今日も、目覚し時計より早く目が覚めた。
4月1日、日曜日、午前7時。
台所にはきっと、お母さんがいる。
まだ、目を合わせたくはない。
僕は暇つぶしに、パソコンを立ち上げた。
そういえば。
昨日の掲示板はどうなっているだろうか?
エイプリルフールの嘘を真に受けた書き込みに対して、ツッコミでも
入っているかもしれない。
僕は、掲示板「April Fool」へジャンプした。
書き込みは、2件。
僕の書き込みがひとつと、もうひとつは――。
「その願い、確かに聞き入れました。」
という一言。
なんだこれは。
なんで、こんなに・・・本当みたいなリアクションをするんだ?
何が狙いだ。どうしたいんだ。何を企んでいるんだ。
僕は奇妙な苛立ちを覚えて、直ぐにパソコンをシャットダウンした。
これなら、お母さんと顔を合わせたほうが、いくらかましだ。
朝食を食べようとダイニングに行くと、お母さんと、知らない男がいた。
・・・誰だ。
僕は硬直する。
男は、新聞を読んでいる。
お母さんは、楽しそうに朝食を作っている。
「・・・お、母さん・・・」
震える声で、僕は呟いた。
「あぁ、もう起きたの? もうすぐ朝ご飯できるからね」
振り向いたその笑顔は、久しぶりに見るものだった。
まるで、お父さんと喧嘩をする前のような。
「いや、ええと、お母さん」
「うん? どうしたの?」
僕は、恐る恐る、その質問をぶつける。
「このおじさん・・・ダレ?」
「あ、そうそう、紹介がまだだったわね。この人はね――
お母さんの、浮気相手よ」
な、何を――!?
そんな馬鹿なことって。
だって、離婚の原因って確か・・・。
「お母さん、何考えてるのさ! こんなのお父さんが知ったら!」
僕の怒号に、お母さんは涼しい顔で返す。
「知ってるわよ?」
「そんな――もう、離婚しちゃうの・・・?」
「離婚・・・?」
お母さんは、疑問の表情を浮かべて。
「しないわよ、離婚なんて」
僕には、もう何が何だか分からなかった。
お母さんが言うには、これからはこの浮気相手とも一緒に
暮らすのだそうだ。
それについてはお父さんも既に了承済みだとか。
家族が一人増えるわね、と心から嬉しそうにお母さんは付け足した。
――狂ってる。
お母さんも、お父さんも、このオジサンも。
みんな狂ってるんだ。
ありえない状況に、僕は自室へ逃げ込んだ。
ベッドの上で膝を抱え、ガタガタと震える。
お母さん、お父さん、みんな――どうしたって言うんだ。
昨日までは、いつも通り――
お父さんはお母さんの浮気を責めて。
お母さんは居直ったようにお父さんを責めて。
僕にも分かる理由で、ただ喧嘩しているだけだったのに。
僕は、もし両親が離婚したら、単にどちらかに引き取られて
それで終わりだと思っていた。
お父さんか、お母さんか、どちらかと離れるのはとても厭だけど。
最悪の場合として、想定していたのはそこまでだった。
だけど――。
このままだと、その最悪のケースすら下回ってしまう。
歪んだ夫婦。
歪んだ親子。
歪んだ家族。
僕の居場所は、きっと、完全になくなってしまうだろう。
そこで僕は、急にあのことを思い出した。
掲示板「April Fool」――願いを叶えるという、掲示板。
そこに書き込んだ、僕の願い。
僕は、慌ててパソコンを起動した。
4月1日、日曜日、午前7時。
台所にはきっと、お母さんがいる。
まだ、目を合わせたくはない。
僕は暇つぶしに、パソコンを立ち上げた。
そういえば。
昨日の掲示板はどうなっているだろうか?
エイプリルフールの嘘を真に受けた書き込みに対して、ツッコミでも
入っているかもしれない。
僕は、掲示板「April Fool」へジャンプした。
書き込みは、2件。
僕の書き込みがひとつと、もうひとつは――。
「その願い、確かに聞き入れました。」
という一言。
なんだこれは。
なんで、こんなに・・・本当みたいなリアクションをするんだ?
何が狙いだ。どうしたいんだ。何を企んでいるんだ。
僕は奇妙な苛立ちを覚えて、直ぐにパソコンをシャットダウンした。
これなら、お母さんと顔を合わせたほうが、いくらかましだ。
朝食を食べようとダイニングに行くと、お母さんと、知らない男がいた。
・・・誰だ。
僕は硬直する。
男は、新聞を読んでいる。
お母さんは、楽しそうに朝食を作っている。
「・・・お、母さん・・・」
震える声で、僕は呟いた。
「あぁ、もう起きたの? もうすぐ朝ご飯できるからね」
振り向いたその笑顔は、久しぶりに見るものだった。
まるで、お父さんと喧嘩をする前のような。
「いや、ええと、お母さん」
「うん? どうしたの?」
僕は、恐る恐る、その質問をぶつける。
「このおじさん・・・ダレ?」
「あ、そうそう、紹介がまだだったわね。この人はね――
お母さんの、浮気相手よ」
な、何を――!?
そんな馬鹿なことって。
だって、離婚の原因って確か・・・。
「お母さん、何考えてるのさ! こんなのお父さんが知ったら!」
僕の怒号に、お母さんは涼しい顔で返す。
「知ってるわよ?」
「そんな――もう、離婚しちゃうの・・・?」
「離婚・・・?」
お母さんは、疑問の表情を浮かべて。
「しないわよ、離婚なんて」
僕には、もう何が何だか分からなかった。
お母さんが言うには、これからはこの浮気相手とも一緒に
暮らすのだそうだ。
それについてはお父さんも既に了承済みだとか。
家族が一人増えるわね、と心から嬉しそうにお母さんは付け足した。
――狂ってる。
お母さんも、お父さんも、このオジサンも。
みんな狂ってるんだ。
ありえない状況に、僕は自室へ逃げ込んだ。
ベッドの上で膝を抱え、ガタガタと震える。
お母さん、お父さん、みんな――どうしたって言うんだ。
昨日までは、いつも通り――
お父さんはお母さんの浮気を責めて。
お母さんは居直ったようにお父さんを責めて。
僕にも分かる理由で、ただ喧嘩しているだけだったのに。
僕は、もし両親が離婚したら、単にどちらかに引き取られて
それで終わりだと思っていた。
お父さんか、お母さんか、どちらかと離れるのはとても厭だけど。
最悪の場合として、想定していたのはそこまでだった。
だけど――。
このままだと、その最悪のケースすら下回ってしまう。
歪んだ夫婦。
歪んだ親子。
歪んだ家族。
僕の居場所は、きっと、完全になくなってしまうだろう。
そこで僕は、急にあのことを思い出した。
掲示板「April Fool」――願いを叶えるという、掲示板。
そこに書き込んだ、僕の願い。
僕は、慌ててパソコンを起動した。