東埼玉病院 総合診療科ブログ

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Multimorbidityについて(朝の勉強会)

2015-05-26 20:06:45 | 勉強会
 今日の朝の勉強会は、Multimorbidityについてです。先日、複雑性のはなしがでましたが、それとも若干関連する内容として少し調べてみました。


<Multimorbidityについて>

■Multimorbidityと死亡・入院・身体機能の低下・うつ・ポリファーマシー・QOL悪化との関連が報告されており、今後さらに増加することが予測されている。

■Multimorbidityの頻度は?パターンは?
★C Violanらの報告(PLOS ONE 2014):Systematic Review
プライマリケアセッティングでのMultimorbidityの頻度・パターン・関連因子を調査。12国の39研究が対象。
①頻度:12.9%(18歳以上対象の研究)~95.1%(65歳以上対象の研究) ほとんどが20%を超えていた。
②関連因子:年齢(OR:1.26~227.46)、低い社会・経済状態(OR:1.20~1.91)。女性・精神疾患との関連も報告あり。⇒高齢で心理社会面の問題がある人に多い。より複雑性高くなる集団か。
③パターン:最も多いパターンは変形性関節症+心血管疾患(and/or)代謝疾患。

■どのような介入が有効なのか?
★CM Boydらの報告(JAMA 2005)
15のコモンディジーズのガイドラインを調べたところ、 Multimorbidityへの対処はほとんどのガイドラインになし。
76歳のCOPD・DM・HT・骨そしょう症・変形性関節症の患者の場合、ガイドライン通りだと、12の薬剤必要。月に400ドル以上。
★M Lugtenbergらの報告(PLOS ONE 2011)
有病率高く、QOLへの影響が大きい4つの疾患(COPD,2型DM,うつ,変形性関節症)のガイドラインに対してcomorbidityの記述を調査
平均3つの推奨。20のガイドラインで計59の推奨。そのうち78%が関連するcomorbidity(ほとんどDMガイドライン)で、関連しないcomorbidityの記述は8%のみ(うつガイドラインで多かった)であった。⇒Multimorbidityに対してガイドラインベースの診療は限界がある。
★SM Smithらの報告(BMJ 2012):Systematic Review
10個のRCT(全てcomplex intervention)⇒ケアデリバリー・多職種でのチーム介入などがほとんど。処方や薬剤アドヒアランスの改善を認めていたが、cost effectiveや健康アウトカムの実証は不十分。
★J ReeveらのDEBATE(BMC Family Practice 2013)
complex intervention(CI)を行う上で、Normalisation Process Theory(NPT)が有用ではないかと提案
NPT:
①Sense-Making Work ②Engagement ③Action ④Monitoring


 高齢者診療を行っていて、多くの患者さんがMultimorbidityであったりします。しかも、先の研究でもあったようにMultimorbidityは、高齢で心理社会面の問題がある人に多いのも、実臨床でも実感します。そのような患者さんたちにガイドライン診療をそのままあてはめることが有用でないこと・困難であることをなんとなくは感じていましたが、それがある程度、実証されていることなのだと知りました。また、個人的にはcomplex intervention(CI)という概念を非常に興味深く感じました。多職種などで包括的な介入を行うことが、これからの高齢者医療においてはやはり重要なのだと再実感するとともに、その効果を実証することは、普段の臨床そのものを研究として行うことでもあり、結果が非常に実践的となりえると思いました(つまり目の前のいろいろなことを抱えた患者に適応可能)。6月にあるプライマリケア連合学会の抄録をみていたら、それにあてはまるような研究もあり、感銘をうけました。(日野原賞という若手研究者対象の学会賞にノミネートされていた南砺市民病院の演題です。「食べられない」高齢者に対する多職種での包括的アプローチの有効性を検証しています。)