Dr. 讃井の集中治療のススメ

集中治療+αの話題をつれづれに

M&Mをやってみよう。形式とコツ編

2008-10-04 12:44:18 | 集中治療
M&Mの形式やコツに関する雑感です。

M&Mは定型的な形が確立されているわけではありませんが、先日の第一回JSEPTIC総会で、M&Mには大きく分けると二つのタイプがあることが判明しました(完全に分離できるものでもありません。相補的なものです。どちらを主目的におくかという意味です)。

1。事故防止を主目的においたもの(個人、個人間、システム上を含めてroot causeをシステマティックに分析、改善をおこなう)
2。若手医師教育を主目的においたもの(メディカルな部分の原因分析、反省、そこから学べる教訓について、文献を参照しながら医師主体のディスカッションに主眼をおく。いわゆる症例検討会の症例が死亡症例や合併症症例になり、本論が原因分析、反省、教訓というイメージです)

現在、多くの施設で1。を目的とした会が開かれています。対象は医師に限りません。しかし、1. 分析を行う主催者がRCAの手法を知らない、2. プレゼンテーションがよく準備されていない、3. 参加者が趣旨を理解しておらず本論と関連のない質問をおこない議論が噛み合なくなる、等の理由で、ただの「原因指摘会」になり、「改善のための有効な決定打を打ち出せない」場合がある、という危険があります。

僕たち医師がやって面白いのは、2。ですよね。この利点は、
(1)医師としておもしろい。新しい知識が強烈な印象として脳に刻み込まれやすく勉強になる
(2)(医師同士)の共通感覚がベースにあるため言いやすいし聞きやすい

欠点は、
(1)分析がシステマティックでないため、本当の原因が浮き彫りならない可能性があり、再発防止のためには効率が悪くなる
(2)システムよりも個人の判断の間違い、未熟さ、無知さ、無謀さが対象になりやすく、(責めるつもりはなくても)責めら
れやすくなる

などでしょうか。

うまくやるコツは、
1。「誰が何をどうした」、という言葉はなるべく使わず、「なにがどのようにおこなわれた」という言葉を使う
2。スムーズなプレゼンテーションのためにある程度経験のある医師が行う
3。司会進行者と発表者(当事者)がよく下調べし、打ち合わせする
4。意見を述べる先生もできるだけliterature basedに話をしてもらうよう促す(個人的経験的見解と文献に基づく発言との違いが皆にわかるような発言をしてもらう。年長者が言うと、たとえ独語的感想でも、どうしてもその場を支配するようなexpert opinion風な発言になってしまいがちで、司会者や聞く方は要注意)
5。本論に集中できるよう、本論とあまりにかけ離れた質問には司会進行者が制限をくわえたり、個人攻撃と取れる発言には、警告を与える
6。記憶がフレッシュなうちにできるだけ早期に開催する
7。参加者に、2~3のtake home message(今後への教訓)を持って帰ってもらうよう司会者がメッセージを発信する

などでしょうか。

現在、第2回目JSEPTIC総会でM&Mをどのような形にするか、検討中ですので、乞うご期待です。

MS

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