○発生主義と現金主義
発生主義とは、現金の収入や支出に関係なく、収益や費用の事実が発生した時点で計上する原則
現金主義とは、収益と費用を現金の受け渡しの時点で認識する会計原則
現行の地方自治法による一般会計及び特別会計(ただし、公営企業会計を除く)の会計処理は、単式簿記・現金主義会計という方式で行われています。
一方、民間企業会計においては、複式簿記・発生主義での会計処理が行われております。
官庁会計では、現金の移動は記録されますが、会計処理において、現金以外の資産(道路・建物等)や負債の情報が蓄積されません。
官庁会計では、統一的な基準に基づいて資産を一覧できる仕組みがありません。
また、官庁会計は現金主義で、現金の移動しか記録しないため、減価償却費や引当金等の非現金情報が計上されず、
それぞれの事業(行政サービス)に要した正確なコストが把握できないという問題点を抱えています。
それを克服する為に、総務省は平成18年度に「新地方公会計制度研究会」を5回開催し、報告書を公表して
地方公共団体において「貸借対照表」「行政コスト計算書」「資金収支計算書」「純資産変動計算書」の
財務諸表4表を公表することを後になって要請しています。
これに従って、大田市では「平成21年度決算」において、「普通会計財務書類4表」を作成し、公表しています。
「普通会計財務書類4表」http://www.city.ohda.lg.jp/files/20110421125158.pdf
しかしながら、簿記方式、発生主義会計は全国の地方公共団体において解決に至っていません。
これに今、挑んでいるのが東京都と大阪府で、独自に開発した会計制度に基づき、複式簿記・発生主義の観点から
「貸借対照表」「行政コスト計算書」「キャッシュ・フロー計算書」「正味財産変動計算書」等を作成しています。
大田市のような地方公共団体がこのような財務諸表を作成することは、総務省の相当の指導と資金的援助がないと
なしえないと思いますが、市民に的確でわかりやすい財務状況を提示することは、行政の義務であり、
少しでも前進して欲しいと思います。