渡り道路目地装置特許侵害
平成23年(ワ)第8405号 特許権侵害差止等請求事件
請求棄却
本件は差止めと損害賠償を求めるものです。
主たる争点は構成要件Dの解釈です。
1 本判決は、各号製品は,少なくとも本件特許発明1の構成要件D「前記渡り通路の目地部側の側壁に一端部が前後方向にスライド移動可能にそれぞれ取付けられ,他端部が前記渡り通路用開口部が形成された外壁に左右方向にスライド移動可能に取付けられた一対のスライド側壁」を充足するとは認めることができないから,本件特許発明1の技術的範囲に属するということはできない」と判断しました。
すなわち、本判決は、まず、文言の有する通常の意味に注目し、「「一般に,「取付ける」とは,「機器などを一定の場所に設置したり他の物に装置したりする」ことをいうものと解されるから, 他の物と間隔の空いた状態で設置された物について,他の物に「取付けられた」ということは困難である。他に当業者が別の意義を有するものと解釈するなどと認めるに足りる証拠もない」と認定した上で、「構成要件Dの「側壁に‥‥取付けられ」という用語を通常の意味で解釈すると,「側壁」と間隔の空いた状態で設置された物は,仮に近接した状態で置かれていたとしても,「側壁に‥‥取付けられ」た物ということはできないと解される」と判断し、続いて、本件明細書の記載を引用し、「まず,上記(ア)の第1の実施形態に係るスライド側壁は,目地部側の側壁の端部を覆うことができるように断面コ字状に形成されたスライド側壁本体17と,このスライド側壁本体の両端部寄りの内壁面に取付けられた,側壁16の上面を移動するローラー18とで構成されているものである。これは,スライド側壁を目地部側の側壁と間隔を空けずに構成したものであって,上記アのとおり,本件特許発明1の構成要件Dについて,通常の意味のとおり解釈した場合における,本件特許発明の技術的範囲に属する実施例を開示したものである。 これに対し,上記(イ)の第6の実施形態に係るスライド側壁は,目地部側の側壁の内壁面に「位置させて前後方向にスライド移動可能に取付けた」ものとされている」としつつ、「上記図22ないし図24によっても,イ号製品のスライド側壁(手摺10a 及び10b)及び通路の目地部側の側壁(側壁9a 及び9b)とは異なり,スライド側壁と目地部側の側壁とが接触しているか否かが判然としない。目地プレート12と一体となったスライド側壁15が,渡り通路5の側壁16で囲まれた空間に嵌合しているものとみることが可能であり,その場合は,スライド側壁を側壁に取付けたということもできる。
しかし,仮に,上記実施例についてスライド側壁と目地部側の側壁とが接触しない構成を説明したものであると解釈する場合,何をもってスライド側壁15が側壁16に取付けられているといえるのか,本件明細書には具体的な説明はなく,この構成について本件特許発明1の技術的範囲に属する構成として開示したと解することはできない」と判断し、構成要件Dについて、「少なくとも「側壁」と間隔の空いた状態で設置された物は,近接した状態で設置されていたとしても, 構成要件Dの「側壁に‥‥取付けられ」の構成を充足するということは, 特許請求の範囲に係る文言解釈上,できない」と判断しました。
2 本判決は、原告の事業目的が特許権の実施及び取得であることが目を引く事例である。
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