「木村くん、ちょっと」
朝、出社するなり年下の上司に呼ばれる。
上司の隣には自分の部下が青い顔をしながら俯いていた。
「おはようございます」
「おはようございますじゃないよ。こいつがまたやつてくれたんだよ」
「申し訳ございません」
ああ、またか。こいつ家でなんかあって、それを俺の部下に八つ当たりしてやがるな・・・
「で、一体何をやらかしたんです」
「お得意先の××商事、納品のキャンセルをしてきたんだよ。こいつ担当だろ?」
「そうですけど・・・お前、確認したのか?」
「はい、ちゃんとしました」
「まずは事実確認じゃないですか?部下にいきなりどやしつけるのもどうかと思いますけど」
「な、なんだと」
「とりあえず、事実確認して、後でご報告に伺います」
やれやれ、これでまた俺の評価が下がったな・・・
「すみません」
「しゃあないだろ。俺はお前の上司なんだし。それより、事実確認、もう一度洗い出しておけよ」
「はい」
結局上司なんてものは部下なんぞ見ていないし、ご機嫌取りで上にあがらなければならないのだ。
俺はそういうのは苦手なので、いつまで経っても係長のまま。
この上司は俺の事が嫌いなのだろう。俺の部下ばか集中攻撃してきやがる。
俺もこの上司が嫌いだ。
そんなある日・・・俺はトイレの中にいた。
「しかし・・・参ったよな」
声の主は俺の部下。
「係長と課長、本当に仲悪いんだもん」
「そうだよなぁ。お前の部署って上がギクシャクしてるよなあ」
「とばっちり、こっちにくるんだよなぁ。参ったよ」
とばっちり?
「こないだだってそうだよ。課長が俺呼びつけてネチネチいたぶられただろ」
「あったな」
「あれだって、実は俺がターゲットじゃないらしいんだよな。俺はあくまでダシにつかわれたんだそうだよ」
「たまんないよなぁ」
「係長はいい人だよ。でも世渡りヘタだよなぁ。ああいう人はさ、おだててうまくやっておけばいいんだけどな」
別に恩を着せようとは思わないし、そんなつもりもない。
ただ、こいつは俺に対してそう思っていたのか・・・
とてつもない虚脱感と悲しさが俺の体を席捲する・・・
「俺は何の為にここにいるんだろう・・・」
最近このフレーズが事あるごとに頭の中に浮き上がっているのである・・・
つづく・・・
朝、出社するなり年下の上司に呼ばれる。
上司の隣には自分の部下が青い顔をしながら俯いていた。
「おはようございます」
「おはようございますじゃないよ。こいつがまたやつてくれたんだよ」
「申し訳ございません」
ああ、またか。こいつ家でなんかあって、それを俺の部下に八つ当たりしてやがるな・・・
「で、一体何をやらかしたんです」
「お得意先の××商事、納品のキャンセルをしてきたんだよ。こいつ担当だろ?」
「そうですけど・・・お前、確認したのか?」
「はい、ちゃんとしました」
「まずは事実確認じゃないですか?部下にいきなりどやしつけるのもどうかと思いますけど」
「な、なんだと」
「とりあえず、事実確認して、後でご報告に伺います」
やれやれ、これでまた俺の評価が下がったな・・・
「すみません」
「しゃあないだろ。俺はお前の上司なんだし。それより、事実確認、もう一度洗い出しておけよ」
「はい」
結局上司なんてものは部下なんぞ見ていないし、ご機嫌取りで上にあがらなければならないのだ。
俺はそういうのは苦手なので、いつまで経っても係長のまま。
この上司は俺の事が嫌いなのだろう。俺の部下ばか集中攻撃してきやがる。
俺もこの上司が嫌いだ。
そんなある日・・・俺はトイレの中にいた。
「しかし・・・参ったよな」
声の主は俺の部下。
「係長と課長、本当に仲悪いんだもん」
「そうだよなぁ。お前の部署って上がギクシャクしてるよなあ」
「とばっちり、こっちにくるんだよなぁ。参ったよ」
とばっちり?
「こないだだってそうだよ。課長が俺呼びつけてネチネチいたぶられただろ」
「あったな」
「あれだって、実は俺がターゲットじゃないらしいんだよな。俺はあくまでダシにつかわれたんだそうだよ」
「たまんないよなぁ」
「係長はいい人だよ。でも世渡りヘタだよなぁ。ああいう人はさ、おだててうまくやっておけばいいんだけどな」
別に恩を着せようとは思わないし、そんなつもりもない。
ただ、こいつは俺に対してそう思っていたのか・・・
とてつもない虚脱感と悲しさが俺の体を席捲する・・・
「俺は何の為にここにいるんだろう・・・」
最近このフレーズが事あるごとに頭の中に浮き上がっているのである・・・
つづく・・・