今回のテーマ: 「環境都市研究」 環境経営士 増田氏の投稿
「環境都市研究」
経済産業省 資源エネルギー庁は将来のエネルギー政策の一環として環境都市を実現すべく取り組ん で い ます。この構想ができた理由、アメリカの事情などを掘り下げます。
スマートグリッドの提唱
1.1米国の電力事情 電力の自由化の推進により低コスト化が進んだものの停電等電力品質(注1)の低下が 目立つようになりました。(2003年北アメリカ大停電)その対策としてスマートメーター(注2)やHE MS(注3)の通信制御機能を付加した電力網を構築することにより需要と供給の落差を最小限にして省 エ ネを図り、電力品質の安定を図るようにしました。 さらに再生可能エネルギーへの投資、数百万人規 模の雇用創出を図るためグリーンニューディール政策を発表し推進することにしました。
注1 電力品質:電圧や周波数が一定でかつ停電しない電力状態。電気機器や設備が故障しないで稼働する 必要条件。
注2スマートメーター:従来のアナログではなくデジタルで電力の消費量(kWh)を測定しデータを遠隔地 に送る機能を持つ。
注3HEMS:エネルギーの「見える化」と一元管理を実現する、家庭で使われるエネルギーを管理するシ ステム(Home Energy Management System)。政府が2030年までにすべての住まいに設置するこ とを目指している。
1-2 スマートグリッド(日本の場合)
①.日本の電力事情 日本は米国に比べ電力品質は高く停電等の不安はほとんどありません。ただし再生 可 能エネルギー導入の際、逆潮流(注4)等の問題が発生し、送電網に障害が起きる可能性があった のでその対策が必要となります。
②.ICT(Information and Communication Technology) 企業の参入 日本の電力会社の高度な電力供給体制で電力品質には問題なかったが、米国などの影響を受けて送配電 分野へのICT企業の参入が進んできました。さらに電力だけでなく熱、天然ガス、水、その他社会イン フラへのサービスを提供できるよう「スマートコミュニティ」という用語がつかわれ出しました。
注4・逆潮流:通常商用電力は、電気事業者の発電施設から電気系統にながれて利用者まで一方向に 流れ て消費される。ただ、自家発電事業者等が電気事業者の電気系統に連系された状態で施設の電 気系統を運用している場合、自家発電事業者の消費する電気よりも自家発電事業者が発電する電力が 多くなると、その余剰電力は電力会社線側に戻るように流れる。その場合、電気系統に不具合が 生じ機器の破損とかが起こる。
2-1.次世代エネルギー・社会システム実証実験 (経済産業省資源エネルギー庁)
2009年に日本版スマートグリッドといわれる次世代エネルギー・社会システム事業が検討・計画され ました。2010~2014年度にかけて横浜市、愛知県豊田市、北九州市、関西文化(けいはんな)学術 研究都市において実証実験が実施されました。
2-2.次世代エネルギー・社会システム実証実験 (経済産業省資源エネルギー庁)
実証実験結論概要
・四地域実証では、需要家単位や数件単位で各種EMSを用いた実証が多く行われるとともに、CEMS(注5) を用いた地域全体管理の実証も行われました。
・スマートコミュニティとしての課題や今後の方向性を検討していく上では、地域全体管理の要である CEMSについて掘り下げていくことが重要
・CEMSは多くの機能を有しているが、どういう機能をCEMSに持たせるべきか,用途に応じて大きく変わ る。
・CEMSの今後の展開に当たっては、提供するサービスの価値を適切に評価した上で、CEMSをどのよう な事業で活用するのかについて充分に設計することが重要。
注5 CEMS:Community Energy Management Systemの略語地域全体のエネ ルギーの消費を監視/ 制御するシステム。ちなみにHEMSは住宅向け(Home)、BEMSは商用ビル 向け(Building)、 FEMSは工場向け(Factory)となる。
3.環境未来都市・環境モデル都市の体系
環境未来都市とはどのような構想か?
まず全国の市町村から「環境・超高齢化、その他地域独自の課題対応」「温室効果削減対応」など優れ た対応をしている市町村から選定、平成25 年度23都市選定、更に厳選して「環境未来都市」を11都市 選ばれています。環境未来都市」には横浜市、北九州市、富山市などが選ばれています。
4.環境モデル都市事例
京都市、愛知県豊田市、愛媛県松山市の事例をご紹介します。(下図参照)
5.環境未来都市事例
横浜市、北九州市、富山市の事例をご紹介します。(下図参照)
6.国連MDGsからSDGsへ
2000年から2015年にかけて国連は発展途上国を対象にミレニアム開発目標MDGsで貧困と飢餓の撲滅 等目標にかかげ活動しました。ある程度成果を収め2015年から2030年は先進国も含めた持続可能な 開発のための2030 アジェンダSDGsを設定しました。 詳細は外務省HPをご覧ください。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/about/doukou/page23_000779.html
7.関連年表
今までの経緯を時系列的にまとめましたので下表をご参照ください。
8.日本経営士会CSR事業部の理念とSDGs
環境経営士のHPでもSDGsとのかかわりを取上げています。
https://www.compact-eco.com/sdgsは同一方向/
9.環境未来都市・環境モデル都市とSDGs
内閣府地方創生推進事務局HPにも環境未来都市・環境モデル都市とSDGsの関係がでています。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kankyo/index.html
10.横浜スマートシティ
横浜市は次世代エネルギー・社会システム実証実験を実施し、環境モデル都市、環境未来都市にも認定 されました。 この分野では各自治体のトップを走っています。
さらに横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)
http://www.city.yokohama.lg.jp/ondan/yscp/
を進めています。以下にその活動事例を示します。(下記資料参照)
① HEMS等導入事業~市内中小企業の参画
②EV~EVバッテリーを活用したエネルギーマネジメント
なおこの資料作成に当たり横浜市温暖化対策統括 本部プロジェクト推進課の職員の方のご指導を頂きました。
11.今後の展開
ここで環境経営士として言いたいことを簡潔に述べました。YSCPとの係わりを深めて中小企業の環境 経営支援を進めたいと存じます。 寄稿者 環境経営士 増田 昌彦氏
この記事は(一社)日本経営士会発行の「環境CSRニュース」で配信した記事の一部です。
日本経営士会 環境CSRのホームページはこちらへ。http://www.compact-eco.com/