細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

6月の試写ベスト・3

2005年06月29日 | Weblog
6月29日(水)今月の試写ベスト・3
●「シンデレラマン」Cinderella Man (2005)米
監督・ロン・ハワード 主演・ラッセル・クロウ ★★★★☆☆
実話のボクシング・ヒーローの映画化で、不況の30年代に不屈のリターン・マッチというアメリカン・ドリームは「シービスケット」の感動を思い出した。古いけど懐かしい、あの逆転のサクセス・ストーリーだが、文句なしだ。

●「宇宙戦争」War of the Worlds (2005)米
監督・スティーブン・スピルバーグ 主演・トム・クルーズ ★★★★☆
H.G.ウェルズの原作の通りに、最新の映像テクニックで再現したスピルバーグのストレートな映画魂には拍手。「インデペンデンス・デイ」よりは、とにかく映画的なインテリジェンスを感じた。

●「バットマン・ビギンズ」Batman Bigins (2005)米
監督・クリストファー・ノーラン 主演・クリスチャン・ベール ★★★★
バットマンの少年時代に受けたトラウマを、悪のパワーとして知的エンターテイメントとして描ききったノーラン監督のクリエイティブな根性には敬服する。娯楽映画を越えたダーク・ムービーの傑作だ。

◎今月のワースト作品 「愛についてのキンゼイ・リポート」Kinsey (2004) 米
監督・ビル・コンドン 主演・リーアム・ニースン ★★☆
60年代にセックス・リポートを発表したキンゼイのことは、もう今のひとには判らないだろう。だから、どうして、今この映画を作る必要があったのか? 最後までさっぱり判らない映画だった。

★明日から、例年恒例のメジャー・リーグ観戦ツアーに出かけます。
シアトルでイチローを3夜応援して、サンフランシスコで「巨人戦」を見てから、ニューヨークに飛んで、7月10日のヤンキース戦を見て、松井を応援する予定です。
もちろん、ブラピの新作「Mr. and Mrs, Smith」も見て来ますが、このブログは7月14日までは夏休みになります。
しばらく、ご免なさい。みやげ話をお楽しみに。

●「8月のクリスマス」の再生度。

2005年06月27日 | Weblog
6月27日(月)13-00 京橋<映画美学校・第一試写室>
M-090 「8月のクリスマス」Christmas in August (2005) 日
監督・長崎俊一 主演・山崎まさよし ★★★☆☆☆
オリジナルの韓国映画を見ていないので、比較はできない。
でも、リメイクするからには、オリジナルは上出来だったのだろう。
寡黙で静的な作風は好感が持てた。先日見た「サヨナラCOLOR」と同じように、愛のために自分の大病を隠し続ける男のストイシズムは、ひとつのダンディズムなのだろうか。ま、ひとつの美談として、これだけ感情を殺した演出はわかる、判る。
あまり死の宿命をギャーギャー騒ぐのは見ていて見苦しい。
でも、これだけクールなのも変だ。
何も言わない。何も残さない。でも一回だけの人生なのだから、何か印象的なひとことを言って欲しかった。

●「チーム・アメリカ/ワールド・ポリス」の悪戯。

2005年06月24日 | Weblog
●6月24日(金)13-00 東銀座<U.I.P.試写室>
M-089 「チーム・アメリカ/ワールド・ポリス」Team America / World Police (2004)米
監督・トレイ・パーカー 主演・キム・ジョンイル ★★☆☆
テロリストの脅威に対抗すべく、アメリカ政府は強力な軍事パワーで中東に空爆を開始した。
これを「ワールド・ポリス」と皮肉ったハリウッドのセレブがブッシュを批判。
それをバカおかしく古風にマペット感覚で戯画化したのが、「セントラル・パーク」のお騒がせトレイ・パーカーとマット・ストーン。北朝鮮のキム・ジョンイルと、アンチ・ブッシュのショーン・ペンなどを絡ませて、お笑いの政治ドタバタ。
ま、マイケル・ムーアまでが爆死するのだから、ブラック・ジョーク・コミックとして見る分にはいいが、これで、何が動かせるのか。それは、見る側の映像への感性と、ハリウッドの認識による。
マイケル・ベイやベン・アフレックを批判して、何がクリエイティブなのかなー。

●「シンデレラマン」のアメリカン・ドリーム。

2005年06月23日 | Weblog
●6月23日(木) 13-00 六本木<ブエナビスタ試写室>
M-088 「シンデレラマン」Cinderella Man (2005) 米
監督・ロン・ハワード 主演・ラッセル・クロウ ★★★★☆☆
2年前にハリウッドの友人でキャスティング・ディレクターのジェーン・ジェンキンスの車に乗ったら、座席に無造作に置かれていたのが、この作品のシナリオだった。
彼女が担当した「ビューティフル・マインド」と同様にラッセル・クロウの主演なので、その時は大して話題にならなかった。テーマがリターン・マッチで返り咲きしたボクサーの自伝だというので、「ロッキー」と同じだなーと思っていた。
しかし、最近のメールでは、「ボクシング映画ではなくファミリーの映画よ」というので、余計に心配になったのだ。
ま、良くて「オールド・ルーキー」か。と感じたのだ。
ところが、映画はまさにドラマと同じで、15ラウンドまでダウンしない。30年代の「グラディエイター」のリベンジは、あの大不況からの脱出なのだ。まさにアメリカン・ドリームの原点を見るような勇気を感じた。
美談といえばそれっきりだが、いかにもアメリカらしいパワフルなハッピーエンディング。
「タイトルよりは、タートル(亀)を子供に持ち帰りたい」
トレーナー役のポール・ジアマッティは、またオスカーにノミネートされるだろうし、作品も最終ラウンドまで残るだろう。

●「サヨナラCOLOR」の殉職。

2005年06月23日 | Weblog
●6月22日(水)13-00 渋谷<東芝試写室>
M-087 「サヨナラCOLOR」2005(日)
監督・竹中直人 主演・原田知世 ★★★☆
中年純愛ロマンティック・コメディーだが、ストーリーは意外とマジ。
学生時代に片思いしていた美女の知世が、子宮ガンで入院してきた。病院医師の竹中は自分の体調も無視して献身的治療をする。しかし、彼女が退院の日、彼は倒れてしまう。純愛医師の殉職は哀しい。
ところが演出がやたらテレビ・コミックのタッチなので、感情移入できない。
「無能の人」や初期の渋くてアイロニー豊かな竹中タッチで見たかった。

●「バットマン・ビギンズ」はダーク・ムービーだぞ。

2005年06月21日 | Weblog
●6月21日(火)12-05 六本木<ヴァージン・シネマ・7・スクリーン>
M-086 「バットマン・ビギンズ」Batman Begins (2005) 米
監督・クリストファー・ノーラン 主演・クリスチャン・ベール ★★★★
記者会見の時の、夜の試写をパスしていたので、とにかく今日は飛んで行った。
大好きなノーラン監督が、どうコミックを料理するのか。しかも、このソウソウたる脇役陣。
マイケル・ケイン、モーガン・フリーマン、ゲイリー・オールドマン、リーアム・ニースン、トム・ウィルキンソン、ルトガー・ハウアー、そして渡辺謙。
これだけのビッグ・スターが出るのだから、主人公はもう誰でもいい。
しかし、大嫌いなクリスチャン・ベールは「アメリカン・サイコ」や「シャフト」のままの嫌な奴で、なるほど、監督はバットマンを「バッドマン」として描こうとした狙いがよく判った。
両親が目の前で暴漢に殺されて、復讐も果たせないブルース・ウェインは「怒りをエネルギー」に変え、「心を行動に移す」ためにトラウマだった恐怖のコウモリを自己の化身に変える。
だから偏屈なクラーい男のエネルギーが、夜のゴッサム・シティーに炸裂するのだ。
その結果、これは知的なダーク・ムービーになったのだろう。大いに楽しめた。

●「ジェネシス」の不思議な視覚。

2005年06月19日 | Weblog
●6月19日(日)10-00a.m. <パシフィコ横浜・メイン・ホール>
M-085 「ジェネシス」Genesis (2004) 仏
監督・マリー・プレンヌー&クロード・ニュリザニー 主演・タツノオトシゴ ★★★☆☆
父の日で息子に貰った招待券だが、どんな映画か判らぬ間に、横浜のみなとみらいのフランス映画祭メイン・ホールに出かけた。というのも、その隣のギャラリーで妹が「押し葉展」を開催していて、今日は最終日。
そんな訳で突然見たのが、フランスの新作ドキュメンタリー。
解説で見ると、あの「ミクロコスモス」のスタッフの新作。
テーマはタイトルのように生命の起源。人間の命はどのような経路で誕生したのか。
その神秘を6年の時間をかけて描いたエネルギーはスゴイ。しかし「WATARIRORI」や「皇帝ペンギン」のような新しい切り口はなく、いかにも生物学者の作りそうな科学ドキュメントで、恐れ入った。
もっと、フランス映画らしいエスプリや、ウィットの利いた解釈が見たかったナー。

●「クレールの刺繍」のデリカシー。

2005年06月17日 | Weblog
●6月17日(金)13-00 渋谷<シネカノン試写室>
M-084 「クレールの刺繍」Brodeuses (2004) 仏
監督・エレオノール・フォーシェ 主演・ローラ・ネマルク ★★★☆
刺繍というのは、女性だけの美学に支えられているのだろうか。
そもそも刺繍そのものに、あまり興味のない男性が見ても、あまり面白くならない。
17歳のクレールは妊娠したことを母に隠して、刺繍の仕事を手伝っている。
子供を亡くしたばかりのアリアンヌは病弱だが、刺繍の巧いクレールに温かな感情を委ねる。
女性監督の作品なので、とことん女性の感性でデリケートに進行するドラマなので、静かな女性らしい時間が流れる。
言葉よりも手の感触で描いている作品なので、彼女らの手の表情を見ていないと、ドラマに孤立する。
やはり、この「手」の女性映画は苦手だ。語る資格はない。スミマセン。

●「ボブ・ディランの頭のなか」の腫瘍

2005年06月16日 | Weblog
●6月16日(木)13-00 東銀座<松竹試写室>
M-083 「ボブ・ディランの頭のなか」Masked and Anonymous (2003) 米
監督・ラリー・チャールズ 主演・ボブ・ディラン ★★★☆☆☆
雨なので外出をやめてメジャー・リーグをBSで見ていたら、野茂がプロ通算200勝。
そのあと、イチローは2001本目の安打を先頭打者ホームラン。それで元気が出て、気になっていたディランの試写に出かける勇気がでた。ダメもとでいい。雨は雨期だから降る。
でも、見てよかった。これは意外な拾いうもの。珍作である。
ディランは動乱中の南米の某国の牢獄にいたのだが、チャリティー・イベントのゲストとして、友人のジョン・グッドマンとプロモーターのジェシカ・ラングの計らいで出所する。
そしてリハーサルが始まると、ライターのジェフ・ブリッジスが、ガール・フレンドのペネロペ・クルスと現れたり、クリスチャン・スレイターのライトマンなど、怪しい連中が周囲に出現する。
エド・ハリスが、アル・ジョルスンの扮装で現れたり、ガンジーやパオロ2世もウロウロしているのだ。
もちろん、ディランは彼の持ち歌を数曲唄うが、もう60歳の彼はウィリー・ネルソンのように老けていて、それが哀愁を伴うのだ。
別に、映画的にどうこう言うような作品でなくて、このフェリーニのようなサーカス感覚が楽しめればいい。
ディランのファンだったので、ことのほか楽しかった。

●「理想の女」はファム・ファタール。

2005年06月15日 | Weblog
●6月15日(水)13-00 六本木<GAGA試写室> 監督・マイク・バーカー 主演・ヘレン・ハント ★★★☆☆
オスカー・ワイルドの戯曲を映画化するにあたって、30年代のイタリアを舞台にしている。
そのことでカラフルな上流社会はきらびやかで、人間ドラマの醜悪さといいバランスになっている。
見どころはヘレン・ハントの男まさりのキップの良さ。悪女の風格を持ちながら小娘のスカーレット・ヨハンセンへの深情けはオスカー女優の意地を見せている。しかし演出がさらりとしすぎていて、せっかくのスキャンダラスな設定が生きていない。
結局はメロドラマの軽さに終わったのは惜しいな。