日本経営士会発行の「CSR環境ニュース」で配信した記事の一部です。
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CSR環境ニュース (臨時号) 2019年9 月18日
環境省 「総合環境政策統括官」中井徳太郎が特別講演
9月14日 15日 日本経営士会全国研究会議が京都で開催されました。
環境政策のトップに立つ人の御講演でしたから環境経営士にとっては日本の環境政策の
最新の考えがわかりますから、一読をお願いいたします。
●パリ協定は先進国の途上国が初めて歩み寄った。同年(2015年)SDGsも国連で採択
先進国と途上国は初めてパリ協定で両者は歩み寄り、人類の危機を世界全体で解決していくべくコミットをした。国連でも同じ年の9月に、持続可能な開発目標、いわゆるSDGsを採択しています。これもパリ協定と同じく、地球のエコシステムが壊れ壊れつつあるという危機感が世界全体で共有された。
●化石燃料の抑制に拍車 大企業、金融機関そして中小企業にも
2015年以降、温暖化を止めるために石炭や石油などの化石燃料の消費を抑制するという流れに拍車がかかっている。具体的には、事業活動によるものづくり、流通などにはお金が必要ですが、そのお金の流れを握る金融当局や中央銀行といった金融サイドがイニシアティブをとって脱炭素社会へ移行する方向へと変えようとしている。
最たるものが、G20の財務大臣、中央銀行総裁からの要請を受け、金融安定理事会の下に設置されたTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)です。気温上昇が進めば経済活動にさらなる影響を及ぼすということで、世界は化石燃料に頼らない方向へと動いていますし、再生エネルギーを中心とした新ビジネスも誕生している。環境要因そのものは財務情報ではありませんが、長期的な時間軸で考えればお金に換算されてくる話です。
そして、世界の金融機関や機関投資家が続々と、この明確なメッセージに賛同しています。国連も06年にESG(環境・社会・ガバナンス)情報を考慮した投資行動を求める「責任投資原則(PRI)」を打ち出していましたが、こちらも事業運営を100%再生エネルギーで賄うことを目指すRE100や、科学的知見と整合した排出削減の目標設定であるSBT(「Science-based Targets」の頭文字を取った略称で、日本語では「科学的根拠に基づく目標」とも呼ばれています。)などがそうです。大企業が率先して「脱炭素化」にコミットしはじめたのです。
こうした動きは中小企業にもサプライチェーンでつながっていますから、今や日本全国にひろまりつつあるのです。環境省としても、お金の流れを変える、金融の側面からのアプローチにより力を入れていこうとしています。
また我が国が抱える環境・経済・社会の同時解決を行う。
● 具体的なCO2削減方法は
最新鋭の石炭火力発電方式であっても、LNGガスの約2倍のCO2が排出されます。しかし、途上国にある老朽化した石炭火力発電所だと、変えようと思っても、すぐにLNGや再生エネルギーに変えられない事情がありますから、この技術が最善の選択肢になる場合もあるのです。2030年へのコミットとして日本は2013年度比で26%減らすと決めています。その後、加速度的に2050年までに80%減らす予定です。
その方法は化石燃料からの脱却以外にもさまざまで、新たな技術も期待されています。CO2を回収して地下に貯留するCCSや回収したCO2を再利用するCCUといった技術も生まれています。 あとは主にコストと貯留適地の問題です。CCUに関しても環境省では人工光合成等により工業原料を作るなど、さまざまな技術開発・実証を行っており、こうしたイノベーティブな技術も活用して削減目標を達成しようとしています。
●地域循環共生圏へ 脱炭素化に向けたパラダイムシフト
環境省は社会変革を促すプレーヤーの目線で動いており、お題は、脱炭素化とSDGsなのですから、これを国内で具現化して世界に広めていく、そういう構想で動いています。地域にはそれぞれ自然の恵みなど、独自の資源がありますね。例えば、エネルギーでは太陽光や風力、バイオマス発電の燃料となる木質ペレットなどがそうです。 今後、エネルギー分野の地産地消ができれば、海外から化石燃料を輸入する構造がなくなります。エネルギー以外でも、食や景観、祭りといった観光資源なども生かして、それぞれの地域にあった持続可能な経済をつくり、それをまわしていこうというのです。
即ち地域循環共生圏とは「資源を循環利用して自立する地域が相互に連携し機能する」ことです。
江戸時代は見事なまでの循環社会だったわけですから、人口の規模こそ違いますが、それをテクノロジーで補えば循環社会を取り戻すことも可能だと考えています。そうすればゴミもゴミでなくなり、大量廃棄もなくなる。何より、脱炭素の目的も果たされます。その構想の旗振り役が環境省です。
例えば、バイオマスボイラーも輸入しているのが現状ですが、これも日本に適した小型版のバイオマスボイラーをつくるとか、太陽光パネルについても、災害にも強いパネルを含めたシステムをつくるなど「なければつくる」といった発想です。
例えば東近江市は、汚染から琵琶湖の環境を取り戻した経験から住民の環境意識が強く、エネルギーや、森林の整備といった問題をみんなで協議する円卓会議をつくっています。また、新たな事業に対しても、近江商人の発祥地らしく「東近江三方良し基金」をつくり、市の政策と連携してさまざまな事業を起こしている。
環境省としても、こうしたトップランナーを後押ししながら、前例がないとなかなか動けない金融機関に対して、前例を作る後押しを行うなど、いい事業を生み、それをバックアップしていく、そういった汗かき役になっているのです。エネルギーの技術では、今再生エネルギーのような「つくる」方向と、消費エネルギーを「減らす」方向の2つの大きな流れがあります。
●目の前にある巨大マーケット
世界的視点でみると平均気温を2℃に抑えた状態では2025年~2030年まで、年間28兆円~50兆円(世界全体)
そして2℃目標達成のためには建物、産業、運輸が脱炭素化するため、2016年~2050年までの累計で約12兆USドル(年間38兆円 年平均で1ドル110円と仮定)の追加投資が必要
●「窒化ガリウム」に期待
減らす方では「窒化ガリウム」に期待しています。現在のLEDが普及したのも青色を出せる窒化ガリウムのお陰ですが、この窒化ガリウムを使えば電気の交流と直流の変換効率を格段に向上させることができるのです。
これは、究極のエコ技術で、電気自動車にも使えますし、電子レンジなどさまざまな分野に応用できます。プラスチックも問題になっていますが、構成要素を炭素や酸素といった元素にまで分解して再構成する技術も出てきています。出さない、捨てないは大事ですが、捨てられたものを集めて、高度に再利用を行うことも技術的には可能なのですから、海洋プラスチックの問題にも応用可能です。
●世界に向けた日本発のモデルを発信する
2019年6月にはG20が日本で開催された。このような機会に今後もこの地域循環共生圏を詳しく知ってもらい、世界に向けた日本発のモデルにしたいと考えています。
この記事は
下記のホームページと一般社団法人日本経営士会「全国研究会議」の資料を参考にしました。
http://net.keizaikai.co.jp/archives/34813