知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

液晶表示装置の製造方法審取

2012-03-17 13:59:42 | 最新知財裁判例

液晶表示装置の製造方法審取
平成23年(行ケ)第10165号 審決取消請求事件
請求棄却
争点は進歩性の有無です。
裁判所の判断は28ページ以下
1 一致点の認定の誤りについて
本判決は、まず、一致点の認定の誤りについて、高分子辞典等の証拠を引用し、「接着剤の技術分野において,「接着成分」と「粘接着性付与剤」は区別して用いられる概念と認められる」と認定し、「引用発明1の「粘接着付与剤」が訂正発明1の「接着成分」に相当するとし,両者が「前記スペーサ粒子分散液は,スペーサ粒子,接着成分及び溶剤
からなるもの」である点で一致するとした審決の認定は誤り」と判断しつつ、「甲1においても,スペーサ粒子の基板に対する接着性の向上が意図されていることは明らか」であるところ、「スペーサ粒子分散液に接着性を付与するために「接着成分」を配合することは周知技術といえるから,甲1に記載のスペーサ粒子分散液において,スペーサ粒子の基板に対する接着性を向上するために,「接着成分」を配合することは,当業者が必要に応じて適宜なし得ることにすぎないというべきである」ことから、「引用発明1の「粘接着性付与剤」が訂正発明1の「接着成分」に相当するとした審決の認定自体は誤りであるものの,訂正発明1は引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に想到することができたとした審決の結論に影響を及ぼすものではない」と判断しました。
2 相違点2の判断について
本判決は、相違点2の判断について、「引用発明1と甲3に記載された発明(引用発明2)は,スペーサ粒子の配置の方法がインクジェット方式とランダム散布方式とで異なるものの,いずれも,基板に向けてスペーサ粒子分散液を供給し基板にスペーサ粒子を配置する点で共通する」との認定を前提として、「引用発明1は,スペーサ粒子を親水性有機溶媒に分散した状態で供給して基板に配置するものである以上,スペーサ粒子が親水性有機溶媒中に均一に分散しているほうが望ましいことは当業者にとって明らかであるから,引用発明1において,スペーサ粒子分散液中のスペーサ粒子の沈降,浮遊を防止するために,比重差を小さく,例えば「0.1以下」程度に設定することは,甲3に比重がスペーサ材料と同等の溶媒を使用することが望ましいことが示されていることからすれば,当業者が容易に想到することができるもの」と判断しました。
本判決は、審決の誤りと認めつつ、それが結論に影響しないとして審決を維持した事例として参考になると思われます。


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