細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●『山』の頂上付近に遭難した、旅客機の生存者を救助しに向かう、不仲の兄弟。

2021年03月29日 | Weblog
●3月28日(日)21-30 ニコタマ・サンセット傑作座
OV-77-39『山』"The Mountain" (1956) Paramount Pictures Corporations. All Rights Reserved.
製作・監督・エドワード・ドミドリク 主演・スペンサー・トレイシー、ロバート・ワグナー <ビスタビジョン・105分> CIC/ビクター・VHSテープ
たしか、1957年か、今も築地にある松竹映画の本社ビルの1階に出来た、<松竹セントラル劇場>のオープン記念に上映された、おめでたい作品だ。
名優スペンサー・トレイシーは、「招かれざる客」や「花嫁の父」などの、老父役でもまだまだ活躍していた時代で、この作品でもマッターホルン登りに挑戦している。
老齢のスペンサーは、すでに引退していたスイスの登山ガイドで、山麓のロッジに住み、弟のワグナーは遊び盛りの不良青年で、ふたりは父と息子のような年齢差の関係。
ところがインド航空のジェット旅客機が、悪天候でスイス・アルプスの山頂付近に墜落して、気温の低さと急勾配の岩山には、救助隊のスタッフも登れない惨状。
救助要請の緊急入電もなく、墜落した旅客機のパイロットなど登乗者や、多くの乗客全員が零下の悪天候で死亡だろうと報道されて、関係者も尻込みしていたが・・。
それで捜査隊も好天の時期を待とうというニュースが報じられたが、どん欲なワグナーは遭難者の貴金属などを収得しようと、山頂への登山を企てて勝手に出発。
兄のスペンサーは、そのムチャな登山には反対だったが、たったひとりの弟が登り出したので、放ってはおけないので、ヤムヤムその登山に同行することにしたのだ。
スイス側の岸壁は、ほぼ直角な岩肌で、あの西部劇でよく見たグランドキャニオンの岸壁の、その巨大な高山であり、そのシーズンは雪もあって誰も登らない。
ロック・クライミングには、優秀な登山家にしか出来ないテクニックと体力があるが、プレイボーイのワグナーには、その技術もなく、兄スペンサーが先導するしかない。
当時は、ハリウッドは<ワイドスクリーン戦争>が激化していて、フォックス、ワーナー、MGMなどはシネマスコープ起用だったが、パラマウント社は画質の鮮明度を追求。
そこでフィルムを2コマ分、水兵に回転させる<ビスタビジョン>を開発したメンツもあり、重いカメラをアルプスの岸壁に運び込み、決死の撮影をしたのだ。
というワケで、スタジオではない、実際のスイス・アルプスの岸壁の鋭い美しさは撮影できたが、兄弟ドラマは「エデンの東」には及ばない出来だったが・・・。

■左中間への大飛球でフェンス直撃だが、鈍足ランナーで、ツーベース。 ★★★☆+
●CICビクタービデオ・VHS
●3月28日(日)21-30 ニコタマ・サンセット傑作座
OV-77-39『山』"The Mountain" (1956) Paramount Pictures Corporations. All Rights Reserved.
製作・監督・エドワード・ドミドリク 主演・スペンサー・トレイシー、ロバート・ワグナー <ビスタビジョン・105分> CIC/ビクター・VHSテープ
たしか、1957年か、今も築地にある松竹映画の本社ビルの1階に出来た、<松竹セントラル劇場>のオープン記念に上映された、おめでたい作品だ。
名優スペンサー・トレイシーは、「招かれざる客」や「花嫁の父」などの、老父役でもまだまだ活躍していた時代で、この作品でもマッターホルン登りに挑戦している。
老齢のスペンサーは、すでに引退していたスイスの登山ガイドで、山麓のロッジに住み、弟のワグナーは遊び盛りの不良青年で、ふたりは父と息子のような年齢差の関係。
ところがインド航空のジェット旅客機が、悪天候でスイス・アルプスの山頂付近に墜落して、気温の低さと急勾配の岩山には、救助隊のスタッフも登れない惨状。
救助要請の緊急入電もなく、墜落した旅客機のパイロットなど登乗者や、多くの乗客全員が零下の悪天候で死亡だろうと報道されて、関係者も尻込みしていたが・・。
それで捜査隊も好天の時期を待とうというニュースが報じられたが、どん欲なワグナーは遭難者の貴金属などを収得しようと、山頂への登山を企てて勝手に出発。
兄のスペンサーは、そのムチャな登山には反対だったが、たったひとりの弟が登り出したので、放ってはおけないので、ヤムヤムその登山に同行することにしたのだ。
スイス側の岸壁は、ほぼ直角な岩肌で、あの西部劇でよく見たグランドキャニオンの岸壁の、その巨大な高山であり、そのシーズンは雪もあって誰も登らない。
ロック・クライミングには、優秀な登山家にしか出来ないテクニックと体力があるが、プレイボーイのワグナーには、その技術もなく、兄スペンサーが先導するしかない。
当時は、ハリウッドは<ワイドスクリーン戦争>が激化していて、フォックス、ワーナー、MGMなどはシネマスコープ起用だったが、パラマウント社は画質の鮮明度を追求。
そこでフィルムを2コマ分、水兵に回転させる<ビスタビジョン>を開発したメンツもあり、重いカメラをアルプスの岸壁に運び込み、決死の撮影をしたのだ。
というワケで、スタジオではない、実際のスイス・アルプスの岸壁の鋭い美しさは撮影できたが、兄弟ドラマは「エデンの東」には及ばない出来だったが・・・。

■左中間への大飛球でフェンス直撃だが、鈍足ランナーで、ツーベース。 ★★★☆+
●CICビクタービデオ・VHS

●『ボギーの顔をした男』の、マジなそっくり探偵の活躍には仰天。

2021年03月27日 | Weblog
●3月26日(金)21-30 <ニコタマ・サンセット傑作座>
0V-71-37『ボギーの顔を持った男』"The Man with Bogart's Face" (1980) Simon Film Production, CBS FOX Productions, Key Video
監督・ロバート・デイ 主演・ロバート・サッチ、フランコ・ネロ、ミッシェル・フィリップス <カラー・VHS・111分>
ハリウッド、ハイランドのビデオ店で買って来たVHSビデオテープで、最近、VHSのハードを新調したので見てみたが、これがなかなか面白い。
冒頭に、男が手術台で顔中に白い包帯を、まるで死人のように撒いていたが、ドクターが入念に巻き取り、手鏡でチェックして、患者も覗き込む。
それが、あのハンフリー・ボガートのそっくりさんで、これだけ似ているのなら、もっと「カサブランカ」や「裸足の伯爵夫人」もリメイクしてほしい。
あのトレンチ・コートを羽織り、ソフト帽を被ると、まったくボガートで、自分の探偵事務所に帰る階段をすれ違った人は、みんな立ち止まって硬直してしまう。
ハリウッド大通りのワックス・ミュージアムには、いまでも、このボギーのそっくりな像が展示されているが、それが探偵映画に出演しているから面白い。
自分の「サム・マーロウ探偵事務所」に入り、薄暗いヴェネシアン・ブラインドを上げると、そこは「マルタの鷹」のセットと同じインテリアだが、これはカラー作品。
壁には「ローラ殺人事件」のローラだった、あのジーン・ティアニーの肖像画が飾ってあり、秘書の女性は「ノックは無用」のマリリン・モンローそっくりさん。
という、まさにハリウッド50年代の、人気スターのオンパレードで、当時の彼らを知らないひとには無関係な、いかにもハリウッド全盛時代の再現映画なのだ。
さすがに、これだけボギーに似ている人は世界にもいないだろうが、声も仕草も似せていて、しかも失踪人探しで夜の街で悪党を相手に銃撃戦まで展開する。
一種のお遊び映画なのだが、コメディではなくて、ちゃんとしたレイモンド・チャンドラー風のディテクティブ・アクションに仕上がっているから立派なものだ。
こうゆうお遊びが、マジに作れるのが、さすがはハリウッドであって、わが東映映画がもし高倉健さんのそっくりさんで任侠映画を作れないのは、国民感情の差なのか。

■セカンド・オーバーのヒットを、ライトがトンネルのツーベース。 ★★★☆☆☆
●フォックス映画、キービデオの輸入版VHSテープ

●『ミナリ』で奮闘する、アメリカ移住家族もまた、パラサイト状態か。

2021年03月24日 | Weblog
●3月23日(火)11-00a.m.  109シネマ二子玉川・4スクリーン
M-007『ミナリ』"MINARI" (2020) A24 Distribution LLC. presents a BLAN B , GAGA <シネマスコープ・116分>
監督・脚本・リー・アイザック・チョン 主演・スチィーヴン・ユアン、ハン・イエリ、ユン・ヨジョン
あの「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」や「マリアンヌ」の人気役者ブラッド・ピットのプロダクション<プラン・B>の新作。
もちろん、ブラピは出ていないが、プロデューサーとしては、既に92の映画祭でノミネートされて、31の受賞を果たしている、という話題のアメリカ映画だ。
1980年代。韓国系の移民家族の一家は、農作業の若い父親とワイフに、まだ5、6歳の息子と、その年上の姉との4人家族だったが、そこに老母が加わった。
というのも、当初は4人家族での移民で、アーカンソー州の高原開拓地に、農夫として移民したのだったが、生活のメドがついて、老いた母を呼んだのだが。
それがこのドラマの争点となるのが、移民家族の宿命なのか、平穏だった筈のファミリーが、わがままな老婆によって思わぬ家内トラブルを連発していくのだ。
あの名作「シェーン」の時代から、アメリカ中西部への移民家族を描いた作品は多く、ゲイリー・クーパー主演の「友情ある説得」は名作として印象深い。
個人的には、ロバート・ミッチャムと、デボラ・カーが主演した、まったく銃撃のアクションもない移住ウェスターン、1960年の「サンダウナーズ」が好きだった。
しかし厳しい自然環境よりも、農耕地としての土壌ではない荒野だった平地は、ハリケーンや砂嵐やらに干ばつもあって、もともとはインディアンも移住した不毛地帯。
それでも気丈な家族は、農作業の重労働で、地元の先住農民たちにも認められる収穫を見せて、古参の彼らたちにも信用されるような百姓家族になっていた。
ところが、家族に加わった老婆は、持ち前の勝手な気丈に加えて、老齢による<ボケ症状>も出て来て、いろいろと家族生活の支障になってくる・・・という展開。
これはどこのファミリーでも起こりうるトラブルで、夫婦喧嘩よりも先の心配が日々増えて行く・・・という、これはどこの家族にも起こりうる宿命でもあろうか。
とうとう家族のゴタゴタで納屋からの出火で大火事になるのが、この作品のクライマックスになるのだが、さて、アカデミー賞では、どの評価をするのか。・・・・?

■左中間へのゴロがセカンドへの返球で、タッチでの角度で写真判定。 ★★★☆☆?
●109シネマなど、全国で公開中。

●『海辺の家族たち』の清楚な生活にも、変化の<波>が寄せて来る。

2021年03月22日 | Weblog
★3月21日(日)21-30 ニコタマ・サンセット傑作座<試写用DVDでの鑑賞>
M-006『海辺の家族たち』"La Villa"(The House by the Sea) 2016`@Agent Films & CIE-France 3 Cinema<107分・ビスタサイズ>
監督・脚本・ロベール・ゲディギャン 主演・アリアンヌ・アスカリッド、ジャン=ピエール・ダルッサン 
地中海の南西海辺の家族の生活を見て、ふと、1990年のベルトラン・タベルニエ監督で、ダーク・ボガートが主演した「ダディ・ノスタルジー」を思い出してしまった。
あれは、たしか、末期ガンで死期の近い老父の最期を、海岸のビーチハウスで過ごす娘や、その家族の<日記>のような日々を描いた佳作だったが・・。
こちらは監督自身の生まれ育ったという、フランスの南西端の漁港マルセイユ近郊、地中海の入口で,アフリカとは向き合った港だが、町を離れると、保養別荘地のような佇まい。
父の急病で、パリにいた女優のアリアンヌは、生まれ故郷のメジャンの入り江にある古い実家に帰って来て、老いて死期の近い容態を案じて、数日を過ごすことにした。
このコロナ下のご時世ではないが、とかく不自由で仕事は激減して都会にも活気のない昨今、やはり生まれ育った故郷の潮風は、疲れた心も癒してくれるようだ。
しかし、ある朝に、老いた父はベッドで寝たきりで亡くなり、家族を育てて生き抜いた老母も、その隣で、いつものように並んで、静かに亡くなっていた。
変わりない地中海の波は永遠だが、この家族には、幸福のような日々にも、過去の諍いやトラブルも波に流すように、今日も音もなく現実の変化が訪れていた。
まったく変哲もないような海岸の生活にも、こうしてドラマが訪れて来ている日常を、監督は彼自身の過去の成長を思い出すように、淡々と描いていく風景画のようだ。
ある日のこと、海岸近くのヤブのなかに、漂着して空腹な3人の子供たちを見つけ出したアリアンヌは、自宅につれて帰り、手元の食事を彼らに与えた。
久しぶりに、空腹な、小さな野犬のように粗食に食らいつく姿を見て、これもまた、このアフリカの対岸の港町の日常的な風景なのだ、と、感動させられてしまう。
われわれ島国のジャパニーズには、あまりご縁のない出会いなのだが、フランス南岸の港町には、こうしたドラマも、日常的にあるのだ・・と。

■ゴロでセカンドのグラブを弾いたシングル・ヒット。 ★★★☆*
●5月14日より、キノシネマ他で、ロードショー公開

●『追憶』の懐かしさは、M・ハムリッシュの、あの名曲で、鮮明に甦る。

2021年03月21日 | Weblog
●3月20日(土)21-40 <ニコタマ・サンセット傑作座>
OV-072『追憶』"The Way We Are"(1973) Columbia Picture, Raster Productions,  <シネマスコープ・サイズ・118分>
原作・脚本・アーサー・ローレンツ 監督・シドニー・ポラック 主演・バーブラ・ストライサンド、ロバート・レッドフォード 
初めてのロードショー公開当時は大ヒットで、日比谷スカラ座の外階段にまで長蛇の列が出来ていて、わたしは新橋の兼坂ビルの試写室で見ていたが、
うちの家内が見たい、というので、まだヨチヨチ歩きの長男を連れて日比谷公園に行き,1回目の上映の終わる2時頃まで、噴水の回りを廻って待っていた。
まだパソコンも、当然のようにケータイのような、電子機器もないアナログ時代だったので、とにかく小春日和の公園で待つしかなかった・・・という記憶がある。
バーブラが製作した映画なので、これは女性目線の感覚で作られたラブストーリーで、人気のあったレッドフォードは、あくまで女性から見た<身勝手なハンサム>。
とはいえ、「華麗なるギャッツビー」のイメージも前後していて、ハンサムなレッドフォード人気は凄くて、バーブラは主題歌を唄って、かなり稼いだ作品だ。
ボストンの大学時代から、スポーツ万能で「オール・アメリカン・スマイル」という試作小説も書けるレッドフォードは、バーブラと恋してしまう。
結婚して卒業後は、ハリウッドのスタジオにスカウトされて、マリブ・ビーチの個建てハウスで新作映画のシナリオを執筆するシナリオ・ライター。
主婦のバーブラは、大学時代からの反ブルジョア思想の運動家の活動を続けていて、とうとう二人の女児を持ったが、離婚してしまい、大陸の東西で別の生活となる。
数年後、ラストのマンハッタン、セントラルパーク横の、あの有名なプラザホテルの前で、偶然にプロテスト署名運動をしていたバーブラと再婚の彼が再会するのが圧巻だ。
「まだ、懲りずに、ネバー・ギブアップ・ドゥー・ユー?」というレッドフォードの前髪を手で直す、バーブラの顔に、あのテーマ曲が被って来て・・・ああ、涙。
やはり、マーヴィン・ハムリッシュ作曲の主題曲が最高で、バーブラの唄もいいのだが、メロドラマのパターンを忠実に再現した感覚は、いまでも泣ける。
あれ以来、何度、プラザホテルの前に行ったか・・・、とにかく、あの名曲が必ず脳裏に甦って来るのだから、お向かいのティファニーの「ムーンリバー」といい勝負。

■レフトオーバーのフェンス直撃のツーベース。 ★★★★☆
●コロムビア映画、ソニーピクチャーズDVDでの鑑賞

●『ロング・グッドバイ』で、事件の真犯人は、オレがケジメをつける!

2021年03月18日 | Weblog
●3月17日(水)21-40 ニコタマ・サンセット傑作座
OV-70『ロング・グッドバイ』(1973)ユナイテッド・アーティスト、MGM-UA・1973作品
監督・ロバート・アルトマン 主演・エリオット・グールド、スターリング・ヘイドン <シネスコサイズ・112分>DVD鑑賞
これもまた、レイモンド・チャンドラー原作の探偵フィリップ・マーロウの活躍を描いた作品だが、本格ロバート・ミッチャムのイメージとは激変。
ま、チャンドラーのストーリーを、70年代流行のギミック解釈をした、という、あの「マッシュ」の監督、主演コンビなのだから、皮肉なコミック色も強い異色作。
1973年当時、新橋の試写室で見たときは、偶然、隣の席に渥美清サンがいて、終わった途端に「変なマーロウだねーー」と苦笑していたのを思い出した。
たしかに、過去にディック・パウエルや、ロバート・ミッチャムが演じた探偵マーロウは寡黙で、トレンチコートにソフト帽を被った夜の大都会の裏道が似合っていたものだが。
ロスでもサンタモニカの丘陵にある高層アパートに、猫を飼っていたマーロウ探偵は、夜中の3時に猫の空腹で起こされて、近くのコンビニにキャットフードを買いに出る。
そこに旧友テリーが尋ねて来て、カミサンとのトラブルで、車で3時間くらいのメキシコ国境のティワナまで送ってくれないか、というので、ヒマなマーロウはドライブした。
ところが、自宅に戻ると、テレビではそのテリーのカミサンが惨殺されていて、警官がやってきて需要参考人として警察に連行されて、執拗に尋問されてしまったのだ。
しかし、その後に、テリーが自殺した、という報道があって、マーロウは釈放されるのだが、どうも事件の裏にはカラクリがあるようで、名探偵は独自捜査を始める。
一方では、老練小説家の失踪捜査事件を捜査依頼があって、その事件を探って行くうちに、テリーの失踪が関係ありそうだ・・・と、マーロウは単身メキシコに行く。
案の上、遺跡都市メリダの奥地の隠れ家を探り当てたマーロウは、寂れた山荘の庭でハンモックで昼寝していた友人を発見して、そのまま無言で射殺してしまう。
複雑な人間関係と、犯罪都市ロス郊外の空気が、原作よりも70年代に変えられた分、探偵マーロウの常時タバコを離せない悪癖と似て、クレイジーな探偵戯画だ。

■ショート・ゴロをトンネルしたあと、レフトもお手玉のツーベース。 ★★★☆*
●20世紀フォックス・エンターテイメントDVD

●『転落してきた女』での、老マーロウ探偵の風格と推理。

2021年03月15日 | Weblog
●3月15日(月)18-30 ニコタマ・サンセット傑作座
OV-67-36『転落してきた女』"One Shue Makes It Murder" (1989) Rolimer Productions, 
製作・ジョン・ファーラー 監督・ウィリアム・へイル 主演・ロバート・ミッチャム、アンジー・ディキンスン<92分・ビスタサイズ・VHSテープ>
あのオードリー・ヘプバーンとメル・ファーラーの息子のジョンが、父と共にプロデューサーとなって製作した、テレビ映画の珍品ミステリー。
当然のように、メル・ファーラーが出演していて、探偵をリタイアしていた旧友のフィリップ・マーロウを、保養地レイク・タホの別荘に呼びつけたのだ。
依頼要件というのが、別荘の所有者で富豪のメルの愛妻が失踪していて、事件性はないが、どこに消えたか,5万ドル報酬で探してくれ・・・という。
さっそく古巣のロスに戻り、ビバリーヒルズの高層アパート最上階にいた失踪妻を発見して、メルに下の公衆電話から連絡していたら、ビルの上から女性が降って来た。
転落死したのは、その数分前に話ししていたメルのワイフで、墜死した片足のハイヒールは脱げていて、現場には見当たらない。
市警の刑事と、また最上階に戻ると、ベランダに、そのハイヒールの片方が落ちていたので、これは自殺ではなく、殺人事件だ、とマーロウは断言したのだ。
もし、自殺なら、両方のハイヒールを脱ぐが、片方だけベランダに残っているのは「殺人事件だろう・・」と、マーロウは不審な刑事に諭し、メルにも通報した。
という導入で、さっそく失踪事件ではなくて、マーロウお得意の殺人事件として捜査することになったのだ。
地下の駐車場には、彼女の白いロールスのオープンカーがあり、駐車係をメルの電話で代わってもらい、またも老探偵はレイク・タホの主人のメルの別荘に戻る。
ジェームズ・カーンがマーロウ探偵を演じた「プードルスプリング」も、どうも陽光燦々の美しい保養地が背景では、あのダークな夜のビル裏道のマーロウ探偵の気分が出ない。
とはいえ、あの「さらば愛しき女よ」で、当たり役のロバート・ミッチャムが探偵マーロウを演じているのだから、・・あのドスの効いた、ミッチャムの声。
風光明媚なタホ湖で、トレンチコートなしのマーロウでも、文句を言ったらバチが当たる・・という、貴重な珍品、でもある。

■さすがは老練の左中間へのゴロで抜けるツーベース。 ★★★☆☆☆
●もしかしたら、VHSで見つかる・・かも。

●『ドリームランド』で見るユメは、悪夢への道か・・。

2021年03月15日 | Weblog
●3月14日(日)15-30 ニコタマ・サンセット傑作座<試写用・サンプルDVDによる鑑賞>
M-004『ドリームランド』“Dreamland"(2019) Romulus Entertainment, Titan Worldwide Entertainment, 
監督・マイルズ・ジョリス=ペイラフィット 主演・マーゴット・ロビー、フィン・コール <101分・シネマスコープサイズ>
1930年代の、世界大戦の狭間の不況時代のテキサス州は、まだ開拓時代の硝煙の残る西部開拓地で、多くのアメリカ移民者には未開拓の<ドリームランド>。
とウワサされた新天地だが、そこはまさに<ディズニーランド>のような楽園ではなくて、荒野の砂埃の舞うサボテンとガラガラヘビと無法者たちの不毛の荒野。
あの名作「友情ある説得」のように、開拓者たちの住む農家には、隣接して農作業の用具の板小屋があり、同時に牛や羊などの家畜を飼っておく納屋もあった。 
父親との折り合いのよくない17歳のフィル青年は、その未開拓地を出て、あのブッチ・キャシディとサンダンス・キッドのように、メキシコへ移住したい夢があったのだ。
彼は、ある夜、納屋に隠れていた大けがをしている若い女性マーゴットと会ったが、彼女が銀行強盗逃亡犯であることは、町のウワサで察知していたが、介抱する。
孤独と家族への不満を持った若いフィルは、日夜、マーゴットの世話をしているうちに、彼女と共にメキシコへの脱出を<共犯者>として決行することを心に誓う。
つまり、犯罪者を共謀して逃がす<犯罪者>になるが、そこには、青春の恋ごころもあり、あのマックイーンの傑作「ゲッタウェイ」のように、新天地への夢に賭けるのだ。
しかし、犯罪者たちのメキシコへの逃亡は、ヘンリー・フォンダの「逃亡者」から、レッドフォードの「明日に向かって走れ」など、多くの傑作があるが、甘くはない。
そのテーマの作品を数え上げたら、10本では下らないだろうが、当然のように、映画での越境の成功例というのは、まさに「ドリームランド」への夢のまた夢なのだ。
いや・・、でも成功したのは「ロンググッドバイ」のワルだったが、ラストではメキシコの逃亡先の隠れ家で、名探偵フィリップ・マーロウに射殺されてしまった。
やはり、メキシコへの脱出は、夢の、またユメ、つまりは「ドリームランド」なのだ。

●4月9日(金)より、新宿武蔵野館ほかで、全国ロードショー

●『アウトブレイク』は、猛毒新雑菌による大感染パニックの予言作でしたが・・。

2021年03月13日 | Weblog
●3月12日(金)21-30 ニコタマ・サンセット傑作座
0V-66『アウトブレイク』"Outbreak" (1995) Warner Brothers, Arnold Kopelson Studio, Punch Productions. <129分・ビスタサイズ>
製作・監督・ウォルフガング・ペーターゼン 主演・ダスティン・ホフマン、レネ・ロッソ、モーガン・フリーマン 
1年程前に、ちょうどコロナ騒動が、あの豪華客船から発症した頃に,ハリウッドに住む旧友でキャスティングのジェーン・ジェンキンスからメールがあった。
どうやら<プリンセス号の発症は世界的にアウトブレイクになりそうなので、お互いに感染には注意しましょうね・・>といった内容だった。
俳優で監督になったロン・ハワードとご近所で、親友の彼女は、女優時代からキャスティングの仕事をしていて、多くの作品に関わっていて、わたしは自宅にも行ったものだ。
この95年の作品も、彼女がキャスティングしていて、DVDでは持っていたが、その後は見ていなかった<感染パニック映画>で、こうして久しぶりに見た。
アフリカ中部のモタバ河の流域で発症した、原因不明の出血致死の集団感染の原因菌の調査に、アメリカ陸軍感染症調査員のダスティンが派遣されて調査する。
どうやら珍種のサルが猛毒菌の媒介らしいが、村の住民がすべて大量出血で、数日で感染死するという、その媒介を調査していたが、アメリカにも感染。
そのサルをペット用に、貨物船で密輸販売していた悪徳グループが、秘かに売った猿が逃げて、とうとうカリフォルニア山岳地帯の小さな街にも感染者が大量に続出したのだ。
あの、ジョン・スタージェス監督の「サタンバグ」という傑作は、それよりも以前の80年代に出た傑作パニック映画だったが、こちらはその調査研究班が奔走する。
とにかく、そのペット用のサルは捕獲したものの、媒介した悪性のバイ菌は猛威をふるい死者のベッドで、病院の廊下も通行困難になるほどで、パニック増大。
という、つまりは細菌感染による、当時、80-90年代に流行した<パニック映画>で、まさか、今頃になって、またDVDで見るなんて・・困ったご時世だ。

■ショート頭上のフライがレフト前でイレギュラー、野手を翻弄。
●ワーナーホームビデオのDVDで鑑賞。

●大友啓史監督の『影裏』で、松田龍平は、10年前の三陸大津波で太平洋に消えた。

2021年03月10日 | Weblog
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●『ガルボ・トーク』は、映画ファンの<見果てぬ夢>の、実現への美談。
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●『影裏』で見え隠れする親友の影と、その裏。

Weblog / 2019年12月28日

●12月19日(木)13-00 市ヶ谷<六番町View Box試写室>
M-103『影裏(えいり)』(2019)<テレビ岩手・開局50周年記念<影裏>製作委員会>、OFFICE,Plus, ソニー・ミュージック、
監督・大友啓史 主演・綾野 剛、松田龍平 <ビスタサイズ・136分> 配給・アニプレックス、アニープラネット
原作は沼田真佑で、この作品で第122回文学新人賞を受賞、芥川賞までもダブル受賞で、製作はテレビ岩手となると、盛岡市出身の拙者としては必見の新作。
それで、めったに行かない市ヶ谷の六番町試写室を、駅前交番で確認してから、実に久しぶりの試写室だった記憶が甦った、という不思議な気分での試写だ。
このタイトルもミステリーにしては異様だが、その真実は<影>の、そのまた<裏>に潜んでいる、ということらしいが、とにかく盛岡ロケとしては見逃せない。
運送会社で、はじめて盛岡に赴任した青年の綾野剛は、<佇む>という気持ちを意識して、この単身赴任して盛岡で単身アパート生活しているというが、相変わらず寡黙な青年だ。
気ままなワンルーム生活に、ふと会社同僚の松田龍平が現れて、同世代で盛岡には不慣れな綾野にいろいろと話しかけては街に出て酒を飲みかわしたり、の、交遊が続く。
釣りが好きだった綾野は、盛岡や近郊の渓流の釣り場などを知っている松田の誘いで、夜の街には酒を飲みに出かけて友情は濃くなりつつあったが、彼は突然に行方不明退職。
盛岡市出身のわたしとしては、同じ盛岡一高の後輩にあたる大友監督の作品には、当然のように好意的に見ていて、あの「るろうに剣心」や「3月のライオン」も見た。
その彼が、盛岡市を舞台にしてミステリー映画を撮るというのは、大いに楽しみと期待が強かった訳で、普通の作品以上に市ヶ谷の試写室にワクワクと駆け込んだ。
『るろうに剣心』シリーズや『新宿スワン』から、最近の『楽園』でも、ちょっと翳りのある青年を演じて、いまの邦画界ではトップの実力を誇る綾野剛の主演作品。
しかも舞台が盛岡では、恐らく試写室の中でも、もっとも期待の高い存在だったろうが、とくに夜の桜山神社付近の繁華街のシーンでは、思わず郷愁がこみ上げる。
多くのミステリー作品が、明快な回答を見せないように、ここでも消えた友人の松田が、退職後に釜石にいて、あの三陸大津波に遭遇したであろう憶測で行方不明。
その見えない青春の謎を背中にして、綾野剛が中津川の中の橋東土手を、上流に向かって歩く、その背中を追って行くカメラの、あの2度の長まわしが、感動した。
 
■レフトを抜けた長打がフェンス転々のスリーベース。 ★★★★☆☆
●2月14日、バレンタインデー全国公開。


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