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知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

アップルスクリーン審取

2013-01-13 16:39:57 | 最新知財裁判例

1 平成23年(行ケ)第10425号審決取消請求事件
2 本件は、特許庁が拒絶査定不服審判不成立審決の取消を求めるものです。
3 本ブログにおいては、周知技術の認定及び容易想到性の成否について焦点をあてます。
3-1
本判決は、「本件審決が周知技術の認定に当たって例示した甲2~甲4は,「複数の図形を含む仮想的な環の一部をスクリーンを含む平面内で回転させるように表示する」ものではない。また,甲5は,円環状に配置された部分以外に表示されないアイコンがあり,「複数の図形を含む仮想的な環の一部をスクリーンを含む平面内で回転させるように表示する」ことが記載されているとはいえない」と述べ、「本件審決が証拠として引用した甲2~甲5からは,「複数の図形を含む仮想的な環の一部をスクリーンを含む平面内で回転させるように表示する」ことが周知技術であると認定することはでき」ないと判断しました。
3-2
本判決は、本願補正発明について,「複数の図形を表示しなければならないスクリーンと,それらの図形を動かすための移動手段とを有して成る電子装置に関し,スクリーンが小さいのに対し,項目又はアイコンを持つメニューが豊富にあっても,表示しようとするこれらのアイコンを知覚できるようにするものである。このため,種々の異なる図形を1つの環内に置き,移動手段により,可視化しようとする図形を回転させ,位置をずらせて提示することにより,小さいスクリーン上で見やすく,相互に区別して認知できるようにしたものである。したがって,本願補正発明は,多数のアイコンの一部のみを表示することにより多数の図形を含むメニューなどのGUIを実現する効果(以下「効果1」という。)を奏するものである。また,本願補正発明における「環」は,種々の異なる図形を配置可能であって,回転させ,位置をずらせて提示する仮想的なものを意味するものと認められる。そして,「前記仮想的な環を,前記スクリーンを含む平面内で回転させるように構成され」ることにより,スクリーンに表示されるアイコンがスクリーンを含む平面内で回転移動する様子から,環の大きさ(半径)の直感的な把握が可能となるとの効果(以下「効果2」という。)を奏するものであることが理解できる」と述べる一方、引用発明について、「表示画面の大きさに制限があり,全てのメニューアイテムを表示できないものにおいて,メニューアイテムを円筒形に配置し,ユーザに対して,常に選択しやすい数のメニューアイテムのみを表示するとともに,メニューアイテムの数が増加した場合,円筒形の半径を大きくすることで,ユーザにメニューアイテムの増加を意識させずに,より多くのメニューアイテムを提供することができるものである。そして,円筒は,円周方向においては閉じた曲面となっているので,例えば右方向にメニューアイテムを探し,所望のものが見つからないとき,初めのメニューアイテムが表示された状態に自動的に戻るものである」と述べて、「引用発明は,本願補正発明と同様,効果1を奏するものである」と判断しつつも、「引用発明においては,スクリーンに表示されるメニューアイテムは,平面内で回転移動するものではなく,円筒形に配置されて,円周方向に回転移動するものであるから,ユーザにメニューアイテムの増加を意識させるものではなく,円筒の大きさの直感的な把握が可能となるものではないから,効果2を奏するとはいえない」と述べた上、「引用発明の「円筒」は仮想的なものであって,本願補正発明の「仮想的な環」に相当すると認められるが,本願補正発明においては,「前記仮想的な環を,前記スクリーンを含む平面内で回転させるように構成され」ているから,スクリーンに表示されるアイコンがスクリーンを含む平面内で回転移動する様子から,環の大きさの直感的な把握が可能となる(効果2)。これに対し,引用発明においては,スクリーンに表示されるメニューアイテムは,平面内で回転移動するものではなく,円筒形に配置されて,円周方向に回転移動するものであるから,円筒の大きさの直感的な把握が可能(効果2)となるものではない。そして,仮に,「複数の図形の一部を表示するために,複数の図形を含む仮想的な環の一部をスクリーンを含む平面内で回転させるように表示する」との先行技術が存在するとしても(ただし,本件においては認定できない。),引用発明は,「2次元的なユーザインタフェースには,表現力に限界がある」という認識に基づき,「複数のメニューを3次元的に表示」するものであるから,引用発明に上記先行技術を適用する動機づけはなく,引用刊行物の「2次元的なユーザインタフェースには,表現力に限界がある」との記載は,引用発明に「2次元的なユーザインタフェース」に係る上記先行技術を適用するに当たって,阻害要因になるものと認められる」と認定し、これを根拠として、「上記周知技術に基づいて,引用発明の仮想的な環をスクリーンを含む平面内で回転させるように構成し,前記仮想的な環の一部は前記スクリーン内に含まれるようにして本願補正発明のように構成することは当業者が容易になし得ることである」(7頁14行~17行)とした本件審決の判断は,仮に,本件審決の認定した周知技術と同様の先行技術が存在するとしても,誤りである」と結論づけました。
5 本判決は、阻害要因の存在を指摘して引用発明に周知技術を適用することの動機付けを否定した例として参考になります。


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