日本経営士会発行の「環境CSRニュース」で配信した記事の一部です。日本経営士会 環境CSRのホームページはこちらへ。 http://www.compact-eco.com
事業承継 シリーズ④ 「経営権を引き継ぐ」
前回は「財産を引き継ぐ」でした。財産の引継ぎは税務上の問題が出てくるため税理士の関与が欠かせませんでした。今回は経営権とは何かどのように引き継ぐか学習します。
経営権を引き継ぐとは即ち会社を経営していく権利を引き継ぐごとです。例えば会社の
理念に従って、部下に指示をしたり、お金の状態、売り上げの推移、新商品の開発など
企業が存続するために考え実行していく最高の責任者です。
経営権を引き継ぐには会社の形態によって違ってきます。
●株式会社の場合:
原則として株式を譲渡することを意味します。より正確には株主総会に於ける議決権有する株式を譲渡することです。
株式会社は株主総会が最高の意思決定機関です。取締役の選任も株主総会で決議されます。
また議決権は株式数に応じて付与されるため、代表者である社長が過半数の有していることが
必要です。
過半数の賛成が必要、2/3が必要、3/4が必要の場合など会社法で決められていますから
持ち分比率が高いほど、社長の経営の範囲が広くなります。
このように社長は議決権を有しますが、取締役会では取締役の議決は取締役の頭数で過半数の賛成を得る必要があります。
会社法では「所有と経営」分離というルールもあります。この株は議決権の要しない株です。
株式会社以外の場合:
有限会社、合名会社、合資会社、合同会社に於いては持ち分に応じて会社の意思決定を行われます。
●有限会社の場合:
会社法の改正により新規の有限会社は設立できません。従来からの有限会社が存続しています。
有限会社の最高意思決定機関は社員総会です。各社員は原則として出資1口について1個の議決権を持ちます。即ち議決権は出資口数によります。
社員総会は総社員の過半数の出席で成立し、議決は出席社員の議決権の過半数を持って決します。
●合資・合名・合同会社の場合
その他の会社3社とも持分会社と呼ばれ、社員(出資者)が経営にあたるという所が、株式会社と異なります。株式会社は、通常所有と経営が分離されており、株主(出資者)は、経営には口を挟みませんが合資・合名・合同会社は、比較的規模の小さいところ向きで、所有と経営を同一とした方が経営効率上、よいためこの形態がとられます
合資会社とは無限責任社員と有限責任社員とに分かれます。
合名会社は無限責任社員のみで構成されます。
合同会社とは有限責任社員のみで組織されます。
各社員が株式会社のように選任行為はなく執行機関となり業務執行の権限と義務を負います。
定款で定めれば一部の社員のみが業務執行社員とすることが出来ます。これらの会社の意思決定は業務執行社員の頭数の過半数で物事が決まります。
●個人経営の場合:
個人自身の事業用財産を譲り渡すことです。
個人の事業承継をする場合は財産、債券、債務を確実に新経営者に引き継がせます。この点が事業用財産や債券債務が会社自体に帰属する会社の場合と違います。
例えば事務用財産はリースになっていたり、自動車は現経営者の家族名義になっていたりします。物品すべてリスト化し売買契約書に添付することで新経営者に引継ぎます。
債券決算上、債券があったとしても本当に債券額全額が回収できるのか十分検討したうえで債券の価値を算定する必要があります。また時効で消滅している場合もあります。
また現経営者は債務者に対して債権譲渡通知を送る必要があります。
◎M&A(エムアンドエー):後継者がいない等の事例が多く見受けられます。この様な場合はM&Aの手法を使う場合もあります。
M&AはMergers(合併)and Acquisitions(買収)の略で最近はこの専門家が多くいます。
企業間のM&Aは、譲渡企業・譲渡を受ける企業の各関係者に大きなメリットをもたらします。
「後継者問題の解決」や「事業領域の拡大」などの企業の課題解決にはM&Aは有効な手段です。
国の後押し、例えば税制、補助金等の効果もあり、わが国全体のM&A件数はおよそ年間3000件程度で毎年増加をしています。