「社会的インパクト評価」シリーズ⑥
第4章 評価支援者のための補足
4.1 評価支援者に期待される役割
ロジック・モデルについての知識さえあれば、ロジック・モデルの作成が出来るでしょうか?
実際にロジック・モデルを作成しようとすると、さまざまな実務上の課題に直面します。
その中で最も困難なものの1つが「合意形成」です。
評価支援者には合意形成のためのファシリテーターとしての役割が期待されます。
合意形成には正解がありません。
いかに納得性と合意の質を高めていくかがファシリテーターの役割となります。
そのため、合意形成においては、結論よりもプロセスが重要となってきます。
問題解決 合意形成
前提 正解がある 正解がない
期待される役割 正解へ導く 納得性と
合意の質を高める
重視されるもの 結論 プロセス
4.2 ファシリテーションの4つのスキル
場を作り、つなげる 受け止め、引き出し、まとめて、分かち合う かみ合わせ、整理する。
4.3 合意形成のスキル –意思決定の方法(コンセンサス法)
合意形成の方法にはさまざまな方法がありますが、コンセンサス法についてご紹介します。
コンセンサスとは、誰かのアイデアを全員に押し付けたり、集団の力で一部の人に受け入れられないような案を
強制することではありません。
各人にとっては必ずしも最良の案でなくても、メンバー全員が支持できる案を、チーム全体でつくりだしていきます。
合理的で民主的な議論をすること
少数派の意見を尊重すること
全員が納得するまで粘り強く考えること
コンセンサスづくりを進める上での留意点
地位の力を利用したり、メンバー同士で取引をしたりすることは認められません。
多数決法では少数派の意見が切り捨てられてしまいますが、コンセンサス法では少数派の意見も尊重します。
納得性と合意の質を高めていくため、多くの時間とエネルギーをかけます。
合意形成のスキル –コンフリクトマネジメント
コンフリクトとは、意見や意識のギャップから生まれる対立、葛藤、衝突、紛争などのことです
コンフリクトとは意思決定を妨げたり、組織分裂の危機に陥ることもあります。
しかし、コンフリクトが創造性を生み出すので、うまく活用することで議論を活性化できます。
コンフリクトは表面の意見ではなく、裏にある「考え方の枠組み」が対立しているので、お互いに理解を促すことが必要になります。
評価支援者のための補足
意見 考え方の枠組み
例えば、「AさんはBさんの意見をどう理解しましたか?」とお互いの意見の違いを理解する。
そこから、「なぜ、Aさんはそのような意見を持ったのですか?」と背景を聞いていくという流れで
意見の裏にある「考え方の枠組み」を引き出していくことが重要です。
4.4 ケーススタディ
評価支援者のための補足
以下のようなケースの場合、あなたは評価支援者としてどう対応しますか?
現場が忙しいので社会的インパクト評価なんてやる暇ありません。
受益者は経済的困難を抱える子どもたちです。
受益者は身体的障害を抱える子どもたちです。
子どもたちの学力向上こそ最も大事です。
教師たちの指導力向上こそ最も大事です。
協力を得ることが出来ない 事業目標や受益者が定まらない 評価する成果が定まらない現場が何より大事
だと思っています。
会議室で話し合っても課題は解決しないと思います。
私自身が経済的困難を抱える家庭に育ったため、強い問題意識を持っています。
家族に身体的障害を抱える子どもがいるため、強い問題意識を持っています。
私は一生懸命勉強してきたので、今とても充実した日々を送ることが出来ています。
私は素晴らしい教師に出会えたことがきっかけで、今とても充実した日々を送っています。
今回の社会的インパクト評価シリーズは今回で終えます。
詳細はこのシリーズの①番目に書きましたURLには図、事例などが詳細に乗っていますからご参照ください。
この記事は日本経営士会 「環境経営士 ®」向けメルマガで発信している記事の転載です。
環境経営士については「環境経営士」で検索またはアドレスはhttps://www.compact-eco.com です。