定流量弁審取
平成23年(行ケ)第10327号 審決取消請求事件
請求棄却
本件は拒絶査定不服審判不成立審決の取消しを求めるものです。
主たる争点は,補正の適否です。
1 本判決は、「当初明細書等(甲4)には,「ばね13を配設した弁体11及び弁体支持体11eにかけて形成したばね収容室11cと流体流路14とを,弁体11に形成した流体通路11dにより連通することにより,弁体11に差圧が作用しないようにしている」(段落【0010】)と記載されているが,弁体の流体の流れに対して上流側を向く面と下流側を向く面の双方に,減圧前の流体の静圧のみがかかること,及び弁体に流体の静圧による差圧が作用しないように構成されることは,当初明細書等には,記載も示唆もない。かえって,当初明細書の【図1】において,弁体の上流側領域と弁体の外周部領域とでは,弁体の外周部領域において弁体の存在により流路断面積が小さくなるため,弁体の外周部領域における流速が弁体上流側領域における流速に比べて速くなるから,弁体の外周部領域における流体の静圧は弁体の上流側領域における流体の静圧より小さくなる。そうすると,流体通路11dを介して弁体の11の下流側面にかかる流体の静圧は,弁体の上流側面にかかる流体の静圧よりも小さくなるのであって,「弁体に流体の静圧による差圧が作用しないように構成される」ことはない。 したがって,本件補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものと認めることはできない」と判断しました。
2 本判決は、原告の「流体流路に配設した弁体に対して,減圧前(弁体11の移動によって断面積が変化する流路開口部12〔絞り部〕より上流側)の流体の静圧がかかる弁体の移動方向の上流側を向く受圧面と下流側を向く受圧面が受ける静圧が等しくなるようにし,かつ,減圧後(流路開口部12より下流側)の流体の静圧がかかる弁体の上流側を向く受圧面と下流側を向く受圧面をなくすことによって,弁体の移動方向にかかる流体の静圧による力を均衡させているとの「主張」に対し,「原告の上記主張に係る事項は,当初明細書等には記載がない。また,ベルヌーイの定理により,流体の流速が増加すると静圧が減少することは技術常識であるが,原告の上記主張は,弁体上流側から弁体周囲の流路開口部にかけての流路の断面積の変化による流速の変化を考慮していないなど,技術常識を踏まえたものではなく,認めることはできない」と判断しました。
3 本判決は、ベルヌーイの定理という基本的な定理に言及した例として参考になるものと思われます。
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