三月!!早過ぎる!
金曜の午後は吹雪いた。1-2月は殆ど春の様子だったのに、ここへ来て雪が降り始めた。
どんな天候だろうが一日の終わりには必ず温泉に行く夫が、「今日は止める」というからよほどの事だ。
翌日は快晴。抜けるような青空に鳥が歌い、木々がゆれ、夜中にうっすら降った雪が一面を真っ白に覆う。
あまりにも美しい雪景色を独り占めできず、二階の窓を全開にして雪景色など見飽きている新潟の妹にビデオ電話をかける。
「見てよ見てよ!!」
ちょうど出先から戻り、さてさてゆっくりするか、、というときにうっかり電話に出てしまい長々と雪景色を見せられる妹。
雪景色などに関心のない妹だったが、我慢強く姉のテンションに付き合ってくれた。すまないね。
ついでにソファーで眠っている猫のマルにカメラを向けると、妹は子どものようにはしゃいだ。猫好きだった。忘れてた。
その妹に、「ねえ、私の生まれた時間、何時だったっけ?この間母さんに聞いてくれたよね」「えー!?忘れた」
そうさね、、、本人が忘れているんだもの、、、実家の弟のヨメさんにメールして母に聞いて欲しいと頼むと早速返事が来た。
90歳。耳も遠くなり電話で話すのは億劫な母が直接話したいと言っているという。(へえー、喋りたいんだ。。。)
「あ、ひわかい、お前は午前4時に生まれた。みんな元気か?あ、そうかい。じゃあね。」と一方的に話して切れた。
普段トイレと食事以外は自室のベットで過ごし、たいがいのことを「忘れた」という母が電話口に出た。
質問に的確に答えてじゃあね、って。昔なら聞いたことに詮索が入って説教されたりするのがオチでうんざりだったが、、
90年生きて余計なことから解放されたのかも知れない、と今までの母を素直にねぎらう気持ちになった。
気力体力衰え記憶を辿る事も面倒だろう母が「お前は午前4時に生まれた」と 時告げ鶏のような力強い声を発した。
その声の奥に愛と喜びが響き渡っているのを感じた。たまたま体調や気分が良かったのだろう。。と最初は思った。
一日経って、母は自分の肉体からもう一つの命を初めて生み出した時間にワープしたのだ!と確信して愉快になる。
肉体動かなければ死んだ方がまし。。と思っていたが、本質生命である魂は時間軸縦横無尽に駆け回るんだ。。。
目に見えない世界が母によって証明されたような気がしてわくわくしてきた。
私65ですら二人の子の生まれた時間を正確に覚えてはいない。やはり母90は柱時計の前にワープしたのだと思う。それとも、、