ドナウ川の白い雲

ヨーロッパの旅の思い出、国内旅行で感じたこと、読んだ本の感想、日々の所感や意見など。

旧市街と「ママ・ソフィア」と満月

2019年08月03日 | 西欧旅行 … エーゲ海の旅

世界遺産の旧市街 >

 マンドラキ港から海沿いの道を歩いて旧市街に入った。海と海沿いの城壁の間をたどる気持ちの良い道だ。

 城壁で囲まれた旧市街は、中世ヨーロッパ都市の例証として世界遺産になっている。

 だが、我々が想像するようなヨーロッパ風の街 ──  例えばドイツのローテンブルグのようなメルヘンチックな街 ── ではない。

 小店舗が並んだ街並みとその雰囲気は、イスラム圏のバザールに似ている。

 大阪でいえば、「北」ではなく「南」、「南」というより通天閣界隈の庶民的な雰囲気に近いかもしれない。

 ただし、海に囲まれた世界遺産の小さな町だから、昭和40年代の通天閣界隈のように「こわい」お兄さんに話しかけられたり、いかがわしい店があるわけではない。

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時計塔へ上がる > 

  メイン・ストリートのソクラトゥス通りを歩き、その先の時計塔に上がってみた。

 

 通りから狭くて急な階段を上がると、喫茶風のテラスになっていて、さらにその上に時計塔が建っていた。

 入場料に喫茶代も入っているというので、グラスワインを注文した。快い疲れと、お腹もすいていて、ほんのりとほろ酔い気分になった。今日は、中身の濃い充実した1日だった。遥々とやって来た甲斐がある。

 時計塔の階段は高くはないが、窮屈で、緊張した。もともと物見の人が昇っていた階段だろう。小さな窓からカメラを構えるのも容易ではなかった。

 聖ヨハネ騎士団の城塞の向こうに薄く見える山並みは、小アジア、即ちトルコ共和国に違いない。

 時計塔のそばにあるスレイマン・モスクは、今は使われていない。国旗の青と白の十字が示すように、この国はギリシャ正教の国である。それが、オスマン帝国から独立するときのアイデンティティの一つだった。

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タベルナ「ママ・ソフィア」

 『地球の歩き方』は重宝しているが、本に掲載されているレストランに行くことはない。そもそも『歩き方』のレストラン情報は古い。

 ただ、『ギリシャ』編のロードス島の項に載っている「タベルナ・ママ・ソフィア」は、ネットのブログにも登場する。家族経営の奥さんが日本人で歓待してもらったとか、生ウニがとても美味しかったとか … とても評判がいい。とにかく新鮮な海の幸が食べたくて、行ってみた。

 ちなみに『地球の歩き方』には、「ママ・ソフィア」についてこんな風に書かれている。

 「時計塔の真向かいにある1967年創業の老舗タベルナ。現在は創業者ソフィアさんの息子と孫が中心になって営業している。孫のソティリスさんは日本留学経験もあり、妻の智子さんもいるので日本語もOK。毎年通っているファンも多く、味は定評がある」。

  2世代の家族が働いていた。そのなかのソティリスさんだろうか? 40歳ぐらいの男性が、流ちょうな日本語で丁寧に話しかけてくれた。

 それで、年とともに少食になって、レストランの食事の量の多さにいつも困っている。申し訳ないが量を少なくしてほしいと言ってみた。すると、よくわかります。料理を注文していただいたら、量は私の方で調整します、と言ってくれた。それで、メニューを見ながら、2、3の注文をした。

 グラスワインを注文すると、それは、「私からのサービス」にさせていただきますと言う。「店」ではなく、「私」だった。

 まるで一族の中の年配者に対するように親しみと敬意をもって接してくれているのがわかる。 

 料理は、本当に美味しかった!! 何度もヨーロッパの旅をしてきて、こんなに「美味しい!!」と思ったことはない。

 レモンをしぼって食べた生貝の皿は、最高だった。これだけでも、この店に来た甲斐があった。

 料理の量も腹8分目。個人旅行でヨーロッパのレストランに入って、こんなに完食して満足したことはない。

 最後にメニューを見ながらデザートを注文しようとすると、デザートも私からのプレゼントとして用意していますから、おまかせくださいと言う。そして、幾種類ものジェラードやケーキを美しく盛り合わせた皿が出された。

 ギリシャコーヒーも美味しかった。

 サービスしてもらった分は、チップをプラスした。それでも、驚くほどリーズナブルだった。

 最後に、美しいお辞儀とともに送り出されたが、本当に気持ちの良い接待だった。「明後日、もう一度来ます」と言って別れた。

 入った時にはほとんどだれもいなかったテラス席も、食事が終わるころにはほぼ満席になっていた。        

        ★

ロードス島の満月 >

 時刻は黄昏時。ますます賑わう通りに出て、さてホテルに帰るには右か左かと、一瞬、方向感覚がわからなくなって立っていたら、西洋系の上品なマダムに突然、話しかけられて驚いた。誰だっけ??

 笑顔で、顔を上に向け、指さして、こちらに何か言っている。

 あっ、満月だ。ちょうど、我々の立つ位置から見ると、暮れる前の美しい濃紺の空をホリゾントにして、モスクの尖塔の真上に満月がかかっていた。

 歩いていたマダムはそれに気づき、感動して思わず立ち止まり、たまたま横にぼっと立っていた私に教えたのだ。

 満月を見ながら海辺の道を帰った。

  ホテルのテラスから月は見えなかったが、すっかり暗くなった夜空に、黒い海と教会の塔が見えた。暗くて無理かと思いつつ、昨日と同じ角度でシャッターを押したら、何とか写っていた。立派なカメラなのだ。

 教会の塔が、アニメのお化けの顔みたいだ。

 今日の歩数は10000歩。適度な運動だ。

 ただし、船の中はのんびりしたが、汗をかいて丘を登り、最後は駆けるように丘を下った。

 明日はロードス島を出る。コス島まで、また、日帰りの船の旅だ。 

 

 


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