加、及び、企業や社会の意識の変革が必要である。
  • 男性の育児休業取得率が低いなど、制度の活用度が低い現状を考えると、韓国社会に、仕事と生活の両立が可能な文化を定着させるためには、男性の積極的参加を誘導できる、強力かつ強制的なインセンティブ制度の整備が必要であるだろう。
  • 日本と韓国は、社会経済的な面で類似点が多く、日韓両国がお互いの制度を参考にしながら、今後の少子高齢化対策を一緒に講じていくことが、時間的・経済的ロスを最小化し、日韓がともに発展するシナジー効果を発生させる道であろうと考える。

傷つく日韓関係、修復描けず 日韓外相が初会談

2019-09-30 16:15:57 | 日記

傷つく日韓関係、修復描けず 日韓外相が初会談

2019/9/27 18:00

【ニューヨーク=宮坂正太郎】
 
茂木敏充外相は26日(日本時間27日)、米ニューヨークで韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相と就任後初めて会談した。
 
日韓首脳会談が約1年間開かれていない状況で外相間の対話は継続しているが、元徴用工問題など懸案事項を巡る議論は平行線だった。
 
日韓関係は修復の道筋が描けず、一段と悪化する可能性もある。
会談に際して握手する茂木外相(左)と韓国の康京和外相(26日、米ニューヨークの国連本部)=聯合・共同

会談に際して握手する茂木外相(左)と韓国の康京和外相(26日、米ニューヨークの国連本部)=聯合・共同

「北朝鮮問題などへの対応のため日韓、日韓米の緊密な連携が今ほど重要な時はない。

未来志向の日韓関係を築いていくべきだ」と茂木氏は呼びかけた。

康氏は「河野太郎前外相と同様に茂木外相とも良い対話を続けていきたい」と応じた。

会談は予定していた20分間を大きく超え、約50分間続いた。

両氏は外相間を含めて外交ルートでの意思疎通を続けていくことを確認した。

しかし話題が元徴用工問題や輸出管理の強化、韓国による日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄決定など懸案事項に及ぶと話はかみあわなかった。それぞれ日韓両国の立場を改めて表明するにとどまった。

懸案事項を巡り日韓両国は認識からすれ違う。日本は元徴用工への賠償を日本企業に命じた韓国大法院(最高裁)判決が国際法違反だとして韓国政府に対応策を講じるよう求める。

元徴用工の請求権問題は1965年の日韓請求権協定で解決済みとし、韓国政府が6月に示した日韓の企業が資金を出し合って原告と和解する案を拒否した。

一方で韓国は日本がとった韓国向け輸出管理の強化を「経済報復」と捉え、政府や国民の感情的な反発が強まった。

韓国がGSOMIAの破棄を決めた理由にもなった。

韓国内では輸出管理とGSOMIAの問題を引き換えにしようとの視点もあるが、元徴用工問題の対処に力点を置く日本とは議論がかみ合わない。

日本政府には日韓関係の悪化は底を打っていないという見方がある。

11月22日にはGSOMIAが期限切れを迎え、安全保障分野の日韓連携は一段と難しくなる。

年末以降、韓国の裁判所が原告に差し押さえられた日本企業の韓国内の資産の売却命令を出す可能性がある。日本は請求権協定を覆す受け入れられない措置との立場で、資産売却に損害賠償請求などの対抗措置も視野に入れる。

安倍晋三首相は韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と今回の国連総会にあわせた接触を見送った。日韓は関係悪化を背景に2018年9月の国連総会を最後に首脳会談を開いていない。

首脳級が接触する機会はある。

天皇の即位を国内外に宣言する「即位礼正殿の儀」が10月22日にあり、各国から要人が参加する。

10月末からタイで開く東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議、11月中旬にチリで開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議など首脳級の会合も続く。

しかし首脳会談の前提を整えようという動きは具体化していない。


シラク氏に仏市民らお別れ 「最良の大統領」へ長い列

2019-09-30 16:09:21 | 日記

シラク氏に仏市民らお別れ 「最良の大統領」へ長い列

29日付のジュルナル・デュ・ディマンシュ紙は、1958年に始まった第5共和制で最良の大統領は誰かを尋ねた世論調査で、シラク氏が第2次大戦の英雄ドゴール氏と並んで30%を獲得し、1位になったと伝えた。

シラク氏のひつぎは29日、パリの自宅から車でアンバリッドに運ばれ、市民らが祈りをささげた。

 29日、パリのアンバリッド(廃兵院)で、シラク元大統領に最後のお別れをするため、長い列をつくって待つ市民ら(AP=共同)

 29日、パリのアンバリッド(廃兵院)で、シラク元大統領に最後のお別れをするため、長い列をつくって待つ市民ら(AP=共同)
 

 


中韓への忖度は百害あって一利なし

2019-09-30 13:12:22 | 日記

中韓への忖度は百害あって一利なし

 
 
森 清勇        
 
2019/09/30 06:00
 
 
     
反日政策で共闘を強める韓国と中国。写真はG20大阪サミットで握手する文在寅大統領と習近平国家主席(写真:YONHAP NEWS/アフロ)© Japan Business Press Co., Ltd. 提供 反日政策で共闘を強める韓国と中国。写真はG20大阪サミットで握手する文在寅大統領と習近平国家主席(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

 日本は近代まで外国との接触がほとんどなく、従って外国と係争事案が起きることもなく、説得する必要などはなかった。

 他方で、稲作社会で共同精神が育ち以心伝心で意思が疎通し、言葉をさほど必要としなかった。

 これに対して他の多くの国は狩猟・遊牧の世界で個人が主体であり、自分の正当性を主張し、時には力でねじ伏せる必要があった。

 芳賀綏(やすし)東京工業大学名誉教授はこのような日本を凹型文化の国とし、情の民族で和を大切にするため、自己主張さえ抑えて相手を受け入れるという。

 これに対して中国・韓国を含む欧米諸国は凸型文化で、対立と闘争、制服と復讐などを特徴とする激しい心の世界であるという(『日本人らしさの発見』)。

 まずは凹型文化の日本と凸型の韓国について、河野談話について考えてみる。

河野談話における日本の忖度

 日本が韓国の女性を強制連行して慰安婦にしたという韓国の主張は事実と異なる。

 しかし、何らかの強制性があったかのような表現にトーンダウンする形に日本が譲歩すれば、韓国が日本非難の矛を収め、韓国内の政治も首尾よく収まるという双方の思いが一致した結果として「河野談話」が発表された。

 ところが、その後の韓国政府と反日団体は、国際社会や反日国際団体に「河野談話こそが日本が強制連行した証文」として、「談話」を盾に世界に向かって日本の犯罪として喧伝するようになる。

 日本が韓国に対して、話が違うじゃないかと抗議しても韓国は聞く耳を持たない。

 それどころか、「強制」を示す河野談話があるじゃないかと鬼の首を取ったように言い募るあり様で、正しく「踏んだり蹴ったり」である。

 当時の韓国政府に日本が忖度したという〝恩義″などには及びもつかない。日本は致し方なく、隠してきた〝忖度″を、談話発出経緯の検証で明らかにしようとした。

 本来は人情味の一片も感じさせない韓国に対しては、短切に「貴国の政府がつぶれないように、要望を受け入れて用語も双方で調整した」と云えば済むはずである。

 そうしないで手間暇かけて〝検証″すること自体、またまた「(韓国を、あるいは当時の政府を)傷つけたくない」という忖度である。

 それでも、韓国をはじめとした国際社会は日本批判をやめない。ことほど左様に凹型文化の日本が、凸型文化の国際社会に向かって「日本の考え」を発信することは至難である。

 いまも、福島の汚染水問題や旭日旗、さらには安全保障の視点で輸出規制の強化を図った問題で、事実も真意も理解しないで反日に結び付ける韓国への対処に苦慮している。

日本の「やわしさ」が誤解を招く

 慰安婦問題で日本の弁明が求められると、慰安婦問題は「国連ができる以前の問題で、諸々の条約はその後に締結されており違反に当らない」「調べた文書からは強制的に女性を集めたという証拠はない」「真摯に償いをやってきた」などと外務省の担当者は答えるという。

 しかし、これは典型的な官僚答弁で、日本では通用しても反日を掲げる国際社会で強制性の完全否定には繋がらない。

 韓国のデタラメな主張への反論になっていないどころか、むしろ慰安婦が存在したことを認めたと解釈される。

 もっと明確に「強制的に女性を集めたことはない」「韓国の主張は出鱈目である」などと、相手の言い分を否定して論駁すべきである。

 しかし、日本はそうした論を展開しないで、ここでも相手を傷つけてはいけないという意識からか、あるいは全ての証拠がそろっているわけではないという内心の責めがあるのか、凸型の国のように歯切れがよくない。

 こうした歯切れの悪さと、人道や温情からの支援が返って国際社会では誤解を招く。

 「それではなぜ補償するのか」という質問や「やましいからだ」という批判は、日本に対する「嫌がらせ」でしかないが、凸型文化の国では「非がある国への批判」として当然のように受け取られる。

 そもそも、日本はクマラスワミ報告が出た当初から反論書を準備し一時は提出したが、なぜか引っこめた。

 そうした経緯もあり、完全否定するような反論ができず、ますます問題を広めてしまった。

 韓国や支援団体の主張は間違っていると正面から反論し否定しないで、日本のように「条約違反ではない」「償いをしている」などの回りくどい発言は、凸型の多い国際社会では返って「火に油を注ぐ」ことになる。

 福島の放射能汚染についても同様である。WTO(世界貿易機構)の1審で勝利し安心し過ぎたというが、とんでもない。

 どういう具合に審理は進むのか、探りを入れ対応しようとしなかった官庁の怠慢が招いた結果でしかないであろう。

 もっとも、相手国(凸型国)はロビー活動やアンダーテーブルを多用する。そうしたことも承知の上で、大人の外交として日本はやらないでも、相手のやり方にメスを入れるくらいの情報網を構築してTPOに応じた対応が必要であろう。

NSCが機能していない?

 北朝鮮は7月以降に7回もミサイル発射を行い、中国も新ミサイルの開発に注力している。また韓国の反日姿勢は強まっており、周辺国からの日本に対する脅威は増大している。

 しかし、櫻井よしこ氏によると、これまで開かれた国家安全保障会議(NSC)はたった1回だけだという。(「産経新聞」9月2日付コラム〝美しき勁き国へ″)

 北朝鮮への贅沢品の輸出は国連制裁決議で禁止されているが、日本にある貿易会社などを通じて「レクサス」などの高級車や高級化粧品などが北にはたくさん出回っているという。

 新聞などでもしばしば報道され、筆者もJBpress(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57334)「中国が皇居・官邸の3D地図入手、北朝鮮にも流出か スパイ防止法がない日本は無防備すぎる!」で上掲した。

 北朝鮮の脅威を最も強く受けるのは日本である。だから日本も共同提議国に加わって北朝鮮制裁の国連決議を行いながら、日本が抜け道になっているのでは「泥棒を見て縄を綯う」どころか、泥棒を見て「大いにやりなさい」と奨励しているに等しい。

 北朝鮮の軍事力強化に役立つような行動が韓国に見られるとして日本は8月から韓国への輸出規制強化を行った。

 正しく日本の安全保障問題であり、NSCが機能しなければならない状況であったが経産省が正面に立つ不可解さであった。韓国が徴用工問題などへの〝報復″と受け止めたのは故なしとしない。

 日本がNSC会議を開き、その決議として議長(首相)が輸出規制を発表するなり、NSC事務局である国家安全保障局(NSS)や、最小限外務省が発表する形を採れば、安全保障問題であることを〝明確″に印象付けることができ、韓国の〝報復発言″批判をかわせたのではないだろうか。

 9月の内閣改造に合わせてNSS局長が交代した。『週刊文春』(9月19日号)は「最近は・・・体調不良もあり、辞めたがっていた」と書くが、局長の体調が安全保障問題で機能していなかったとなれば問題である。

 そうした矢先にNSSに経済問題を所掌する部門がないということで、総括・調整班、政策班(3個)、戦略企画班、情報班に加えて経済班(仮称)の立ち上げを検討しているという(「産経新聞」9月18、19日付)。

 真に機能するか否かは、組織の新設ではなく、局長以下の任務意識ではないだろうか。そもそも、NSSは各省庁のセクショナリズムを打破して安全保障の司令塔として設置されたのではなかったか。

外務省の無駄使い

 外務省は2015年、戦略的対外発信の強化に向けた取組の一環として、当初予算500億円を投じて3都市(ロンドン、ロサンゼルス、サンパウロ)に対外発信拠点として「ジャパン・ハウス」を設置した。

「これまで日本に興味のなかった人々も含め,幅広い層に向けて日本の多様な魅力,政策や取組を伝え,親日派・知日派の裾野を拡大していく」という。

 文化や産業などについての広報は既に出先大使館などの多くの関連施設で行われてきた。ジャパン・ハウスはどこまでも「戦略的発信」を目指し、中韓などに引けを取っていた「情報戦」を充実するということから予算や人員が付いたのである。

 ところが古森義久氏(産経新聞ワシントン駐在客員特派員・麗澤大学特別教授)によると、施設は2017年に開設されたが、「どこも、これまでのところ政治案件は一切扱っていない。政治的な情報発信は避けて、文化と芸能だけの活動を展開する状態となっている」という

 ロスのジャパン・ハウスでも「日韓が対立するなか、日本側の主張を何らかの形で発信する気配はツユほどもない。企画や展示のテーマは日本食、日本観光、工芸品、マンガ、アニメ、音楽などに終始している。日本政府にとって切迫した問題である対韓関係に関連するテーマはゼロなのだ」(JBpress2019年8月28日、「世界に響く韓国の大声、日本はもっと情報発信を! 情報発信拠点『ジャパン・ハウス』は何をしているのか?」)。

 筆者は戦前・戦後の外務省の状況を『外務省の大罪―幻の宣戦布告』で明らかにし、戦争責任で外務省は無謬であったとの多くの外交官の主張に論駁した。

 ジャパン・ハウスの無駄といい、政府専用機の予算を猫糞して賭けマージャンをやり競争馬を買い、女性を囲っていた松尾某がいたことを見るにつけ、外務省はポスト増大に熱心であるだけで、国益思考が欠落している。

 河野太郎氏は外相在任間に専用機を要求し続けた。外相が華やかに世界を飛び回っても、外務省の根底にある姿勢・官僚体質を改めない限り、一向に日本の国益に資することのない「害」務省でしかないことを示している。

スパイ防止法こそ急務だ

 ファーウェイ問題では何年も前から、知財窃盗が行われていることを日本の、例えば深田萌絵氏などは気付いていた。

 深田氏は早稲田大学政経学部卒業で、株式アナリストや倒産企業の民事再生業務に携わり、現在はコンピューター製造開発業に従事し、ITビジネスアナリストの肩書もある。

 6年前の話として「私もやられた盗っ人・ファーウェイの汚い手口」(『WiLL』2019年4月号)のように、公刊の月刊誌で堂々とファーウェイ企業について語っている。

 氏は起業した会社で雇用していた中国人を技術スパイとしてFBIに通報しているし、また氏が重用していた副社長に日本の警察が捜査に乗り出したことを告げると、新製品のサンプルやすべてのパソコンのハードディスクドライブが抜き取られ、まんまと逃げられたと記述している。

 その人物はファーウェイが引き抜いたもので、深田氏は「これだけファーウェイが取り沙汰されても、日本では『ファーウェイが技術泥棒だ』と告発する人間が出てこないのは、その多くが何らかの見返りを手にしていたからだ」という。

 そして、「早稲田大学の教授も研究室全員がファーウェイからビジネスクラスの飛行機に高級ホテル宿泊と接待漬けであり、接待費は潤沢なのだ」と、母校の名誉を傷つけてまで告発している。

 氏は米国のFBIまでがファーウェイに寝返っていたと述べ、ファーウェイ問題は単なる貿易事案でなく安全保障問題であるとしている。しかし、日本は何らの対応も外見的には見せなかったという。ここにも、NSS不在である。

 深田氏は「日本中であらゆる技術が中国に盗まれている。ところが、カネで唆され、加担しているのは当の日本人なのだ」と言いい、東芝メモリーが派遣社員に盗まれたことを例示する。

 こうして、スパイ行為そのものを取り締まれる枠組みがなければ、どんなにスパイ被害を訴えても取り締まり様がない」として、スパイ防止法の制定を訴える。

 同誌8月号の「萌絵チャンネル炎上! 私の言い分」では、日本国籍と自称していたX氏(前号の副社長で、中国人スパイか?)から提訴され、裁判のために書類の準備を進めると、X氏やその父らの国籍や出生地などが、聞いていた日本国籍でないという。

 そして、「X氏は産業技術を盗むため『ニセ日本人』として活動するファーウェイのスパイではないかと思しき面がある」と述べる。

「X氏のような問題は、日本各地で起こる可能性があるし、現に存在している可能性すら疑われる」と書き、「政治家や弁護士であれば、人権のみならず、日本の国益と安全保障を第一に考えて欲しい」と訴えている。

おわりに:省益から国益追求へ

 韓国の反日行動は収まるどころか、拡大の一途である。今や貿易問題や安全保障問題にとどまらず、放射能汚染水や旭日旗を問題化してオリンピック・パラリンピックにクレームをつける情報戦に出ている。

 日本国家のアイデンティティに関わる問題にまで韓国は干渉し始めている。いまや敵性国家も同然である。

 国民と政府は別だと日本の多くの識者たちは主張する。しかし、その考えこそが凹型文化がもたらすものである。

 自国が嫌で外国に脱出した韓国系米国人でありながら、韓国政府や反日団体と連動して国際社会に反日を呼号して已まない。

 また在日中国人たちは有事には自国の共産党や大使館の指示で行動するように義務付けられており、そうした行動が北京オリンピックのトーチリレー時に長野でみられた。

 技術窃盗は日常茶飯事のようであり、スパイ防止法をもたない日本の欠陥が明らかになっている。省益の競いから国益増大を目指す日本になるべき時ではないだろうか。

 政治主導の真剣度と官僚の愛国心が問われている。