ドナウ川の白い雲

ヨーロッパの旅の思い出、国内旅行で感じたこと、読んだ本の感想、日々の所感や意見など。

美空ひばり考 …… 「みだれ髪」

2012年09月01日 | 随想…文化

 

 美空ひばりという歌手が活躍していた少女時代から亡くなるまで、彼女のファンであったことはない。

 ただ、彼女の死後、テレビの歌謡番組の中で、現役の歌手によって美空ひばりの歌が「熱唱」されるのを聞くにつけ、歌唱力があるといわれる歌手をもってしても、彼女の豊かさに遥かに及ばない事実に気づき、ひばりという歌手の凄さをいささか感じるようになったことは確かである。やはり不世出の歌手だったのであろう。

 今でも美空ひばりを愛するファンは多く、そのような人たちは、彼女の歌唱力だけでなく、あの思わせぶりなしぐさ (一応、「色気」というのかな?) や、ボーイッシュな低音などの全てを好きでたまらないのであろう。しかし、彼女が生きて活躍していた時代、私のような人間には、そういうところが好きになれなかったゆえんである。耳に入ってくることはあっても、彼女の歌を自らの意志で聴こうと思ったことはない。

 そのような自分であるが、彼女の死後、繰り返し放映された追悼番組で、ふと耳にしたこの一曲だけには、思わず聞き入ってしまった。

 「みだれ髪」である。

 私の場合、この曲に関しては、歌詞は関係ない。

 ひばりは、七色の声と言われるが、それでも、彼女の魅力は低音部にあるとされてきたし、彼女もそのことを意識して歌っていることは明らかだ (例、「やわら」)。 

 ところが、「みだれ髪」 は、ほとんど高音の連続である。ひばりのお母さんは、「この歌はあなたの歌ではない」と言って、歌うことに反対したとも聞く。

 だが、美空ひばりの高音は、本当に美しい。

 高音の連続を、気張ることなくさらっと、しかも哀切に美しく歌いあげることのできる歌手は、他にいない。やはり凄い歌手である。

 

 

 

 


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