知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

マッサージ器審取

2012-06-18 03:49:47 | 最新知財裁判例

マッサージ器審取
平成23年(行ケ)第10204号 審決取消請求事件
請求棄却
本件は差止めと損害賠償を求めるものです。
主たる争点は構成要件Dの解釈です。
1 相違点1及び2に係る判断
1ー1 本判決は、まず、「引用発明は,ふくらはぎ等を振動按摩する安楽椅子において,按摩する人の脚の長さに応じてその足を載せる足台の位置が下降できるようにしたことと適切な圧力で足裏を押すことを目的としたものであるから,脛当座及び足台を必須の構成としている」と認定し、 したがって,「引用発明の足台において,足裏をマッサージすることに代えて,脚の下側をマッサージする構成とすることは,当業者が容易に想到し得るものとはいえない」と判断しました。
1-2 本判決は、また,周知例1ないし3には,脚の下側をマッサージするために,椅子型マッサージ機のフットレストを分割した構成とすることについての特段の記載や示唆はない。周知例4には,レッグレスト本体とフットレスト本体を設ける構成,周知例5には,第1の足受け体と第2の足受け体を設ける構成がそれぞれ記載されているから,本件特許の出願当時,脚又は足を支持する手段を分割する構成は,周知の技術であった」としつつも,「周知例4及び5は,乗物用座席やベッド式椅子に関するものであるから,これらの引用例における脚又は足を支持する手段を分割する構成は,使用者の脚の長さ等に合わせて脚の希望する部分をマッサージするという本件発明と共通の課題に基づいて採用されたものではない」と認定し、したがって,「引用発明において,脛当座を分割し,分割された脛当座にそれぞれマッサージ機能を備えた構成とすることや,足台に脚の下側をマッサージする構成を付加することも,当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない」と判断しました。
2 相違点4に係る判断
本判決は、「引用例及び各周知例等には,相違点4に係る本件発明の構成を備えることについての記載はなく,その構成が公知又は周知の技術であったとは認められない」として想到性を否定し。また,「本件発明は,相違点4に係る構造を有することによって,座部に対して上下揺動自在なものとして連結されている固定フレームを所望の角度にした状態で, 第一フットレスト部及び第二フットレスト部について,それぞれ個別にその位置を調整することが可能となり,その結果,使用者の脚の長さ等に合わせて使用者の脚の希望する部分をフットレストのマッサージ具で良好にマッサージすることが可能になるという格別の効果を奏するものであるから,相違点4に係る本件発明の構成が設計事項であるともいえない」と認定し、したがって、「引用発明において,相違点4に係る本件発明の構成とすることは, 当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。」と判断しました。
3 本判決は、課題の非共通性、想到性の否定、設計事項等の複数のロジックを駆使し容易想到性を否定したものとして参考になると思われます。

 


コメントを投稿