職務発明条項改正案解説
速報性を重視して条文毎の簡単な解説(暫定版)を記載しておきます。
第1 暫定的逐条解説
1項について:
改正ありません。
2項について:
「特許を受ける権利若しくは特許権を承継させ」が「特許を受ける権利を取得させ、使用者等に特許権を承継させ」に変更されました。
「取得」は、初めから「特許を受ける権利」が使用者等に帰属するパターンを示しています。このことは新3項を読めば分かります。
3項:
すなわち、新3項は、職務発明規定等においてあらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることを規定した場合には、特許を受ける権利が「その発生の時点」から、使用者等に帰属する(原始的に帰属する)ことを示しています。
「取得させる」という表現は、あくまで、原則は発明者帰属であることを示唆しているのかもしれません。
4項:
枠組みは旧3項と同様ですが、「相当の対価(の支払い)」が「相当の利益」に変更されるという重要な変更内容を含んでいる条文です。
5項:
これも枠組みは旧4項と同様ですが、新4項において、「相当の対価(の支払い)」が「相当の利益」に変更されたことに伴う改正がなされています。
6項:
旧4項の合理性の判断基準が不明確であったという批判を受け、「前項の規定により考慮すべき事項」について、経済産業大臣が指針を規定し、公表することが規定されています。
ここで、「前項の規定により考慮すべき事項」については特段の定義はないものの、新4項で列挙されている「協議の状況」、「開示の状況」及び「意見の聴取状況」がこれに該当するものと思われます。
7項:
これも枠組みは旧5項と同様ですが、新4項において、「相当の対価(の支払い)」が「相当の利益」に変更されたことに伴う改正がなされています。
第2 「特許を受ける権利」が発明者に原始帰属する場合の処理
それでは、特許を受ける権利を使用者等が原始取得するための職務発明規定等がない場合、又は定めをしたが、従来どおり発明者帰属とした場合にはどうなるでしょうか?この場合において、発明完成後の合意に基づき特許権を使用者等に承継させるときは、新4項の適用の可能性があります(旧法時代から争いあり)。
これに対し、特許を受ける権利が発生時には従業員等に帰属するとしつつ、予約承継により使用者等に承継させるというときは、そもそも、新3項の定めに従い、特許を受ける権利が「その発生の時点」から、使用者等に帰属する(原始的に帰属する)ことになるため、このような予約承継規定は意味がないことになります。
以上
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