また天気が不安定のため巣ごもりせざるを得ず、卓球Tリーグの新シーズン今夕開幕までの間、暇を持て余して、アマゾンプライムビデオで『ある日どこかで』を観た。劇作家の青年の前に知らない老婦人が現れ、懐中時計を手渡しながら「帰ってきて」と言って、去っていった。何のことか訳が分からずにいたが、その後しばらくして偶然立ち寄った湖畔のグランド・ホテルの資料室に掛かっていた写真の若い女性に運命の人を感じた。学生時代に学んだ『時の流れを超えて』の著者である哲学教授に相談すると、服装から髪型、財布のコインなど何から何までその時代の人に成り切れば、時空を超えてその時代に到達できると教えられた。そうすれば懐中時計の運命の女性に出遭えると信じた彼は、現在の1980年から1912年に飛び立つことを一心に念じる。破天荒、不合理、滅茶苦茶ながら斬新なストーリーに惹き込まれ、展開をワクワクしながら見た。写真の女性は当時の大女優という設定で、登場と出逢いと愛情関係への発展を鑑賞しながら、かりんとうの食が進んだ。しかし、着地でお決まりの約70年のタイムラグを現実に戻す時の手法が、洒落ているようでイージーな気がした。2人がすっかり打ち解けた成り行きで、青年が内ポケットからコインを取り出すと、うっかりミスの手違いにより今の通貨が出てきたため、一瞬にして現代に連れ戻され、彼女との邂逅が夢と消えてしまった、のである。これに比べると、我が国のストーリーテラーの方が優れている。浦島太郎伝説では、竜宮で夢のような楽しい体験をした後、乙姫様に土産に貰った玉手箱をふるさとに帰って開けると、ドロンと煙が出て、白髪の老人に成り果てた。どう見ても、こちらの方が幻想を幻想で締めくくって違和感がなく、物語として上質である。
変化への憧れについては、コロナ政情に行き詰まり感、停滞感が漂った国内政治に、岸田文雄前政調会長の自民党総裁選立候補の名乗りと政治改革表明によって幕が開けた政局転換期待も、有力候補軒並みの安倍(晋三前首相)頼みによって、早くも改革機運が萎みつつある。度重なる不祥事の解明どころか、福島原発事故の整理も出来ないうちに利害関係者の裾野の広さの圧力に押され、与野党ともに原発活用に流されている結果、本日の株式市場では早速、東電(9501)が前日比11%も急騰(32円高の332円)したほか、四国電(9507)が7.6%高、北海電(9509)も6%高と、原発運用への安心感から原発比重の高い電力株が急上昇した。煙に巻く腹芸もできず、相変わらずの長老への諂いだけでは、改革など望むべくもない。ポストを射止めるまでは韓進の股くぐりと我慢して、改革路線や綺麗事を一時抑えるなら構わないけれど、当節の政治家は股をくぐるだけではなく、ついでにふぐりまで舐めてしまうのではないかと不安になる。