以前、このブログで「リフィーディング症候群」について解説し、その典型例として、豊臣秀吉による兵糧攻めの事例を紹介しました。
このケースは、これまで国内の医学界では、同症候群の疑い事例として有名ではあったものの、関連する医学論文は発表されておらず、
あくまで逸話以上のものではないものとして扱われてきたようです。
そこで今回、鹿野泰寛医師(東京都立多摩総合医療センター)、青山彩香医師(JA茨城厚生連総合病院水戸協同病院)、
山本隆一朗学芸員(鳥取県立博物館・中世担当)の3氏が、豊臣秀吉による兵糧攻めの事例(「鳥取の渇え殺し」)に関し、
2年がかりで史料を集め、とくに『信長公記』と『豊鑑』の記述(以前のブログもご参照ください)を医学的見地から精査しました。
その結果、この大量死に関し、粥そのものには問題はなかったことを確認したうえで、
粥の摂食量の意図せずして行なわれたこの「比較実験」が生死を左右した点に注目し、食後の死は同症候群の疑いが強く、
事実であればこの事件は日本史上最初の同症候群の事例で、危険性と重要性を伝える重要な歴史的記録と指摘する論文を、
国際的な医学雑誌 American Journal of Medical Sciences に、重要な歴史的医学記録として査読付きで掲載したことを、昨日の朝日新聞は報じました。
ちなみに論文は、秀吉の肖像画が表紙を飾っています。
<文 献>
Kano, Y., Aoyama, S. & Yamamoto, R., 2023 Hyoro-zeme in the Battle for Tottori Castle: The first description of refeeding syndrome in Japan, in American
Journal of the Medical Sciences. vol.366, no.6, pp.397-403. doi:10.1016/j.amjms.2023.08.015
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