和泉の日記。

気が向いたときに、ちょっとだけ。

【SS】断線

2019-11-26 14:05:48 | 小説。
ぼくは世界から切り離されている。

そう感じるようになったのはいつからだろう。
思い返すまでもなく、最近ではなさそうだ。
ずっと、そんな気持ちを持ち続けている。

スマホを見る。
世界ではあらゆる事件が起こっているらしい。
ニュースが、呟きが、書き込みが溢れている。
それでもぼくは、その場にいないような疎外感を感じる。

何もぼくは仙人のような暮らしをしているわけじゃない。
朝起きれば仕事に行くし、帰りにコンビニに寄って買い物したりもする。
しかし、尚感じる疎外感、孤独。
ぼくは独りで生きて、独りで死んでいく。
本当はそんなことないのにね。

昔から人付き合いが得意じゃなかったから、今の状態が異常なのか分からない。
でも、孤独と一緒に小さな不安を抱えているなら、正常ではないのだろう。
このままでいいのか。
そんなことばかり考える。

多分、頭が断線しているのだ。
世界から遮断されているのだ。

ありもしない仲間はずれ感に怯え、もがいている。
滑稽な人間。
周りから見れば、きっとそう映る。

分かっている。
ああ、分かっているんだ。
自分の意識が肥大して、過剰に恐れているだけだとか。
誰もぼくのことなんか気にしていないだとか。
普通の感覚、そういうものはぼくにだってある。

ただ、それでもこの心の違和感は拭えない。
消えてなくなったりしない。

きっと世界は、集団でひとつの生き物なのだ。
もちろんその世界にはぼくも含まれている。
そうして、ひとつの生き物として廻り、巡る。
正常に動作する。

もしその輪から弾かれたら、どうだろう?
生きていても死んでいても、変わらないじゃないか。
ぼくが感じる恐怖はここにある。
生死が曖昧になる漠然とした恐怖。
世界に含まれているのに、頭だけがそれを認識できない。

存在は正常、頭が異常。

この怯えた声が聞こえますか。
世界は正常に動いていますか。
ぼくのことが見えていますか。
ぼくはここにいてもいいのですか。

システムエラー。
世界は沈黙。

ぼくは今日も、孤独を抱えて生きている。

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