二葉亭四迷は明治時代の小説家で翻訳家です。
本名は長谷川辰之助(はせがわ たつのすけ)、江戸末期の尾張藩上屋敷に生まれた武士の子どもです。
二葉亭四迷という名前は20代の頃、初めて書いた小説「浮雲」を明治の文学者坪内逍遥の名前を借りて出版したため、自己嫌悪、自己卑下にかられ、
「くたばって仕舞え」という言葉から「ふたばていしめい」と、自ら名付けた、という説と、
武士の家に生まれながら、小説や文学に親しむ息子を認めない父親に投げつけられた言葉
「お前なんか、くたばって仕舞え!」からとった、などと言われています。
どちらにしても、ユニークな発想のある人ですよね。
東京外国語学校(現在の東京外国語大学)でロシア語を学び、その後、小説『浮雲』を書きます。
話し言葉に近い形の文体で書かれ、多くの小説家や文学者に影響を与え、日本の近代文学の祖とも言われています。
彼が残した小説はわずか3作。
『浮雲』、『其面影(そのおもかげ)』、『平凡』ですが、得意のロシア語を活かして、ロシア文学の翻訳作品を多く残しています。
明治時代の文豪、夏目漱石が、「I LOVE YOU」という英語を「月が綺麗ですね」と、翻訳した事はよく知られています。
このお話も面白いです!
夏目漱石は愛媛(坊ちゃん、吾輩は猫である等の作品の舞台)、そして熊本(第五中学)、などの高校で英語の教師をしていたことは有名です。
ある時、学生が「I love you」を「私はあなたを愛しています」とそのまんま直訳しました。
漱石先生は、「そんなものは日本語にはならない、「月が綺麗ね」とでも訳しておけば足りる」 と、学生に言ったそうです(定かではありません)
確かに、「私はあなたを愛しています」なんて、普通言わないですよね。
明治の時代だったら余計かなあ、、、
漱石先生のストレートなありのままの感覚での返答が好きです。
が、二葉亭四迷も漱石に引けを取らない翻訳を残しています。
それは、ロシアを代表する文豪、ツルゲーネフの「片戀」(片恋)、という小説に使われているセリフです。
主人公の青年に愛を打ち明けられ、唇を奪われそうになる美しい娘。
娘は、「Yours...あなたのものよ…」(英文訳)と、一言、かろうじて囁きます。
「Yours...」
この「あなたのものよ」という意味を持つロシア語を、二葉亭四迷は「死んでもいいわ…」、と訳しました。
実は考えに考えて、二葉亭四迷の名前通り迷いに迷って「死んでもいいわ」という言葉にたどり着いたとも言われています。
人は人のために死ねるのでしょうか。
う〜ん、身内で考えると、夫には悪いけれど、私は夫のために死ねるかどうか、少々迷います。
子どものためには命を投げ出す人もいるでしょう。
(多くの小説や映画の中でも描かれています)
「あなたのために死んでもいいわ」 まさに究極です!
言葉の持つ繊細さ、現実性を見つめ、突き詰め、究極の翻訳で
「あなたのために死んでもいいわ」と表現した二葉亭四迷。
言葉にこだわりを持つ私としては、ちょっと見逃せない歴史上の人物です。
言葉については同僚のM 先生のブログも面白いです!
「教育では平和を作れない」
http://careersg.hatenablog.com/entry/2020/05/23/235411?fbclid=IwAR1FL9LWTMg5W01Q6fbPVDCwGsBG8yS1Rl5VdTe-V_disPXuUzAYAsm3itc