東埼玉病院 総合診療科ブログ

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施設での抗精神病薬投与について

2015-05-05 23:54:34 | カンファレンスの話題
 ゴールデンウィークですね。当科でも交代で休みをとっています。ということでちょっと更新さぼってしまいました。言い訳です・・・。
先日のカンファの中で施設での抗精神病薬投与の話が少し出ました。訪問診療をやっていて、時々家族が、デイやショートで利用している施設の方から抗精神病薬の内服を医師と相談するようすすめられ、家族から相談されることがあります。また、嘱託医を行っている施設の患者さんでも、入所時や経過中に抗精神病薬の処方が行われることがあります。抗精神病薬の関しては、メリットもあればデメリットもあると思うので、そのあたりの知識を整理しておくことは重要なことですし、他の職種にも説明できるようにしておくことも必要かなと思います。とはいっても、現場では、知識とは別の次元で行動することも時には必要とは思いますが・・・。
 ということで、少し施設での抗精神病薬投与についてまとめてみたいと思います。

★抗精神病薬投与の害について
・FDAは2008年に、高齢認知症患者への定型•非定型の抗精神病薬投与は、死亡率を増加させることを勧告。
・Nursing Home(NH)において、抗精神病薬の投与は骨折の発生と関連
 (Rigkerら,J Am Geriatr Soc 2013)
★抗精神病薬を中止することのデメリット
 NH患者に限定した研究ではないが、抗精神病薬の中止により症状(NPI score)は悪化しない(コクラン2013)
★抗精神病薬を減量•中止することは可能か?
 心理社会的介入により、ホームの患者の抗精神病薬を減量することが可能(コクラン2012)
★実際にはどれくらい使用されているのか?
 EU8ヵ国を対象とした研究で、NH患者の3割以上が抗精神病薬内服(Foebelら,J Am Med Dir Assoc  2014)
★投与する場合の薬剤選択は?
・NH患者で、第1世代の抗精神病薬の方が180日以内の死亡率高い:リスペリドンと比較してハロペリドール有意に高く(HR2.07)、クエシアピン有意に低い(HR0.81)。 (Huybrechtsら,BMJ 2012)
・NH患者で、第1世代の方が開始20日以内の入院率高い。(Aparusら,Psychiatr Serv 2014)
・NH患者で、第1世代の抗精神病薬の方が、180日以内の感染症・MI・大腿骨頸部骨折の入院率を上げ、脳血管障害は下げる。
非定型の中では、リスペリドンと比較して、オランザピンとクエチアピンは脳血管障害の入院少なく、クエチアピンは感染症の入院少なく、大腿骨頸部骨折の入院は増える。
ドーズと入院との関連あり。  ( Huybrechtsら, J Am Geriatr Soc 2012)
★ちなみに、抗痙攣薬に関しては、BPSDに対してカルバマゼピンは有効だが、バルプロ酸は有効でない(YehらのSyS Rev)

上記を考えると、やはり抗精神病薬の投与はできるだけ最小限としたいですし、使うときも量などは少な目からにしたいなと再認識しました。また、種類でいうと、デメリットを考えると、やはり第1世代は第1選択としては避けたほうがよいのでしょうね(効果という面でどうかは違った検証が必要と思いますが)。


ちなみに、日本では・・・
最近、JーCATIA;1万人以上のアルツハイマー型型認知症を対象とした前向きコホートの結果が出たようです。ちょっと前に調べた時点ではまだ論文化はされていないようでした。(されていたらごめんなさい)それでは、「24週までの死亡率で抗精神病薬内服による有意な死亡率上昇なし」との結論でした。中身みないとわかりませんが、FDAの勧告が出てからそれなりに時間がたっているし、本当に必要な人に少量ずつ使うようになっているといったこともあるのでしょうか・・? 論文となったら、よく確認してみたいと思います。


自分たちが嘱託医をしている2つの施設では、約8%程度が抗精神病薬の内服をうけていました。EUのデータと比べるとだいぶ少ないのでちょっとほっとしましたが、引き続き非薬物的なアプローチでどうにかならないか施設のスタッフとともに今後も模索していきたいと思います。



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