要旨
『源氏物語』において、光源氏の正妻格である紫の上と、義理の母である藤壺は、ともに源氏の生母・桐壺更衣によく似た面影を持つ女性として源氏に愛され、また美しい理想の女性像として作中で人物描写がなされている。作中でも、源氏は藤壺の面影を幼い紫の上に見るなど、紫の上・藤壺の「紫のゆかり」、すなわち二人の容姿が酷似していることが強調されている。こうしたことを受けて、私が疑問に感じたのは、二人の女性が良く似た姿をしているなら、それを作中で描写するために使用されている形容詞も全く同じなのか、ということであった。本稿では、紫の上と藤壺のそれぞれに使われている容姿・性格に関する形容詞に着目して、語彙調査及び考察を行った。
『源氏物語』において、光源氏の正妻格である紫の上と、義理の母である藤壺は、ともに源氏の生母・桐壺更衣によく似た面影を持つ女性として源氏に愛され、また美しい理想の女性像として作中で人物描写がなされている。作中でも、源氏は藤壺の面影を幼い紫の上に見るなど、紫の上・藤壺の「紫のゆかり」、すなわち二人の容姿が酷似していることが強調されている。こうしたことを受けて、私が疑問に感じたのは、二人の女性が良く似た姿をしているなら、それを作中で描写するために使用されている形容詞も全く同じなのか、ということであった。本稿では、紫の上と藤壺のそれぞれに使われている容姿・性格に関する形容詞に着目して、語彙調査及び考察を行った。