瀝瀝(れきれき)散歩道

瀝瀝というのは「水が音をたてる様子/風が音をたてて吹く様子」つまり、「ありのままの風景」ということでしょうか。

外国人労働者のキャリアパスと日本語教育

2024-07-23 17:07:41 | 日記
外国人労働者のキャリアパスと日本語教育


最近「多文化共生」という言葉に、ちょっと引っ掛かりを感じています。それは、仕事で外国人労働者が50%以上を占める工場で研修をしているからかもしれません。
大学で「多文化共生」を考え、政府やさまざまな研究者が出している資料を読み、ディスカッションするのは、多文化共生の基礎を知るのに、とても良いと思います。ただ、現場では「う〜ん、なかなか、ね」と思うことがいっぱい!
私たちは、働く人の働き方のサポートが専門ですから、広い広い「多文化共生」の範囲(くくり)の中の
一部、「多文化協働」について、考えてみたいと思います。



1. 私たちはなんだかんだ言いながら、一緒に働いている!


高校生の時に初めてカフェでウエイトレスのアルバイトをしてから、もう50年近く私は働いている。
なんだかんだと言いながら、人とぶつかったり、めちゃくちゃ気があったりして、どうにか働いてきた。


いろいろな人がいる。プライドのある人には、下手に出て、怖そうな人にもヘイコラする。働いていたら、目標達成のために、引いたり押したりしながら、協力しないと、仕事が進まない。同僚は、みんながみんな友だちではないからだ。
最近は外国人がいる現場でも働いている。文化や習慣、言葉も違い、育った環境や価値観も年代も異なる。



2. 多文化共生は、素晴らしい理想だ!

一口に多文化共生と言っても範囲が広すぎる。

先日大学で、私が「多文化共生って工場とかで仕事をしていると、何十年たっても達成できないんじゃないかと思う」と言ったら「多文化共生という理想がなくちゃ、どうやって変えていくんですか」、と強烈に若い人に突っ込まれた。
「じゃあ、あなたの多文化共生は具体的になんですか?」と聞いたら、それがまずかった。30倍の勢いで、10分ほど、熱弁を振るわれた。

「色々な人が共に生きていく、日本にはそれが必要だ。多文化共生に向かって、お互いに理解し合うこと、私たち一人ひとりが努力していかなくては!(→あなたはいったい何を考えているの?そんな古い考え方!)」
多分、素敵な現場でみんなと仲良くモチベーション高く働いているのだろう。それはそれでいいけれど、私との文化が、すでに異なっているなぁ、と心の中で思った。2人の間でも共生は、なかなか大変だ。



3. 現場を見てみる

外国人の多い工場で研修をしていると、多文化共生は本当に難しい、と思う。
外国人同士が母語で話せば、日本人のスタッフの中で、「俺たちの悪口を言っているに違いない」という人が出てくる。
さらに「この工場は、95%がA国の人なんだから、仕事がスムーズに進むようA国語で日本人も話してほしい」という要求もくる。数が逆転している現場。
逆に「日本にいるんだから、外国人もみんな日本語を学ぶべきだ」という外国人もいる。
「あの国とは戦争していたから、一緒には働けない」と、戦争相手の国の人とは働きたくない、と断固拒否する人もいる。当然と言えば当然である。
「目標を達成するという気持ちがなかったら、忙しい東京人とは働きたくないなぁ」とか、、いろいろいろいろある。
日本人だって、さまざまな人がいるから、一緒に共生するのは、みんな大変だってわかっている。



4. 多文化共生の中の多文化協働


そこで、私たちは多文化共生の中の、働き方に注目をした多文化協働を目指している。私たちの会社は、働く人たちのキャリアを支援し、一緒に生き生きと元気に働ける職場を作る、ということに焦点を当てている。生産性を落とさないで、みんなが気持ちよく爽やかに働くためのサポートをする。

それは、日本人でも外国人でも同じだ。特に日本の産業を底力で支える技能実習生、特定技能、そして一緒に働く日本人スタッフのために、何かできないかと考えている。
それが弊社のキャリア教育であり、コミュニケーションやハラスメント防止研修に繋がっていく多文化協働だ。

 

小さくて小さくて、吹けば飛んでしまう会社のチャレンジは、理想の中の課題の解決、その支援が目標。足元の現場から一歩一歩だ。私たちはキャリアコンサルタントとして、多文化協働、みんなが元気に働くことの推進。忙しいけれど、それもまた楽しいし、価値があると感じている。


阿吽の呼吸・以心伝心・意図を体する

2024-04-21 12:21:52 | 日記


意図を体する

聞き慣れないことばですが、
「意図を体する(いとをたいする)」とは、相手の意見・考え方を受け止め、それに見合った行動をする、という意味です。
上司や目上の人の意見に同意、心を一つにして行動に移す時に使われるようです。
実は、明確な意思表示や指示や命令がなくても、上司の思いや考えを感じ取り、予想し、上司が満足するような形(行動) にして表すことが大切であると、
かなり精神論的な解釈をする人も少なくありません。
日本社会にはこれまで、職場内の上下関係の中で、部下が上司の「意図を体する」ことを美徳と考える風潮があり、それが評価にまでつながってきました。

相手の行動や考えを察する能力は、誰でも持っています。
一方、社会が移り変わり、今は、受け手が察するより、説明する側が、相手にわかりやすく正確に伝えられるかどうか、が重要視されるようになってきました。

私たちがハラスメント防止研修を行なっている自衛隊では、いくつかのコミュニケーションスタイルがあるように感じます。

例えば、
①ハイコンテクストと言われる、同じ価値観を持つ人たちが「阿吽の呼吸、以心伝心、意図を体する」等、受け手側の責任が重いコミュニケーションスタイル
そこでは、言葉による直接的な表現よりも、非言語的な手がかりや文脈、関係性が重視されます。
ハイコンテクスト文化では、人々は間接的な表現や暗示を用いることが多く、メッセージの真意を読み取るには、話者との関係やその時の状況、過去の経験など、
多くの背景情報を理解している必要があります。

例えば、日本や中国等の国は典型的なハイコンテクスト文化とされています。
これらの文化では、会話の中で言葉に出さない部分を理解することがコミュニケーションの鍵となります。
人々は、非言語的な手がかり(身振り手振り、表情、声のトーンなど)や状況のニュアンス、相手との関係性に基づいて、
言葉越しに伝えられる以上の意味を読み取ることが期待されます。


②つ目は、上司が、部下にスムーズに行動できるよう緻密に指示、わかるように言葉で伝えるという、話し手の責任がポイントのローコンテクストのコミュニケーションスタイル、
ここでは、言葉自体がメッセージの主要な運び手であり、背景情報や非言語的な手がかりに依存することが、あまり多くありません。
アメリカやドイツなどの西洋諸国は、このコミュニケーションスタイルが一般的とされています。
ここでは、直接的で明確な言葉遣いが重視され、メッセージはそのままの意味で受け取られることが期待されます。


①や②、その他のコミュニケーションスタイルが、複雑に交錯している組織、それが自衛隊ではないでしょうか。


一方、この複雑さは、最近の若い人にとっては、馴染むのに少し、時間がかかるかもしれません。
もっと大きな声を出せ!とのリーダーの命令に、陸士数名は勇気を出して「なぜ大きな声が必要なんですか」と質問したそうです。
呆気にとられるリーダー。「理由は自分で考えろ、声は大きく出せ、いいな!」
これは、答えを求める若い人の質問に的確に応えてはいません。
理由が明確に示されなければ、動けない、こんな若い人たちが増えつつあります。
阿吽の呼吸ではなく、わかるように説明、すべての表現、ジェスチャーを使ってどこまでもわかるまで誠心誠意説明し、わかってもらう、
そんな時代がやってきたのかもしれません。




60代が活躍するキャリア・ストラテジー

2024-03-20 00:03:37 | 株式会社キャリア・ストラテジー
60代が活躍する会社 



世の中には60代が活躍する会社が、少なからず存在します。
弊社は吹けば飛んでしまうような会社ではありますが、じつは60代のマネージメントスタッフが大地に
しっかり根を下ろし、ガッチリと支えている会社です。
写真はマネージメントスタッフの1泊旅行の様子です。
温泉に入って語り合う、2時間!
親父ギャグ連発の夕食とか、、
夜は一泊旅行でも健康的に早く寝る、
朝4時前から温泉で語り合う、、
やっぱり一風変わっています。

もともとは、「自衛官のセカンドキャリアを支える」目的で、およそ8年前に創業。
その後、紆余曲折を経て、現在はセカンドキャリア研修、メンタルヘルス研修、そしてハラスメント防止研修、ハラスメント行為者構成プログラム等
50代以上の、キャリアやカウンセリングで専門を持つ業務提携講師が活躍しています。

ただいま、外国人労働者のためのハラスメント防止研修で、全国展開の企業研修を担当しています。
先生不足です。
外国人労働者のキャリア研修やハラスメント防止研修をやってみたい講師、大募集中。
詳しくはHP https://careersg-oneonone.jp をご覧ください!

さて、一泊旅行を終えて、本日からまた多種多様な仕事をそれぞれが担当中。
来年の一泊旅行まで、また頑張りましょう!








誰もが気をつけたいハラスメント防止(2)

2023-03-31 16:07:17 | 特別職国家公務員
大手企業などでハラスメント教育や相談対応に当たってきた吉本恵子さん。
組織でハラスメントが起きたときの対処などについてうかがいました。



■被害者も加害者も、まずは相談を

──実際に職場でハラスメントが起こってしまったら、どうすればいいのでしょうか。

吉本さん:人と人が集まる以上、衝突やコミュニケーションの食い違いが起こるのは避けられません。
そこでもし、職場でハラスメントが起こってしまったらどうしたらいいのか。ハラスメントの被害に遭った場合、まずは相談することが大切です。

特に大きな組織では、ハラスメント通報窓口など、自社内に体制が整備されている場合も多いでしょう。
ケースによっては、働き方の問題に詳しい最寄りのハローワーク、労働基準監督署に相談も可能です。
一人で抱え込まないことが大事です。

相談するときは、自分が一番相談しやすい方法を選んでください。
もともと人と会うのが苦手な人もいれば、気持ちが落ち込んでいるときは、「人に会うのが嫌だなぁ」と思うこともあります。
そんなときは、メールや電話でも大丈夫。最近はLINEで相談できる機関も増えています。自分自身が最も使いやすい方法を選んでほしいと思います。

「加害者」とされた場合にも、まずは相談です。
自分のことを客観的に見るのは難しいですから、自分が本当にハラスメントに当たる行為をしたのか、第三者の意見を聞くことが必要です。







■ハラスメントで悩む人に気づいたら「見る」「聴く」「つなぐ」

──もしハラスメントで悩んでいる人を見かけたら、何をしたらよいのでしょうか。

吉本さん:ハラスメントで悩んでいる人に対して、周りの人ができることもあります。それが「見る」「聴く」「つなぐ」です。

「見る」では、まずその人の様子をさりげなく観察してください。元気があるか沈んでいるか、髪型が乱れていないか、服装は以前に比べてどうか、
会話が少なくなっていないか、会話を単語レベルで話そうとしていないか、などが心身の不調のサインです。

「聴く」のフェーズでは、ちょっと声をかけてみましょう。相手が応えてくれたらチャンスです。
相手の話を徹底的に「傾聴」しましょう。ここでは口を挟まずに最後まで集中して「聴く」ことが重要です。

途中で自分自身の経験談、たとえば「自分もそれは乗り越えられた、君も絶対大丈夫だよ」なんてアドバイスしたら、信頼関係が破綻することがあります。
相手は自分の話を聴いてもらいたいだけなのですから。

最後が「(専門家に)つなぐ=リファー」。カウンセラーなどの専門家ではない場合、その人の深い悩みになかなか対応することはできません。
そんなときは社内、社外の専門家につないでほしいと思います。

この「見る」「聴く」「つなぐ」は、ハラスメントに悩む人の周りにいる誰でもができることです。






■企業のトップは組織風土を「つくる」

──会社としても、ハラスメント対策は喫緊の課題です。組織としては、何が求められているでしょうか。

吉本さん:企業や組織のトップ、あるいは管理職の人たちのハラスメント防止に対する意識も大分変ってきました。

国は、職場でのハラスメントの防止を目的として2020年6月に「労働施策総合推進法」を改正し、パワーハラスメントの防止措置を事業主に義務付けました。
いわゆるパワハラ防止法です。
大企業はもとより、2022年4月からは中小企業にも適用され、「ハラスメント防止研修の実施」や「相談窓口の設置」など、対策を講じることが強く求められています。

このような背景もあり大企業ではハラスメント防止の対策がかなり進んできましたが、中小企業ではまだまだ整備が追いついていないところもたくさんあります。

「私が作った会社で、私のやり方でここまできた。これがパワハラだって言われても……」と話す町工場の社長さんもいます。
これまでのやり方を引きずってしまうそのような会社では、どうしてもハラスメント対策は後ろ向きになりがちです。

一方で、「ハラスメントは決して許されない。ハラスメントはときとして死に至るまでの危険行為だ。
会社からハラスメントを絶対になくす」と言って、さまざまな施策を続けてきた大企業のトップもいます。

企業においてハラスメント防止が進むかどうかは、トップの決断が大きいのだと思います。
トップの宣言は、ハラスメントを含めた職場のトラブルを未然に予防する抑止の意味でも効果が大きいですし、
従業員にとっても「大切にされている」と感じられ、労働意欲の向上に大きくつながっていくと思います。

ハラスメントを防止するには、まずは職場のコミュニケーションを良くすることが必要です。
風通しの良い職場の風土を作ることを意識してほしいですね。

次に、そこで働く人すべてが、「ハラスメントはいじめであり嫌がらせだ。危険行為でもある」としっかり理解することが重要です。
この理解が徹底されていれば、職場でのハラスメントを見たときに、何か行動に移す人が出てくるはずです。

最後に、過去にハラスメントをしてしまった人たち、あるいは「ハラスメントに当たるかもしれない言動を取ってしまった」と悩む人たちもいると思います。
そんな人たちは、今日からそれをやめていただければ、いいのです。

トップから社員まで、組織を構成するすべての人の協力があってはじめて、組織は変わります。
自分も組織を良くする一員なのだということを、ぜひ覚えていてほしいですね。

PROFILE 吉本恵子さん

株式会社キャリア・ストラテジー代表。大学卒業後、商社で中国貿易に従事し、フリーランスの中国語通訳として独立。40代で大学院に進学し、日本語学校や大学、大学院などで多くの学生を指導している。産業カウンセラーやキャリアコンサルタント、精神保健福祉士の資格保有。多くの組織でハラスメント防止研修や相談対応を行っている。

誰もが気にしたいハラスメント防止

2023-03-30 09:38:36 | 特別職国家公務員
“ハラスメント”の意識が変わった「Z世代は… 」と嘆く前に【専門家に聞く】 3/27(月) 11:31配信






「ハラスメントは駄目だ」。社会にそんな認識が広がっている一方で、実際の相談件数は年々増加傾向にあります。
そこで今回は、自衛隊や大学、大手企業といった大規模組織でハラスメント教育や相談対応に当たってきた株式会社キャリア・ストラテジー代表の吉本恵子さんに、
ハラスメントが起きる理由や世代間ギャップとの付き合い方をうかがいました。


■昭和の価値観”を受け継いだ人たち

──陸上自衛隊では2022年、極めて悪質なハラスメントが発覚しました。これは自衛隊を動かしただけでなく、世間の注目を集めましたよね。

吉本さん:私の周囲の人たちからは、「あんなひどいハラスメントが起きるのは自衛隊だからですよね」と言われることがよくあります。
でも、本当にそうかなあ、、実は、そうだと言えない部分もあると思うんですよね。
もちろん自衛隊ならではの特殊な事例もありますが、ハラスメントの本質は自衛隊でも民間企業でも、あまり変わらないと感じています。

どのハラスメントも結局は、「人間関係の中で起こるいじめや嫌がらせ」に集約されるのだと私は考えます。
私たちの身近でも、ひどいハラスメントの事例はたくさんあります。人が集まれば、どんな組織であってもハラスメントの芽がどこかに隠れていることが多いのです。

一般的には、「ピラミッド構造の組織ではハラスメントが起こりやすい」と思われがちです。
ただ実態としては、ピラミッドであるかどうかよりも「上下関係の厳しい組織でハラスメントが起こりやすい」というのが、正確な表現だと思います。





──そもそも、どうして職場でハラスメントが起こるのでしょう。

吉本さん:ハラスメントが起きる大きな原因のひとつは「職場の風通しの悪さ」です。皆さんの職場を思い浮かべてください。
毎朝、明るく挨拶が交わされていますか。あるいは冗談を言ったり、個人的なトピックスを話したりできる雰囲気があるでしょうか。
何を言っても安心して話せる職場、これが「風通しの良い職場」の特徴だと思います。


また、職場内の世代間のギャップも大きく関係してきます。大きな企業では、職場内に10代から60代までの社員が働いていることもありますよね。

たとえば私は昭和世代、いわゆるX世代の人間です。
「24時間働けますか?」という言葉と共に猛烈に仕事をした世代で、私の上司は「俺についてこい!」という感じの強権型のリーダーでした。

ところがいまの若者、つまりZ世代は「それぞれが持つ個性を活かそう」「テクノロジーを使って合理的に働こう」という価値観を持っています。
X世代の人間が昭和を引きずったまま、自分が受けてきた「俺についてこい!」のような指導を若い部下にしてしまうと、受ける方は「え、なに、この人?一方的!」と驚いてしまうのです。


──いつの間にかコミュニケーションのあり方が変わったことに気づけていないんですね。

吉本さん:そうですね。実は、ハラスメントをしている人は、多くの場合「自分はハラスメントをしている」とは思っていません。
自分とは違う価値観を持つ部下を受け入れられず、厳しく叱ってしまう人もいます。
「組織のため、部下のためを考えてやっている」と心から思っているし、「自分は間違っていない」と確信している、そんな人もいます。

しかしハラスメントを受ける側は理不尽な叱責を受けたと感じ、傷つきます。
上下関係がある場合は、言い訳もできず、さらに悩んでしまうのです。ハラスメントは、被害者と加害者の思いが食い違っているケースが多く見られます。

上司に激しく叱責されると、部下は恐怖感から一生懸命働きます。
その結果、一時的に業績が上がることがあります。
そのため、上司の中には自分が「効果的なマネジメント」をしている、と錯覚してしまう人も出てきてしまうのです。

また周囲の人たちも、強権的な指導で業績が上がるのを見て、「ああこんなやり方もあるんだ」と同じことを繰り返す。
ハラスメントは「見て、学んで、継承される」ものなのです。






■若い人もベテランも、みんなが気を遣っている

たとえばある大学の研究室での話です。その研究室の教授は研究に熱心で、探究心の強い人でした。

一方で、その研究室では毎年数人の学生が長期の病欠、休学や退学でいなくなってしまうんです。あるとき、教授がしんみりと話してくれました。

「自分は学生時代、自分の恩師から厳しく指導されました。それこそ1年365日、盆暮の数日しか休みがなかったんですよ。
同期や先輩も、みんなそれが普通だと思っていたし、激しい叱責にも耐え抜きました。
だから自分が教授になったとき、自分が経験したのと同じように学生を厳しく指導しました。
そしたら、学生が研究室に来なくなってしまったんです」

この教授は私と話した後、しばらくの間は言動に気をつけ、学生にとって「いい先生」になったそうです。
ただこの研究室の学生の報告によると、「3か月ぐらいでまた元通りに戻ってしまいました!」とのことです。

ハラスメントは継承されるもので、それを断ち切ったり、解決したりするのはすごく難しい、と感じた事例です。



──世代間ギャップが生まれてしまっているのですね。

吉本さん:私はいくつかの企業で、ハラスメント防止研修を担当させていただいています。
管理職の方向けの研修が比較的多いのですが、「若い世代、特に20代の部下とのコミュニケーションに苦労している」
「どうやって若い人と接していいのか迷う」などの悩み事を聞きます。
「注意しても無視されたり、ハラスメントだと言われたりするのがプレッシャーで、最近あまり注意やアドバイスを部下にしなくなった」という方までいました。

ところが一方で、若い世代の人たちも同じように悩んでいるのです。
「40代、50代の上司とのコミュニケーションがうまくいかない」「話す時にとても緊張してしまう」などの声を聞きました。

あれ?これっていったいどういうことなんでしょうか。オフィスの中で、若い人も年配の人も、お互い相当に気を遣いながら仕事をしている、なんて。
双方から話を聞いて、私はそう思いました。

■「業務中に携帯使用で取り上げ」、これってパワハラ?

私がハラスメント防止研修に取り入れているクイズの一例を紹介します。ぜひ一緒に考えてみてください。

20歳の社員Gさんは、休憩時間を過ぎても、5分、10分とゲームをしています。田中課長が注意すると『ゲームじゃないですよ。
携帯で調べながら仕事をしているんですよ!』
と強めに言い返してきました。田中課長は黙ってGさんの携帯を取り上げました。

これはハラスメントに当たるでしょうか。
参加者に話し合ってもらうのですが、管理職たちの意見交換はかなりの盛り上がりを見せます。
実際に現場で起こっている身近な問題だからです。

答えは「ハラスメントではない」です。

労働者は契約上、労働時間中には職務に専念する義務を負っています。
田中課長がGさんに「仕事中にゲームをしないように禁止する」ことは適法です。

一方で、「黙って携帯を取り上げた」というところに問題も感じます。
「きちんと説明してから一時的に預かる」であれば、Gさんの気持ちも時間が経てば収まったかもしれません。
また「法律では取り上げるのは罪ではない」と法律を振りかざして言ってしまえば、それで二人の関係は修復不可能な壊滅的状態になります。
対話による解決法が、この場合最も適切ではないか、と思います。

ちなみにこれは実際の事例を基にしています。
Gさんは、「携帯の中のネットワークには、何百人もの友だちがいます。だから携帯を取り上げられるってことは、
友人といきなり引き離されることと同じなんです」と言い、最終的には会社を退職しました。貴重な人材が1名流出してしまったわけです。


20代のZ世代の人たちにとって、携帯とはどのような意味、価値があるのでしょうか。

ある組織の若手社員500名にキャリアコンサルティングを行い、退職を希望している人たちに退職理由を尋ねたところ、
「携帯が自由に使えない」「自由がない」という理由が上位にあがりました。

Z世代は買い物や娯楽、学習といったライフスタイルの大部分をデジタルデバイスを使って完結させる傾向にあります。
また、コミュニケーションもSNSなどのオンライン上で活発に実施。情報の収集から発信まで、彼らの生活の中心には「デジタル技術」が存在しています。

X世代の私たちに、Z世代と同じようにデジタル技術をマスターして、Z世代に歩み寄れ、というのは、かなりの無理があります。
そのような違いお互いを理解したうえで歩み寄ってみることが、「ハラスメントのない風通しの良い職場風土」を作るのに大切なのではないかと、最近強く思っています。




PROFILE 吉本恵子さん

株式会社キャリア・ストラテジー代表。大学卒業後、商社で中国貿易に従事し、フリーランスの中国語通訳として独立。40代で大学院に進学し、日本語学校や大学、大学院などで多くの学生を指導している。産業カウンセラーやキャリアコンサルタント、精神保健福祉士の資格保有。多くの組織でハラスメント防止研修や相談対応を行っている。

2023年のワクワクドキドキ

2023-01-01 23:46:15 | 日記


明けましておめでとうございます。新しい1年がやってきました!今年もどうぞよろしくお願い申し上げます!
さて、
最近、時間がものすごく早く流れる感じがします。
NHKの『チコちゃんに叱られる』のチコちゃんによると、大人はワクワクドキドキする気持ちがなくなると、時間が早く過ぎていく、と感じるようです。
「えっ!」ですよね。
「昨日は何をしていましたか」と大人に質問すると、大抵の人が「昨日の出来事を思い出すのにすごく時間がかかる」のだそうです。
確かに、私にも覚えありです。あまり印象的なことがなかったからでしょうか?

一方、こどもたちは「1週間前何をしていた?」と聞くと、
「○○ちゃんの家に遊びに行って、ゲームの後で、ふたりでコンビニへ行って、おやつを買ってきた。おやつはめちゃくちゃ美味しかった。
夜、その話を家族全員に話したけど、お兄ちゃんはちゃんと聞いてくれなかった」みたいに詳細に答えられます。
こどもたちの生活はワクワクドキドキに満ちていて、何もかもがおもしろく、興味を持ってその出来事を観察するのです。
1日にたくさんの出来事が子どもたちのまわりで起きます。それを考えると、時間はとても長く、もう少し長くてもいいと思うぐらいだそうです。

今年は、子どものようになれないにしても、毎日を楽しく記憶に留めながら過ごしたいなあ、と思っています。

2022年が終わる

2022-12-24 21:42:13 | 日記


2022年が終わりますね。

激動の一年といえば激動でした。

今年は親しい方が亡くなりました。
このお別れは、ちょっと辛かったです。
涙が出ました。

また、大学の先生たちが、病気で職を離れました。
お世話になった素敵な先生たちです。
また涙が出ました。

次男が長野から東京に戻りました。
ずっと心配でした。東京に戻ってきて少しホッとしました。
長男が結婚して家を離れました。
そうなんだ、、、嬉しいけれど、ちょっと寂しい、そんな気持ちです。

結婚したり、別れたり。
人の縁は不思議です。
でも、周りの人間はいつもハラハラしています。
笑顔で励ましているけれど、実は心の中では泣いています。
とても心配で心配で、、、

周りを見ると、私の友人たちはもう誰も働いていません。
私はこんなに働いていいのだろうか、もう好きなことをしてもいいのでは、と悩みました。
身体もあちこちが傷んでいます。

辞めようと思った仕事を5年更新しました。
もう少し一緒にお願いします、と言われたら、ちょっと断りにくかったからです。
でも、私がもっと歳をとって、周りの人に気を遣われて、仕事をするのは嫌だなあ、、、
昔の業績を自慢するような人に(なりそう?)いえ、そうなりたくないから。

人生は思ったようには進みません。
すごく皮肉。
でもまたそれが面白いともいえます。
面白いと思えるようになるまで、何十年もかかるのですが、、、。

そして人生はまた続いていく、、、。

自衛隊、ハラスメントとたたかう

2022-12-19 12:11:37 | 特別職国家公務員



「自衛隊ハラスメントと戦う」

元女性自衛官のセクハラ事件の加害者5名に対して、陸上自衛隊は「懲戒免職」の処分を昨日発表しました。
今週、海上自衛隊でもパワハラを続けていた1等海佐他に対して、2階級降格等の処分が行われました。
自衛隊、徐々にですが、動き始めましたね。

自衛官に聞いてみると「5人も一度に、英断だ」という人がいます。
一方で、民間人なら「ずいぶん時間がかかったね」と思う人も多いでしょう。

以前、私が学んだ大学院で、教授が女子学生にセクハラ行為を行い、即日解雇となりました。
もう20年近く前のことです。峻烈な判断、即決でした。

昨年10月より陸幕で行っているハラスメント防止教育ですが、来年度からは東武方面総監部ほか、いくつかの場所で実施されます。
まさに「自衛隊ハラスメントと戦う」ですね。



激動の時代を走り抜けた高杉晋作(長州藩)

2022-10-04 20:08:03 | 特別職国家公務員


高杉晋作をご存知ですか?私自身は少し前まで、ほとんど気にも留めなかった明治時代の人物です。
ところが私が住んでいる品川宿の歴史に目を向けると、意外なところで高杉晋作とつながってきます。


旧東海道品川宿。この品川宿に幕末の志士たちが集まる旅籠屋「土蔵相模」がありました。
土蔵相模は品川でも有数の規模と格式を誇った妓楼で、高杉晋作、伊藤博文ら幕末の志士たちが密談を行った場所、隠れ家、尊王攘夷の拠点でした。
長州藩士は遠い遠い長州藩(山口)から徒歩で品川までやってきたのですね。
疲れた脚をここで休め、ちょっと遊び、密談したのでしょう。

文久2年の長州藩士による英国公使館焼き討ち事件の際は、ここ土蔵相模から藩士が出発しました。
リーダーは高杉晋作です。副リーダーは久坂玄蕃、火付け役が伊藤博文、井上馨という、錚々たるメンバーです。
幕府が建設している英国公使館はまだ建築途中で、夜中、人は誰もいませんでした。そこに火をつけ、、すぐさま撤収。
相模土蔵に戻って、今度は遠くで燃える英国大使館の炎を見ていたのかもしれません。



さて、高杉晋作の幕末での大活躍はご存知の通りです。
晋作は激動の幕末を走り抜け、その才能を発揮して活躍しましたが、29歳、明治の新しい時代を見ることなく、短くも激しい人生を終えました。

高杉晋作の辞世の句
「おもしろこともなき世をおもしろく すみなしものは心なりけり」
辞世の句の内容を斟酌するのは大変難しいところがありますが、
「面白いと思えることのない世の中を面白く。それを決めるのは自分の心ひとつだ」
「心のありようで世界は面白くもなるしつまらなくもなる、心の持ち方、心の有り様でいかようにも世界を捉えられる」

下の句の「すみなしものは心なりけり」は病床の高杉に代わり、福岡の勤王女流歌人・野村望東尼が結んだといわれています。
面白くもない世の中を面白くしてきた、という高杉晋作に対して、つまりすべては心の持ちようだ、と返したのです。



写真は山口萩の高杉晋作生家、晋作の像が建つ公園、萩城下、

山口県(長州)萩

2022-10-04 20:00:08 | 特別職国家公務員


山口県防府市での仕事の前に「萩」に足をのばしてみました。

萩は毛利氏の萩城を中心とした城下町です。
「萩」の名前の通り、お城の城壁の周りには「萩の花」がいっぱい咲いています。



誰もいない海岸、海に面した萩城は山城のようです。
萩には吉田松陰先生(←町の人は松陰先生と呼んでいます)の松下村塾があり、
そこの門下生には久坂玄蕃、高杉晋作、伊藤博文等、明治維新で活躍した錚々たるメンバーがいます。

「萩」小さくて美しい町です。自転車で30分も走れば、町の端まで行くことができます。2日間レンタサイクルを借りて、かなりじっくり萩の町を見て回りました。
萩は新山口(空港のもより駅)から高速バスで1時間。2日目の夕方、新山口に戻り、防府市に移動しました。