自民党新総裁に岸田文雄氏が選出され、10月4日に内閣総理大臣に就任することになった。クセとド迫力が無い代わりに真面目そうな、いかにも宮澤喜一風の宏池会系譜の印象がある。宮沢元首相は米誌Newsweek を斜め読みするくらいのインテリだったけれど、自分の言葉として時代を表す名言を残さなかった印象があるように、岸田氏からもカリスマ性や自分の持ち味を示す言葉や、指導性を発揮する表現が聞こえてこなかった気がする。米国のリンカーン演説やケネディ、オバマ大統領のような教科書に載せられるまでのキャッチ―さや美辞麗句はなくとも、やはり国を動かし国民からの求心力を引き出すには政治家の言葉の力が重要である。主要官庁のゴーストライターの思い付きを寄せ集めたような作文を俯いて棒読みする所信表明でなく、政治家を志した年来の信念を吐露し、人の心に響き、おやと国民を刮目させるような施政方針表明を期待したい。
人気の出る人には言葉による発信力がある。グレタ・トゥーンベリさんは気候変動問題で政治家は「なんたらかんたら」言うだけで実行が伴わないと揶揄するとき、Blah blah blah とキャッチーな言葉を使う。ボリス・ジョンソン英国首相は気候変動問題に真剣に取り組もうと国連総会で演説したとき、セサミストリートに出てくるKermit the Frog(カエルのカーミット)の「緑でいるのは簡単じゃないよ」を逆説的に用い、「やる気があればグリーンにすることは簡単だ」と訴え、世界中の注目を集めた。自民党新総裁の岸田文雄次期首相は地味な人柄でキャッチ―な言葉を用いないけれど、総裁選出馬表明の時に掲げた、国民の声を書き溜めたノートがキャッチ―だった。確か30冊くらいになると言っていて、極端に評すればノートのお陰で首相ポストを射止めたとも言って良さそうである。ノートと言えばコクヨ。本日の株式市場ではコクヨ株式(7984)を1万株ほど仕込んでおこうと思う。