Dr. 讃井の集中治療のススメ

集中治療+αの話題をつれづれに

M&M ケース1

2011-12-14 18:26:28 | M&M

 

6月5日にM&Mを始めよう(1)はじめにを書いてから6ヶ月が過ぎてしまった。そろそろ続編を書かねば、と思いそのままになっていました。適宜思いついたものから書き足していこうと思います。というわけで、いきなり各論1。


 

http://blog.goo.ne.jp/jseptic/e/7824d4c04c5e9478c32d68f03daf7177

 

最初に確認。

 

M&Mは、要は

 

・何が起きたか

・なぜ起きたか

・どうすれば防げるか

 

を明らかにし、プロトコールの改良や自らの行動や意思決定の変容を期待する“院内(あるいは地域)会議”です。

 

ここに登場する症例は現実の症例からヒントを得ていますが架空の症例であり、内容はすべて医療者自身の資質の向上、医療の質の向上を目的としたものですので、ご理解ください。架空の症例なので細部は「おやっ?」と思うところがあるかもしれませんがご容赦ください。

 

<症例提示>

遷延性の人工呼吸離脱困難(prolonged weaning)82才男性。

肺炎、呼吸不全の診断で、気管挿管、人工呼吸。ICU day 17。

意識混濁、尿量は維持されている。

気管切開を行うか否かについて主治医、ICUチームの間でディスカッションを行った後、家族に現状と予想される将来について十分な情報を提供し、治療の差し控え(withhold)、撤退(withdraw)を含めて治療オプションを呈示した。

家族はなんとか治してほしい、少しでも長生きしてほしい、気管切開も構わない、急変時もできる限りのことをして欲しいという主張を繰り返した。

治療の継続という選択肢を取る限り、今後経過は長期にわたり、今後、ICUから病棟への転棟するときに安全な気道管理を行う上で、気管切開は不可避と考えられた。

 

<既往歴>

慢性腎傷害保存期(CKD stage 5透析前)、II型糖尿病、高血圧、狭心症、脳梗塞後遺症(軽度の右不全片麻痺)

 

<生活歴・嗜好・アレルギー>

ADLはベッド上~椅子、食事、トイレなどすべて要介助。週2回訪問介護を受ける以外は家族が面倒を見る。飲酒なし・喫煙なし。アレルギーなし。

 

<薬剤>

ラシックス、ダイクロトライド、ニューロタン、フェロミア、アロシトール、バイアスピリン(入院時から中断中)。

 

<身体所見>

意識は、呼びかけで目を開ける。調子が良いときには指示にしたがい離握手ができるが、ムラがあり、ほっておけば眠ってしまうことがほとんど。今回の肺炎のエピソード以前と比べて、明らかな麻痺の進行はない模様。その他、やせている以外は発熱なく、呼吸数24回/分、脈拍数96回/分、血圧130/70mmHg、身体所見上に著変なし。

呼吸器は、圧支持換気、FiO2 0.4、PEEP8cmH2O、PS8cmH2OでSpO2 96%。

 

<当日朝の検査>

WBC: 13.63×103 /μL ↑、Hb: 8.2 g/dL ↓、Plt: 178×103 /μL 

PT-INR: 1.5 ↑、APTT-sec: 42 sec、Fibrinogen 130 mg/dL ↓

AST: 170 mU/mL ↑、ALT: 68 mU/mL ↑、LD: 1084 mU/mL ↑

CRP: 17.7 mg/dL ↑

Na: 134 mmol/L、K: 5.2 mmol/L ↑、Cl: 98 mmol/L

BUN: 104 mg/dL ↑、Cre: 5.33 mg/dL ↑


つづく。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。