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我が家の庭の蝉は今、声かぎりに鳴いています。叫んでいると言うほうが適切かもしれません。
木の下をソロリソロリと蝉を驚かせないようにして車に向かいます。
驚かせると4-50匹が一斉に飛び立ち排泄の雨 子供たちは傘をさし木の下を通ります。
一番困るのは車にかかること おかげで定期的に洗車しなければなりません。
ずぼらな私にはこの季節は大変です。
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さて7月に松阪市の祇園祭に行きました。なかなか盛大な地方の祭りと言ったところです。
面白いのはみこしが一人歩きして様相が変わってしまったことです。
どういう事かと言うと本来は神が社から神輿で渡られる。この事が祭りのメーインで人々は和紙に賽銭をくるみ笹に結びつけ神輿の世話役に渡したり社に参拝に行く 幼児は不浄を避けるため親が肩車し社に向かう。そう言う習慣が希薄になったように思えます。
柳田國男さん(民俗学者)が現存してみえたらガッカリはしないでしょうが驚かれたでしょう。今年初めて行った志摩市磯辺町伊雑宮御田植祭は日が6月24日に限定されていて雨でも決行されるそうです。松阪市の祇園祭が人が多く集まる土曜、日曜に行なわれる事は、祭りの内容が神事からイベントに重心を移行していったという事だと考えます。
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世の変化の現れでしょう。以前名古屋でお逢いした方が「任天堂の隆盛期は過ぎつつある」ゲーム機の任天堂です。世界的な優良企業でした。訳を聴くと「わざわざゲーム機をもって外に行かなくても携帯で事足りる。世の中がどんどん流れている。だから当たり前だと思っていた事が次にはそうでなくなる」それと同じ事で極論を言うなら神より娯楽なんでしょうか。たぶん。
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人の神とは道路一つで滅ぶ時もあります。東海道関宿を過ぎ鈴鹿峠の上り口に坂下宿はあります。規模は関宿よりも大きく、ここを超えると甲賀の土山宿に至ります。
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坂下宿より数キロ行くと片山神社があり。東海道沿いという事もあり大変賑わった神社でした。
それが新しい道が一つ出来ると通行人が減り 線路が出来ると人が絶えました。そして人々から忘れられてしまいました。現在も地域の人々の氏神して信仰されていますが。
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当時の繁栄を示す石垣はつたに絡まり、石段は雑草が生えていますが江戸姫路屋、伏見加賀屋と彫られた手水用石桶や文化文政と深々と彫られた奉納の石碑などが静かにたたずみ当時の人々の声が聞こえそうな雰囲気でした。「夏草や兵どもが夢の跡」芭蕉の句が頭をよぎります。
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人も儚いが神もまた儚い。儚いから神を求める。しかし歓声の中で食うに困らず生きていける私たちに
それが見えないし、聞こえない。幸福なんでしょう。ソドムの住民と比較はしませんが。
私の立っている場所を何百年も前、名も判らない人々が京都に、江戸に、伊勢にと,通り過ぎていった。
この人々の人生はどんなのだったのでしょうと。そんな事を思った経験があります。
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そして祇園祭りの雑踏の中で見る者も見せる者もひと刻の夢に酔う。ですから私は祭りが好きです。
きれいに装い人の波の中を屋台で物を買い食べながら歩き祭りを見て楽しむのは素敵な非日常的な世界。
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